そのちょっとした口論のあと、俺たちはパネルシアターの演目と配役を決めた。
演目は、童謡の「どんな色がすき」。
配役は、色別ってことになったんだけど……。
「んー……これじゃ、パネルを後ろから出す裏方の人が足りないね……」
「そうだな。どの動画のサンプルでも裏でパネルを出してる人がいるな」
「うん……。誰か、手伝ってくれる人がいれば……」
糸ちゃんの言葉に、一同が思い当たる人物を思い描く。
残念ながら俺の交友関係では、一緒に幼児の前に出てくれるような間柄の人物は浮かばなかった。
だが、その時。
「兄さん。私、やってくれそうな人知ってるよー」
「おおっ、本当か!」
コミュニケーション能力の権化みたいなコミュ力お化け、我が妹がしれっと手を挙げた。
「生徒会の、田端くんだよー。あの子なら快く引き受けてくれそうでしょー?」
「えっと……誰だ」
「酷いっ!」
いや、そんなことを言われても。
俺の交友関係には、日常部と雪姫くらいしか存在しないはずなんだけど……。
「ほら! あの眼鏡で坊主の子! クラスにいるでしょ?」
「……えー。……あー」
「なんでそんなに考え込むの!?」
聞いてみると、生徒会のときに田端から俺のことを聞いたらしい。
そのときに田端が、俺と友達になったとか仲がいいとか抜かしてたんだとか。
……俺は覚えてすらなかったのに。
「じゃあ、田端に声かけてみるか。あいつなら、きっと喜んでやってくれるだろう」
「うん、ロリコンっぽいし!」
「ロリコンっぽいもんな」
と、田端を呼ぶことに決定。
すると、ここでまさかの抗議の声。
「えーっと……田端くんって、男の子だよね?」
「まあ、くん付けしてることからも分かるがそうだけど」
「んっとね、私……蛍原くん以外の男の子とはうまく話せないから……」
ずっきゅぅぅぅぅうん!
これはずっきゅんですわ!
伏し目がちにそんなこと言われたら、俺の心は持たないよ糸ちゃん!
えーっと、なんか上手いこと言えないかな、これ遠回しに好意を伝えられてるようなものだからな。
えーっと、えーっと……。
「んー、糸がそういうんじゃやめとこ。田端くん、一回頼ったらめんどくさそうだし」
「おう、そうだな」
「うん……ありがと」
おい! なんかいい雰囲気になりそうだったのに妹に邪魔されたぞ!
しかもあんなフラットに溶け込んで来たくせして、邪魔したあとしっかりこっちにサムズアップしてきやがった!
……あとで覚えてろよ……!
ここで、再度協力者を探す会議に戻る。
「んー。でも、そうなると私は浮かばないなー」
「私も……日常部くらいしか、そんなに親しくないから……」
「前に同じ」
こうなると、八方塞がりだ。
確かに、急にパネルシアターを手伝ってくれなんて頼めるほど仲のいい友人がいたら、みんな放課後真っ先にこの部室に集まるなんて現象は起こらないはずだからな。
全員で、考え込む。
「……いないなー」
「……いないね〜」
「……いない……」
「ちょっと待ったぁぁぁぁぁぁあ!」
うぉっ! びっくりした!
さっきまででっかい毛玉が落ちてると思ってたけど、それが雪姫になって叫び始めた!
「ねぇみんな! 私のこと忘れてるでしょそうなんでしょ!」
「い、いや……忘れてた」
「ほーら、忘れてるじゃんこのばか! 私がいるのになんで議題に出ないの!」
「えーっと……なんで雪姫が議題に上がるんだ?」
「パネルシアターぁぁ! 話を聞く限り、私が適任じゃん! 最適じゃん!」
「「「………………はっ!」」」
「なんで今気づいたみたいな反応なのかな! 怒るよ! ちょっと怒ってるよ!」
……激昂する雪姫と、とぼけてそれを楽しむ日常部の面々。
何はともあれ、これで役者は揃った。
あとは全員で、精一杯練習するだけである。
続く。