小説家、蛍原大輔の作品は彼の死後、「名作」として絶賛された。
生前は彼の作品を知らなかった者も彼の作品を仰ぎ、彼の死を残念に思った。
そして、彼の作品が世間に浸透して、数年。
とある雑誌が、彼の遺作「日常部へ、ようこそっ!」について取り上げた。
記事の内容は、「日常部のメンバーは今」。
作品中では偽名で書かれていた日常部メンバーであったが、彼の妹であった蛍原ほたるによってその本名が明かされた。
まず、作品においてトラブルメーカーとして描かれていた「笹目雪姫」は、現在保育士をしている。
実はあの保育実習から子供と関わる仕事に就きたいと思っていた雪姫は、保育系の専門学校へと進学し、保育士への道を進んでいたのだ。そして、現在は飯森鈴絵の同僚として保育士をしている。
続いて、作品の主要なストーリーを支えていた「茨木薫」は、イラストレーターとして活動している。
彼女は高校在学中に描いたイラストがインターネットで人気を集め、卒業後にイラストレーターとしての活動が決定した。
そして、現在はバラエティ番組などでも活躍する一流イラストレーターとして育っている。
また、作品中でのブラコンっぷりが読者に人気だった妹の「蛍原ほたる」は大学で講師をする傍ら、ゲーム開発者としても活躍していた。しかし、大輔の死後はゲーム開発のみに重点を置くようになり、大学講師としての仕事からは距離を置くようになった。
と、ここまで調べた雑誌の記者であったが、彼らはここで衝撃の事実を知ることになる。
それは「日常部へ、ようこそっ!」のメインヒロインをつとめた「樫宮糸」について。
実は、大輔が橋から飛び降りた日、彼女は保健室へと向かっていた。
そこで彼女が耳にしたのは、健康診断の再検査通告。
彼女は、大きい病院へ受診に行くことが決定した。
そして、病院で診断された結果は、すい臓がん。診断された時点で、既に手術が出来る状況では無かった。
いつ死ぬかも分からない状況で生き延び卒業式を迎えた彼女は、式のあと大輔からの告白を受ける。
……実は糸も大輔に好意を抱いていたが、彼女は、大輔の人生を優先した。
ここで自分が大輔と恋人関係になってしまったら、近い将来自分が死んだ時に深い傷を与えてしまう。
その気持ちが、彼女にこの言葉を言わせたのだ。
「……私、好きな人がいるの」
それは、嘘ではなかった。
彼女は、大輔のことを愛していたのだ。
その半年後、大学に在籍しながら病院での生活を余儀なくされていた糸だったが、ついに息を引き取ることになる。
奇しくも彼女の命日は、大輔の小説家デビューが決定した日であった。
きっと、糸は大輔の夢を叶えてあげたかったんだろう。
しかし、その気持ちが大輔に届くことは無く、彼は死を選んだ。
……これが、夢を追った青年達の末路である。
……と、高校生の蛍原大輔は原稿用紙に書く。
そして筆を置くと、ゆっくりと一つ伸びをして、ベッドへと倒れ込んだ。
終わり。
こんにちは、雨宮照です。
ここまで拙作「日常部へ、ようこそっ!」を読んでいただき、ありがとうございました!
楽しんで頂けたでしょうか?
次回作もハーメルンで上げるので、ぜひそちらの方も応援よろしくお願いします!
感想など、待ってます♡(///ω///)