自宅に着くと、庭の小さな花壇に植えられているパンジーやチューリップが俺たち二人を出迎えた。
母親がパンジーとチューリップが組み合わさった花壇を作りたかったとかで、時期を合わせて植えたらしい。
ほたると俺。二人の部屋は共に二階に並列されているため、荷物を持ったまま若い木の色をした階段を一緒に上る。
すると目の前に白くてハリのあるほたるのふくらはぎが現れて目のやり場に困るも、まあ兄妹だしジロジロ見たところでどうでもいいかと思い、再び進行方向に目を向ける。
「じゃあ兄さん、あとでね」
「おう。後でな」
声をかけ合うと別々の扉へと入っていく兄妹。
俺は自分のデスクの上にカバンを置くと、萎んだ風船みたいに気が抜けて、ベッドにうつ伏せに倒れ込んだ。
そのまま枕に顔をうずめるも、呼吸が困難になってすぐに仰向けに転がる。
そして、天井を見ながらーー
「はぁ……、やっぱり、告白だよな……」
なんて、目下の問題について考えを巡らす。
さらにこの問題で厄介なのはーー
「はぁ……、どうやって振ろう……」
勇気を出して告白してくれる相手を振らなければならないってことで。
だってさ、俺には糸ちゃんっていう心に決めた相手がいるわけで。
……好きな女の子がいるのに他の女の子と付き合ったり、キープしたりできるほど俺は器用じゃないし、そんなことはせずに誠実でいたいし。
一度でも誰かと付き合ったことがあるような人からするととんだ綺麗事を言ってる馬鹿に見えるのかもしれないけど、俺は綺麗事って、やっぱり綺麗だからこそ綺麗事って言うんだと思う。
だから俺はーーこの状況で、悩んでいるのだった。
告白する側の勇気、今すげえ俺わかるし。
俺だって何度仲良くなる前でも糸ちゃんに告白したいと思ったか!
……そうやって考え事をしていたら、昼寝をしようと思っていたのに、気づいたら結局目が中途半端に冴えてしまっていた。
それと同時に、糸ちゃんとの仲について誰かに相談したいって気持ちが徐々に湧き始め……。
大輔 @ 女の子と仲良くなるのってどうしたらいいかな?
雪姫 @ なにそれ、大輔、糸ちゃんに告白でもすんの?
大輔 @ えええええっ!
…………。…………見抜かれてた。
ちなみに、この雪姫っていうのは去年のクラスメイトで一番仲の良かった女子だ。
国立斜文織では入学式の翌日に一年生が四日間キャンプに行く拷問……ごほん。イベントがあるんだが、その時にカレー作りや登山の班が一緒だったんだな。
それから、委員会が一緒になったり何やかんやで、校内ではほたるの次に仲良くさせてもらってる。
つまり、身内以外では一番仲のいい友人だ。
……で。
なんでこいつは俺の恋愛事情を、誰にも話したことのない恋愛事情を知ってるんだ!
若干不気味に思っていると、すぐにLINEのメッセージが送られてくる。
雪姫 @ えっ!
大輔 @ ええええええ
雪姫 @ えええー
大輔 @ えええええええ
雪姫 @ …………当たった?
大輔 @ そうだよ当たったよすごいなお前!
雪姫 @ んっ、まあねー。だって大輔、一年のときからいつも糸ちゃんのこと見てたじゃん。
大輔 @ 俺、そんなに分かりやすかったか……?
ちょっと心外なんですけど。
確かに糸ちゃんのことを目にするだけですぐに満面の笑みになっちゃう病気にかかってるけれども。
そうやって糸ちゃんのことを考えて頬を緩ませ、満面の笑みで天井を見上げていると、その時だった。
雪姫 @ ……だって、大輔のことずっと見てたから……そんなこと、すぐに分かるもん。
大輔 @ お前……。
突如として、こんな甘酸っぱい。
……酸っぱさが、割合でいえばコンビニの安いおにぎりの具くらいしかない、あまい、あまーいメッセージが送られてきたのは。
「(もしかして、手紙を下駄箱に忍ばせておいたのは、こいつなのか……?)」
昼間の、下駄箱での情景を思い出す。
そして、カバンを見つめ……。
こいつが彼女だったら、毎日楽しいだろうなぁ……って、そんなことを考えてみた。
しかしその矢先、「さっきのはそういうんじゃないから!」なんてメッセージが来て、さっきの甘すぎるメッセージは、残念なことに本人の手によって削除されてしまったのだった。
……スクリーンショットを撮っておいてよかった。
続く。