指揮官が不細工すぎる 作:排無
艦船という存在は不思議なものだ。今もどこかの学園で私と同じ「加賀」がいるのだ。そこの「私」は何を考え、どう行動しているのか…着任したての頃の私はそのことについてよく物思いに耽っていた。
その後聞いたのだが指揮官曰く、同じ艦船の性格は環境が違えどほとんど変わるものではないという。
当時の私はそれを聞いて「そうなのか」としか思わなかったがすっかり失念していた。
艦船の中には指揮官を病的に愛している者がいることを。
姉様は苦しんでいた。
大鳳も苦しんでいた。
「ギギギ…」とか「グググ…」とか唸りながら歯をくいしばり、身体を…なんだ?とにかくめちゃくちゃに捻っている。この二人は定期的にこのような発作が起きる。
私と赤城姉様は同時に着任した。そして指揮官の顔を二人で見た。
あの顔を見た時、私は全身に今までに感じたことのない恐怖を感じた。それも尻尾の一本一本の毛が逆立ったのが分かる程の。あまりの圧に顔を逸らすとそこには彫像が如く固まった姉様の姿があった。
それからだ。姉様がおかしくなってしまったのは。いや、身内の私から見ても元々まともではなかったが、本当におかしくなってしまった。
「顔の美醜などというちっぽけなものでこの赤城の愛が止められるわけ…うぐううううううう!!」
「指揮官様ぁ…私は貴方を愛して…愛し…ふんがあああああああああ!!」
とてもじゃないが見てられなかった。
半年後、大鳳が着任した。
姉様の好敵手…違うな、恋敵?とにかく私はそんな奴の顔を拝みたくて着任の挨拶に立ち会った。
入るや否や奴は「指揮官さま〜♡」と耳の毛が萎びる不快な声を上げながら指揮官の仮面を引き剥がした。するとどうだ。まるで時間が止まったかのように大鳳が動かなくなったではないか。
一連の流れがそれはそれは可笑しくて笑っていた私に対して指揮官はこう言った。
「…加賀、大鳳を君達の部屋に連れて行ってくれるか」
「…は?」
どこから聞きつけたのか姉様と大鳳が不仲だということを知った指揮官はあろうことか私達と大鳳を相部屋にすると言い出した。理由としては関係の修復が狙いだという。我が指揮官ながら甘ったれたことを言うし、丸くなった私も私だ。すんなりその提案を受け入れてしまった。
こうして今の惨状がある訳だ。見ろ、この二人の顔を。まるで地獄の底で釜茹でにされているかのようだ。皮肉なことに、指揮官の思惑通りある意味二人は仲良しこよしだ。
私か?正直言うと指揮官の顔はまだ怖い。しかし逆にそれ以外のあらゆる事象が全く恐れるものではなくなった。