指揮官が不細工すぎる 作:排無
ケッコン。
それは指揮官との間に強い絆を持った艦船だけが執り行うことができる儀式。指揮官から渡される誓いの指輪を付けることで私達はさらに強くなれるという。ケッコンという名称から、全ての艦船の憧れでもある。
…というのが大抵の学園に属する艦船達のイメージだ。
しかしケッコンと言っても所詮は人間と艦船。子供を作ることはできないし、夫婦になったからと言って何か特別なことをするわけじゃない。単なる性能の底上げと言ってしまえばそれだけの話で済む。
…そう自分に言い聞かせないとやっていけない。
指揮官のことは好きか嫌いかで言えば好きだ。むしろ嫌いになる要素が全く見つからない。顔?そんなもの愛の力の前では…うぐぅ…
先にも述べたが私達艦船は人間の子供をその身に宿すことはできない。いくら指揮官の顔が不細工でもまず子供が作れないのだから遺伝の心配は皆無。ただ共に生活するなら見た目というものがなんとも微々たる存在か…うぅ…
ダメだ。やっぱり顔を気にしてしまう。
わかってる。わかっているんだそれがいけないことぐらい。私の指揮官が好きだというこの気持ちがわからなくなってくる。性能の強化なんてどうだっていい。ただ彼に伴侶として選んでもらえたらそれは実に幸せなことじゃないか。そうだ、私は指揮官の側にいるだけで…で、でもでもせっかくケッコンするならやっぱり夫婦らしい営みの一つや二つ…あー顔が、あの顔がチラつく!
「…んもう!」
はっきりしない自分に苛立ち、思わず机を叩く。自分でも色恋沙汰には疎いと思っているが…
「どうしたのエンプラ姉そんな怖い顔して」
「ホーネット…相談があるんだ」
指揮官が好きだ。しかしどうもこの気持ちが本物かわからない。私はどうすればいいんだろう?
「…ごめん、私もちょっと…よくわからない…」
なんてことだあのホーネットが。彼女のことなら『そんなこと気にしないでドーンとアタックしちゃいなよ!』みたいなことを言ってくれるのを期待していた。正直背中を押してくれるだけでも良かったのに…
「なんだホーネットは指揮官のことが嫌いなのか?」
「えっ、いや別に嫌いじゃないけど…」
「君らしくないぞ。はっきりしろ」
「………普通」
「なんだって?」
「普通!好きでも嫌いでもどっちでもないの!!」
「わ、悪かった…」
どうしよう、まさかホーネットですらあんな回答だなんて…もしかして指揮官が好きな酔狂は私しかいないのでは…?
いやまだだ。指揮官の顔をものともしない鉄血の面々がいることを忘れていた。正直苦手なのだが…オイゲンにでも聞いてみよう。
「指揮官のことが好きか嫌いか?どっちでもないわよ。言っとくけど鉄血の大体は指揮官のこと単なる上官としか見てないわよ?流石にあの顔じゃねぇ…」
私は悩むのをやめた。馬鹿らしいというかなんというか…どうやら考えてはいけない問題だったらしい。