指揮官が不細工すぎる   作:排無

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7話

指揮官から1週間の休暇を貰った。どうやら最近の私が疲れているように見えたらしい。確かに私の出撃回数は他の子よりは多いものの1週間も休む程ではない。しかし指揮官に頼まれると断れないというか…謎の威圧感を感じてしまう。

 

休みを貰った次の日にはユニオンから新しい仲間が増えることだったので立ち合いだけはさせてもらった。

しかし今回は全員顔を見てしまった。指揮官も私も警告したのに…とにかくみんな泣いたり叫んだり気絶したりと阿鼻叫喚の地獄絵図。ブレマートンがギリギリ耐えたものの残りは全滅した。また私はヴェスタルに電話をかけることになるのだった。

 

 

 

「エンタープライズちゃん!私何度も言ってますよね!?新しく来る子には指揮官の顔を見せないようにしてって!」

 

「してるよ!私も指揮官もちゃんと警告しているんだ!それでも見たがるから…」

 

「それでこの有り様ですよ!?ブルーギルちゃんなんて呼吸に異常が出てるんですから!」

 

奥のベッドに目をやると酸素マスクやチューブに繋がれたブルーギルの姿が。まるで大手術を控えているみたいだ。その他にも白目で泡を噴いて気絶しているイントレピッド、うずくまって震えているリノ、何かブツブツ呟いているクーパー…

私はメンタルキューブに刻まれた記憶で戦争やその惨状によっておかしくなってしまった人々を見たことがある。彼女達の症状はまさにそれに近い。大きな違いとしては原因が人の顔を見たということだが…

こうして精神的にやられた艦船は学園のおよそ8割。メインで出撃している鉄血だって全員が全員無事ではない。

ヴェスタルによると指揮官の顔で精神がやられたことによる主な症状としてはあの顔が度々フラッシュバックするとのこと。夢に出たり幻覚が見えたりするとか。あとは個人によって目まい、吐き気、頭痛、悪寒その他諸々…戦力を奪うには十分すぎる破壊力だ。

ちなみにヴェスタル自身は指揮官の顔を見ていない…ということになっている。私は立ち会っていたので指揮官とヴェスタルの顔合わせを見ていた。失神するところまで含めて。

私は医療に関してはさっぱりなのでこれは憶測だが…失神した際に彼女の防衛本能があの顔の記憶を瞬時に消し去ったのだろう。以来、ヴェスタルは指揮官の顔を見ようとしない。

 

 

 

1週間あった休みはユニオンの同胞達の看病で終わってしまった。休みとは言え何かをする予定もなかったのでそれは別に構わないのだが…彼女達の心は救えなかった。

 

そして指揮官が深刻なトーンでこう言った。

 

 

 

「エンタープライズ、私はもう指揮官を辞めようと思う」




次回最終回です。

おかしいなまた指揮官が辞めてるよ

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