魔法少女まどか☆マギカ [別編]~再臨の物語~(第3部)   作:マンボウ次郎

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魔法少女まどか☆マギカ 別編~再臨の物語~(第3部17話)

無花果の大樹の中心は、あの時と同じく中心部分が空洞になっていて、その中から赤紫色の光を放っていた。

 

「あの光は、ゆう子のソウルジェムなのか?」

 

光の中に、ゆう子の身体が見えた。

そして、その身体を包み込むように、ゆう子の後ろにもうひとり、少女の姿があった。

 

「あれは……」

 

どことなく、ゆう子と面影の重なるような少女が、優しく抱きかかえている。

産まれたままの姿で、いたわるように、慈しむように、ゆう子の後ろから両手を回していた。

 

「天生目……涼子」

 

「え? あれがゆう子の、お姉さん?」

 

ほむらは思い出した。

夜の浜辺で円環の理に導かれ、ほむらが看取った魔法少女。

ゆう子の実姉、天生目涼子の姿。

 

『ゆう子、大きくなったんだな……強くなったんだな……』

 

「声が!」

 

涼子の優しい声が聞こえてきた。

魔法少女のテレパシー、心の声が、皆の頭の中に聞こえてきた。

 

『私のソウルジェムを継いで魔法少女になっていたのか。また辛い思いをさせてしまったんだね』

 

――ゴメンな、ゆう子。

 

――ありがとう、ゆう子。

 

涼子は、ひとり語りかける。

目を閉じ、力尽きたゆう子に優しく語りかける。

 

『そうか、友達を助けるために、自分の力で走っていたんだね』

 

ほむらや杏子には、涼子の声だけが聞こえているが、そこには姉妹の会話が交わされているのか、涼子はまるでゆう子の話を聞いているように続けた。

 

『大丈夫だよ。割れてしまったソウルジェムは、元々はお姉ちゃんのものだ。ゆう子の魂は、まだ死んじゃいないよ。そうだろう? キュゥべえ』

 

涼子はそう言って、大樹の根元を見た。

そこには、どこから来たのか、いつからいたのか、魔法の使者であるキュゥべえが姿を見せた。

 

「天生目涼子、久しぶりだね」

 

「キュゥべえ!」

 

ほむらも、その場の誰も、キュゥべえが姿を現したことに気付いていなかった。

あかねに殺されたはずのキュゥべえは、いつもと変わらず飄々と、小さな身体に大きな尻尾を振りながら大樹を見上げていた。

 

『この子の肉体は死んでしまったけど、魂はまだ生きている……でしょ?』

 

涼子はテレパシーで問いかけた。

 

「そうだね。彼女は願いを叶えて魔法少女になったけど、そういえば【彼女自身のソウルジェムは産み出されていない】んだったね」

 

『私のソウルジェムで代用した魔法少女だったんだ。ならばもう一度、ゆう子自身のソウルジェムを輝かせれば、魔法少女として蘇ることは可能なんだろ?』

 

「まあ、理論上はね。でも、願いを2度も叶えるのはルール違反だね」

 

『いいじゃないか。よくある【イレギュラー】ってやつだよ』

 

「やれやれ、君には敵わないよ。でも、早くした方がいいね。君に呼ばれて来たのはいいけど、僕という個体も長生きできなそうだ」

 

キュゥべえはそう言って、後ろを振り返った。

ほむらの先、杏子とさやかの向こう側。

翼の折れた白い悪魔、螺良あかねがキュゥべえを鋭く見ている。

 

「インキュベーター……!」

 

あかねの眼は、さっきまでの冷たい視線から一変して憎悪に燃えている。

当初の目的、インキュベーターへの復讐は忘れていないようだった。

 

「おっと、そうはさせねえ!」

 

杏子は槍を掴み、すぐさまあかねに向かって躍り出た。

ほむらも魔力で八咫の盾を修復すると、M249軽機関銃を取り出した。

 

「ほむら! ソウルジェムを撃つんじゃねえぞ!」

 

「あなたに言われなくてもわかっているわ」

 

杏子があかねに槍を振り下ろすと、影の少女たちが動き出した。

あかねの意思で操られているのか、ただし影の少女たちは全員が動くのではなく、一部の少女だけが杏子に向かって攻撃を仕掛けた。

杏子があかねを足止めし、ほむらは影の少女を足止めする。

 

「あっちは任せよう。あたしたちは、あたしたちのやれることをやるだけだ!」

 

光明を見出した杏子は、動きが軽い。

相変わらず、繰り出す槍はあかねに弾かれてしまうが、八重歯をこぼした笑みがそれを証明していた。

 

(ゆう子は生きてる。あとはコイツを何とかすれば……)

 

杏子は、背後から迫る影の少女たちを気にすることなく、全力であかねに攻撃を向けた。

空から飛来する影の少女たちは、ほむらが機関銃で撃ち抜く。

ソウルジェムを破壊してしまうことなく、正確な狙いで影の身体に銃撃を浴びせると、肉体を破壊された少女たちは空っぽのソウルジェムを残して消滅していった。

 

ふたりのコンビネーションも、近距離と遠距離のバランスが取れた見事なものだった。

しかし、飛来する影の少女は人数が多い。

ほむらの銃撃をかいくぐったひとりが、杏子の背中に攻撃を仕掛けた時、それを受け止めたのはさやかだった。

 

「さやか!」

 

影のさやかは言葉を発しない。

が、彼女だけは元の意識を取り戻しているのか、なんと杏子たちに加勢した。

 

ほむらはM249軽機関銃を打ち尽くすと、今度は89式小銃(ワルプルギスの夜で使い魔相手に使った小銃)を取り出し、杏子の背中を守る。

機関銃よりも小型で軽量な小銃で、軽快に動き回りながら杏子をフォローした。

 

杏子は猛攻をしかける。

自分の後ろはほむらとさやかが守っている。

その心強さに奮起し、あかねに反撃の隙を与えなかった。

 

『それじゃあ、天生目ゆう子。聞こえるかい?』

 

キュゥべえはゆう子の魂に語りかけた。

あの時と同じように。

 

『本来なら絶対に叶うことがない、2つ目の願いだ。確かに君は、涼子のソウルジェムを代用していた。だから今度は、本当に自分のソウルジェムを輝かせる番だ。【今回はイレギュラーだから】ね、仕方ない』

 

涼子がクスっと笑った。

 

『君は、どんな祈りでソウルジェムを輝かせるんだい?』

 

『――――』

 

『それは……そんな願いで、いいのかい?』

 

『――――』

 

『君がそれを望むなら構わないさ。だけど、その願いは……あまりに理不尽だと思うけど』

 

『――――』

 

『そうか。それもまた、大きな因果を紡ぐことになるだろうね』

 

『――――』

 

『まったく、人間の感情というものにはいつも驚かされる。まあいいさ。その願いがどんな結末を迎えるか、見届けてあげよう』

 

キュゥべえとゆう子の、魂の会話はこれで終わった。

あとは、魔法の使者であるインキュベーターの力で、ゆう子の魂の宝珠が輝く。

 

『ありがとう、キュゥべえ。恩に着るよ』

 

『さすが、魔法の寵児である君の妹だ。この子の祈りは、大きな奇跡を生むかもしれないね』

 

そう言われてから、ゆう子はゆっくりと目を開けた。

今までと変わらず、赤紫色の燕尾服を着て、耳にはイヤリング型のソウルジェム。

カラーも、いでたちも、何もかもがさっきまでのゆう子のまま、魔法少女として戻ってきた。

 

ゆう子は後ろの暖かい身体に気付くと、優しく包む両腕を抱き

 

「お姉ちゃん」

 

とだけ言った。

ゆう子の目から、温かい涙がこぼれる。

泡沫の記憶を呼び覚まし、今ここに姉妹が再会した。

 

「さあ、ゆう子。お前の願いを実現させよう。キュゥべえが叶えたのは、その祈りのきっかけだけだ。あとはお前の力が導くはずだよ」

 

「うん。任せて」

 

「私も力を貸すよ。お前の願い、私が同じ立場でも、同じ願いを告げるだろうからね」

 

ふたりは手を取り合うと、視線の先に螺良あかねを見た。

ゆう子のソウルジェムが激しく輝き、無花果の大樹が大きく鼓動する。

 

「いいかい、ゆう子。まずはあの子たちを解き放つんだ。お前の目覚めた力は、魂の浄化。無理やり操られた彼女たちを還してあげよう」

 

「わかった」

 

涅槃の中心で、姉妹の力が重なる。

ふたつの魔力が相乗効果を起こし、無花果の樹は生命力に溢れた。

上空には魔法陣が敷かれ、それはまるで後光のように大樹を照らした。

 

 

 

続く

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