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………おかしい。
あの一件以来、僕は部屋に引きこもっている自分を嫌悪するようになり、日を追う毎に孤独感が強くなっていく。
僕は机に広げられている問題集を解こうとしたのだが、全然集中できず、数分で問題集を閉じた。
「………はぁ」
大きなため息をつき、僕はベッドに寝そべった。
ベッドで横になりながら、僕は高校というものを今一度考えてみることにした。孤独感が強まる原因は自分でもわかっている。自分が学校に行っていないからだ。学校に行かず、友人もいない。1年前は親のことを考えずに家から一歩も出ない生活だったが、今年から買い物に行くことにし、下校中の生徒を見る度に、嫉妬に近い気持ちが募っていった。
このままの生活だと、自分は絶対にダメになる。そんな気がするのだ。むしろ、ダメになる未来しか見えない。目先の事を考えて恐怖を感じるのは中学校の時以来だ。考え事をすればするほど暗い未来しか見えない。
親を安心させるにはどうすればいいのか。
それについても考えると、ある1つの結論に至った。「学校に行けばいい」と。
ずっと考え事だけをしていても何も解決にはならないし、この気持ちは家にいるだけでは収まることがない。どの道、自分に選択肢などはない。高校へ入学する。それが僕の、学生としての義務なのだと自覚した。
1時間悩みに悩んだ末に答えを出し、僕は1階へ降りる。念の為、父の考えを聞くことにした。
リビングで新聞を読んでいる父に近付き、僕は口を開いた。
「お父さん」
「ん、光瑠か。お前から俺に話しかけるなんて珍しいな。どうした? 」
「僕、学校に行った方がいいのかな」
父は新聞から目を離し、唖然とした表情で僕を見た。
「学校に行きたいのか?光瑠」
「行きたい気持ちもあるし、ちょっぴり行きたくないって気持ちもある。お父さんは、どう思う? 」
「無理に学校に行く事を強制するつもりはない。行きたければ行けばいい。光瑠次第だ。自由にするといい」
「……ありがとう。お父さん」
「ああ。だが無理して学校に行くことはないからな」
「……わかってる」
僕は父にお礼を言い、部屋に戻った。
僕の父親は昔から放任主義で、父からあれをしろ、これをしろ等と言われたことはあまりない。自分の判断で決めろ。それが父のスタンスだと僕は思っている。
自室で夕食のカップラーメンを食べた後、僕は再度1階へ降り、母に伝えるべきことを伝える為に、キッチンへと向かった。僕が母の方へ近付くと、母の方から話しかけてきた。
「あら光瑠。どうしたの? 」
「……お母さん。 ……あのさ」
「んー? なあに? 」
迷いが邪魔し、言葉が詰まったが、その迷いを振り切り、勇気を出して自分の気持ちを伝えることにした。
「…僕、学校に行くよ。このままお父さんとお母さんに迷惑をかける生活は嫌なんだ。高校に行けば、少しは気分が晴れるかなって思ったから」
僕の言葉を聞いて、母は安堵したようににこやかに笑った。
「うん。その言葉を待ってたよ。まったく。1年もかかっちゃったね。それを言うのに。もっと早く言ってほしかったなー? 」
「ご、ごめん……」
「いいよ。光瑠の勇気に免じて許してあげる。あれだけ学校に行きたくないって言ってた光瑠から、学校に行きたいって言葉を聞けただけで充分だよ! 」
「お母さん……」
母は僕の気持ちを1番理解してくれていた。学校に行きたくないという我儘を1年以上も許してくれた。本当に感謝しかない。母の気さくな性格が、僕の心を陰でずっと支えてくれていたのだと、改めてそう思った。
「そうと決まれば、入学手続きしないとね!光瑠に行ってほしい高校、もう決めてたんだ! 」
「どこの高校? 」
「羽丘学園っていう高校で、前までは女子校だったんだけど、最近共学になったばかりなの!羽丘なら家からそう遠くないし、行くならそこがいいかなって思って! 」
羽丘学園か……。初めて聞いた。もしかしてこの前すれ違った灰色の制服の人達は、羽丘の生徒だったのだろうか。もとは女子校ということは、生徒数は女子の方が多い感じかな。最近共学になったばかりなら尚更。
「うん。わかった。じゃ羽丘に行くよ」
「じゃ、行く高校は羽丘で決まりね!編入できるかどうか、明日電話で聞いてみるから! 」
「いろいろごめん。お母さん」
「いいよいいよ!光瑠はまだ子供なんだから、そういうのは親に任せておけばいいの!子供は、親を頼って成長していくんだから! 」
相変わらずのお人好し加減に僕は安堵し、母に何度もお礼を言った後、自分の部屋に戻った。
母が言うには、入学手続きには最低でも2週間はかかるらしい。高校に入学する前までの空き時間を有意義に過ごそうと思った。どのみち学校が始まればゆっくりできる時間が減るのだから。
束の間の休息をゆっくりと過ごす。僕はそう心に決めたのだった。
いかがだったでしょうか。ついに学校に行く事を決めた光瑠くん。
ここから彼の物語がスタートします。お楽しみに!
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それではまた次回のお話でお会いしましょう!