さて、今回は光瑠くんとあのキャラが……!?
「……ふぅ」
2時間目の授業が終わり、僕は小さくため息をついた。初めて高校で授業を受けてみたのだが、家で自主学習していた僕にとってはあまりにも簡単すぎた。授業を聞いてノートを書いてるだけでテストで100点はとれそうだ。
次の授業の準備をしていると、横から声が聞こえた。
「おい! 」
いかにも男の人が人を呼ぶ際に言う言葉が聞こえたが、自分に向けられているものではないと思った為、僕はそれをスルーした。
「おいってば! 」
またしても男子生徒の声が聞こえてくる。しかも僕の耳元で。少しうるさいなと思ったその瞬間、肩を掴まれた。
「おい!無視すんなよ! 」
「……え」
横を見ると、僕の隣の席の男子生徒が、笑みを浮かべていた。
肩を掴まれて、初めて僕に対して話しかけられているのだとわかった。中学校の時、そんなこと1度もなかったのに。
「……僕…?」
「そう!お前だよ!こないだ俺と目合ったよな!その時から、面白そうな奴だなって思ってたんだよ!この時期になってもマスク付けてるしさ!まさか同じクラスになるなんてな! 」
「は、はぁ……」
「あ、名前言うの忘れてた。俺は達也。
「う、うん。そうだよ」
「数少ない男同士なんだ。仲良くしようぜ! 」
「………」
達也と名乗ったその男子生徒は制服の下に白いパーカーを着ていて、フードを出している。制服のズボンにはチェーンらしきものが着けられており、しかも茶髪。うん。間違いない。この人は不良だ。僕はそう確信した。不良の生徒と関わりたくはない為、この人と離れることを決めた。
「……悪いけど、あんまり僕と関わらないで」
「ん…? 」
よし、こうやって冷たく突き放せば、もう二度と話しかけてくることはないだろう。でもそれが本望だ。彼には少し申し訳ないけど、離れてくれるのなら……
「あはははははっ!やっぱり面白い奴だなお前!気に入った!これからもお前に話しかけるわ!あははっ! 」
「……は!? 」
思わず声を出してしまった。何を言ってるんだこの人は。
「あ、あの、君、人の話聞いてた?僕は君に、関わらないでって言ったんだよ……? 」
「え、それって関わってほしいの裏返しなんじゃねぇのか? 」
「違うよ……本心で関わらないでって言ったんだよ……」
「そんな目しながら言われても説得力ねぇんだよ。言ってることと表情が違うんだよ。お前」
「え……? 」
そんな目?僕はどんな表情であの言葉を言ったんだ……? 無表情のつもりで関わらないでと言ったはずなのだが。どうして……?
「まぁでも、お前の事気に入ったから、これからもお前と関わり続けるからな! ははっ! 」
僕のどこに気に入る要素があるというのだ。しかも面白いとも言ってたし。彼の考えることがいまいち掴めない。
「僕、不良の人と関わりたくはないから……」
「あ? 不良?どこにそんな奴いるんだ? 」
「君だよ! 」
「あぁ!?」
彼がものすごい勢いで僕を睨んできた。いや、自分が不良だと思われていたことに気付いてなかったのか。そしてその聞き返し方、ほんとに不良と思われるよ。怖い。
「俺のどこが不良なんだよ! 」
「え、髪とか服装とか……」
「これはオシャレなんだよ!見た目だけで不良って決めつけてんじゃねえ!光瑠! 」
オシャレなんだ…… てか今普通に名前呼びされたし。彼はもう僕を友達だと認識しているのだろうか。
「今、僕のこと名前で呼んだよね…… 一応聞くけど、もう僕を友達って思ってる……? 」
「当たり前だろ! 俺とお前はマブだ!いや、最初から、お前と親友になる運命だったんだよ! 」
……うん。やっぱりね。そう認識してるとは薄々は気付いてたよ。しかも話が早すぎるよ。彼がその認識だといづれめんどくさいことになりそう。嫌だな……。だってこの見た目の彼と一緒にいたら、僕まで何かよからぬことを思われるんじゃないか。僕は静かに過ごしていたいんだけどなぁ……。
「君が友達だと思ってても、まだ僕は君を友達とは思ってないよ?それでもいいの? 」
もう1度突き放す感じで彼に言った。それを聞いた彼は、やはり僕の予想を超える事を言ってきた。
「別に構わねえよ?だって俺がお前を友達って思ってるんだから、たとえお前がそう思ってなかったとしても、ダチはダチだ。そんでお前は俺のマブ。そう決めた。てか、もう決まった! 」
「え、ええ……」
彼の言葉に絶句していたその時、3時間目の授業の始まりのチャイムが鳴った。彼は席に着いて、机の中から教科書を出した。
「ま、とりあえずよろしく頼むぜ! 光瑠! 」
「……う、うん……」
僕は真面目に授業を受けた。隣の彼はその見た目とは裏腹に、ちゃんと授業を受けていた。きちんとノートもとっている。人は見かけによらないとは言うけど、まさしく彼そのものを指している言葉だと思えてきた。
休憩時間を挟んだ後、引き続き4時間目の授業を受け、僕がノートを書く手を止めた瞬間、4時間目終了のチャイムが鳴った。
3、4時間目の授業も今の僕にとっては簡単すぎる内容の授業だった。このレベルの授業が毎日続くのなら、こんなに楽なことはない。授業受けてさっさと帰って家でゆっくりしよう。あ、そうだお弁当食べよ。
僕が無言でリュックから弁当箱を取り出すと、横から肩を叩かれた。
「光瑠!一緒にメシ食おうぜー! 」
やはり隣の席の彼だった。半ば悟りきったように、彼の昼食に付き合うことにした。断っても彼、どうせグイグイ来るだろうし。
弁当箱を開けると、母親の言った通り、僕の好きな具がたくさん入っていた。野菜なども入っていて、栄養バランスを考慮してくれていることが嬉しかった。
彼は隣でサンドイッチを食べながらずっと僕の方を見ている。正直恥ずかしいしはっきり言ってしまえば鬱陶しい。彼からの視線にうんざりしながら、僕はマスクを掴んで、マスクの下からお弁当を食べた。
「お前、食い方変わってんなぁ……。メシの時くらいマスク外せばいいだろ。……やっぱ面白いなお前!」
「食べてるとこ見られたくないんだよ。どうしようが僕の勝手でしょ。君には関係ない」
「へいへい」
お互いしばらく無言で昼食を食べ、僕が弁当箱を閉じた時、彼が口を開いた。
「なぁ」
「なに」
「お前さ、なんで羽丘に来たんだ? 」
「家が近いから」
「そんな理由かよ。もっとこう、あるだろ!他の理由! 」
「他のとこと比べて学費が安い」
「ちげーよ! なんか他にもあるだろ! 」
「ないよ。じゃあ君はなんでここに入学したの? 」
僕がそう聞くと、彼は即答で理由を述べた。
「決まってんだろ。女目当てだ! 」
「……は? 」
僕は唖然とした。入学した理由が女の子目当てって、そんなこと、あってもいいのだろうか。
「だって羽丘って最近共学になったばかりだろ?なら必然的に男子よりも女子の生徒の方が多いだろ?しかも羽丘は可愛い女ばっかり。最高じゃねえか!ほとんどまだ女子校みてえな高校で、俺は心置きなく女子達を拝めるわけだ。こんなに嬉しくて最高なことはねぇよ!な、おい、光瑠もそう思わないか?」
「思うわけないでしょ」
女の子目当てでここに入学しただなんて。ものすごく不純な理由だと思った。もともと彼にあまり良い印象は持っていなかったが、彼は重度の変態なのだと、僕は確信した。
「いやー、こんだけ女子いるんだから、彼女の1つや2つ欲しいんだよなぁ……でも周りの女子達、俺を見るとなんか嫌な顔するんだよ。ひどくね? 」
「当たり前でしょ。君は放っておくと、なにか良からぬことをしそうだからね。女子達が嫌がるのも無理はないよ」
「お前もお前で初対面の俺に対してすげえ辛辣だな!?お前も女子並にひでえぞ!? 」
「そう? 別に、普通だと思うけど」
「お前ェ……」
そんなやりとりをしながら、僕はふと頭の中でこう思った。
僕は、かなり危ない人に目を付けられたのではないかと。
こんな不良みたいな見た目の、しかも変態にこれからも話しかけられるなんて、先が思いやられそうだ……。だが僕と話している時の彼の顔は、何故か、とても楽しそうだった。
いかがだったでしょうか。
新キャラクターの達也くんが本格的に登場しましたね!彼がこれから光瑠くんにどんな影響を与えるのか。そして光瑠くんは彼とどのように接していくのでしょうか。
次回もお楽しみに!
感想、評価。どれもとても嬉しいです!ぜひお願いします!
それではまた次回のお話でお会いしましょう!