「スマイリーの誰でもできる楽しいクッキングー! イエー!!」
パチパチと雄英新入生たちがいる前で謎の発言をはじめたスマイリー。教師も在校生たちも何がなんだかわからない状況である。
彼の隣には特大の鍋が置かれており、その中に大量の水を入れていた。
「それじゃ、まずはエンデヴァーの火で鍋を暖めます。あいつの火だとすぐに沸騰するから便利なんだよ。鍋が温かくなったら、少々固めのドラゴンの肉をこの大鍋にいれていきまーす。あ、これはリューキュウの肉じゃないから安心してね。続けてグリフォンとペガサスの翼で味付けし、吸血鬼の血でさらにとろみをつけていきます。さらに、バジリスクとコカトリスの肉を幻獣として有名な麒麟の血で漬け込んだ物を追加で入れていきます。これにより先に入れていたドラゴンの肉にも染み込み、深い味がするようになります。ここでグツグツと煮込んでいったら、クラーケンのダシを追加で入れていきます。さらにかき混ぜていくと……うん。いい匂いだ」
鍋の中から紫色の煙が立ち込めてくる。どう考えてもいい匂いはしなさそうである。
相澤からしてみれば自分が受け持つクラスの実力を把握しておきたく、初日からテストを仕掛けるつもりであったが、気がつけば入学式に参加させられていた。
なにをするつもりか解らないが、止める必要があると判断してはいるのだが、体がなぜか動かない。
「さてさて、ここでクラーケンの本体をぶつ切りにしていれていくよ、食感のアクセントになるからね。でもってホークスからパクッて来た翼もついでに入れちゃってと最後にケルベロスとオルトロス、リヴァイアサンの心臓をスライスした物を入れて、最後にネギをお好みの本数入れて蓋をします」
大鍋に蓋がされ、カタカタと音を立てる。その間も誰一人として動くことができなかった。
「さてそろそろ出来たかな」
蓋を開けると、虹色に輝く煙が体育館を覆う。見た目に反して匂いはよく、だれも嫌がる素振りを見せない。
「はい、スマイリー特製ネギチャーハンの出来上がりー」
『なんで!?』
スマイリーの手には一般的なさらに盛られたチャーハンであった。特大の食材を入れたはずなのに出来上がったのは、一人前程度のチャーハンである。盛られているのは米とネギだけである。その他の食材は一切確認できそうにない。
「さて、試食といきましょう! 試食していただくのは三年生の天喰環くんでーす」
「――――ッ!!」
身動きできないように両手両足を固定され、布で口を封じられている天喰環は、必死に逃げようとするが、個性が使えない状況での自力での脱出は無理であった。
「さあ、遠慮せずに食べてね~」
口にあった布を取り、ネギチャーハンを口の中にねじ込む。
「んんんっ!? ごほっ」
遠くで自身の友人の声が聞こえたような気がする環であったが、口の中に侵略してきたチャーハンに意識が持っていかれる。
(美味い!? なんだこれは!!)
人が食べられるのか怪しい物が大量に入れられていた気がしたが、そんなことはなく。人生で一番美味いチャーハンであった。
「うっ……うおおおおおおおおっ!!」
しかし、彼自身の個性と実はちゃんと入っていたドラゴンらの食材は見事にマッチしていた。
「うんうん。リアルサンイーター計画が前に進んだね。じゃ、入学式終わりね~」
『ええええええええっ!?』
スマイリーが去り、残されたのはドラゴンかグリフォンかホークスなのかわからない翼やら、クラーケンの足やらが発動して妙にアグレッシブルになった環とそれをポカンと見ている生徒と教員であった。
「あ、ヒーロー科の一年生はこのあと早速A組B組の合同で授業だからさっさと校庭に来るように。来ないと除籍するよ」
もう一度顔を出したかと思いきや、とんでもないことを口走り姿を消した。
それを聞いて爆豪は、
「デク!」
とだけ言って自身は走って姿を消した。
「みんな! 早く行こう。じゃないと除籍はしないだろうけど、あの人のことだからトンデモないことをするかもしれない!」
デクと呼ばれた緑谷は立ち上がって、ヒーロー科の生徒たちに声をかける。
「え、いや、どういう……」
戸惑う者も当然出てくるが、
「ごめん。今説明している暇はないんだ! 今は急いで校庭に向かおう!!」
「皆! よくわからないが、今は彼に従おう!!」
メガネを付けた男子生徒――飯田天哉も立ち上がり、緑谷に賛同する。
「そ、そうだな! よく分かんねぇけど、急ごうぜ!!」
さらに立ち上がって賛同してくれた切島鋭児郎も困難はしているが、ここに座ったままハイテンションになっている天喰を見ていたくないという思いも少なからずある。
ゆっくりであるが、その思いが伝播していき、最終的には爆豪を除いた39名で移動を開始した。
ちなみに爆豪は遅れてくるやつがいてもいいように。スマイリーに攻撃をしかけ、自分に意識を集中させて、時間稼ぎと自身の鬱憤を晴らそうとしていたが、あっというまにネギで吹っ飛ばされていた。ちなみに平然と個性を使っているが、事前に個性を使って攻撃していいとスマイリー本人から言われている。
「お、来たか。……まぁ、それなりに早いから良しとしようか」
「よかった……」
ほっと一息つく緑谷。ネギの山に埋もれている幼馴染は見ないようにしている。
「さて、知っていると思うが、今年から俺の勝手な権限で雄英は全寮制になっている。よって朝から晩まで楽しい楽しい授業が盛りだくさんだ。三年間楽しくいきたいと思うなら別の学校に行ってくれていい」
スマイリーは40人の様子を見る。全員気を引き締めている。一人ネギの山から顔を出しているが。
「先に言っておくが、普通科の連中もヒーロー科を目指して厳しいカリキュラムを俺が導入した。少しでも悪い点を取ったら普通科の人間と入れ替わることを覚悟しておけ、推薦で入った4人も例外じゃねぇからな」
ニヤリと仮面が笑みを見せる。
「さて、この授業はお前らの担任からの許可は取ってない。だが、授業単位としては含まれている。こういうことはこれからもやっていく油断すんなよ? じゃ、今からお前たちにやってもらうのは、これだ!!」
校庭に突如として巨大な塔に見えるネギが出来上がった。
「名付けて! 〈伝説のネギを取り返せ!! わくわくタワー第一階層!!!!!〉だ」
(第一階層……嫌な予感がするなぁ……)
「ルールは簡単。この最上階にいるネギ王から伝説のゴールデンネギを誰でもいいから取り返してこい」
「いや、それ強奪じゃ……」
ネギ王からネギを奪うのではこちら側がヴィランのように思えてくる。
「いやいやいや、ゴールデンネギを手にしたやつはその力によってネギ王を名乗ってんのさ、この塔もその力で出来た物だ」
「そういう設定か……」
「質問があります!! 我々は現在制服姿でありますが、もしやこのまま塔の中に入るのでしょうか?」
綺麗な挙手をしながら質問するのは真面目な男である飯田天哉である。
「そうだ。といいたいが、今回は特別だ。……ハジケチェンジ!!」
スマイリーの仮面が光ったかと思いきや、全員の制服に変化し、事前に書いていたヒーロー着になっていた。
「これは!」
「すげぇ、一瞬かよ!!」
「お前らが事前に頼んでいた物だ。一部こちらで改良を入れさせてもらったが、概ねお前らの注文通りのはずだ」
「先生! 私はグローブとブーツのだけのはずですけど、なんでスーツやヘッドギアまで?」
質問してきた葉隠透は透明化の個性を生かすために、なんとグローブとブーツだけを要望書に書いていたが、スマイリーの独断で、彼女の皮膚に反応して、透明化するスーツやヘッドギアを開発。防弾、防刃に加え、耐熱、耐寒など考えられる防御手段を加えた。
「それに関しては後で説明するから少しだけ残ってくれ、あと心操と口田と緑谷、それからネギの山に埋もれている爆豪もだな」
「てめぇが埋めたんだろうが!!」
怒りでネギ山から出てきた爆豪もスーツ姿であった。
「あ、そうそうこの授業も含めた一部の授業ではとある採点を行っている。この一学期でもしもマイナス100点を取った場合。その時点で除籍だ。ヒーロー科には相応しくない」
ヒーロースーツを貰って喜んでいた生徒たちの顔を引き締まる。
「んじゃ、さっき言われた生徒以外はスタート!」
一斉に塔の中に突入する生徒たち。それを4人の生徒は見送る。
「さて、葉隠。さっきの問いだが、年頃の女があんな注文をするのはさすがに見過ごせないからだ」
「けど、この個性を生かすとなるとこれじゃあ……」
「慌てんな。右腕についているボタンを押してみろ」
「あ、これですね。えい」
すると今まで見えていたヘッドギアなどの装備品が全く見えなくなった。
「ええっ!!? すごい! どうなっているんですか!?」
「ボタン一つで簡単インビジブル! そのボタンのオンオフでお前の皮膚情報を読みとり、装備品の透明化または非透明化を選べるんだ」
「便利ですね!!」
何度もオンオフをしながら楽しんでいる葉隠にスマイリーは珍しく真面目な表情を向ける。
「葉隠、お前の個性は組織的なヴィランたちのアジトに潜入することなどに向いている。あまり人気が出にくいと思うが、それでも腐らずにやっていけるか?」
「もちろんです!!」
グッとグローブを握りしめる葉隠。その表情はきっと笑顔だろう。
「心操と口田もそうなんだが、お前たちのは戦闘向きではない。そこで緑谷、爆豪」
「はい!」
「んだよ」
「お前たちは新入生の中で俺の特訓などに付き合った人間だ。だから少しだけハンデを与える」
「もしかして3人と関係が?」
「そうだ緑谷。お前たちはこの3人のいずれかにゴールデンネギを獲得させるように動け。ただし、他の生徒を妨害するなよ?」
「B組にも戦闘向きじゃねぇのはいたんじゃねぇのか?」
「いたよ。けど今回はA組の2人だ。次は向こうの生徒たちに似たようなことをする」
「ちっ……」
不満そうな爆豪だったが、ここで逆らっても仕方がないため我慢する。
「もし、達成されたらこのゴールデンネギバッチをあげよう」
「要らんわ!!」
「え、要らないのかっちゃん!?」
「なんでそんな反応してんだデク!?」
「だってあれがあると買い物で野菜が安くなるんだよ!? 母さんが喜ぶし! ね?」
「あれにそんな効果があんのかよ……」
頭を押さえる爆豪。ついていけない3人は少々オロオロしていた。
「おっとそろそろ先頭集団が妨害兵士たちと出会いそうだな。お前たちも行け。条件を達成したら5点あげるぞ」
「……点数を得るとなにかあるんですか?」
「一学期中にプラス100点を取得すると、プレミアムな商品をプレゼント予定だ」
「絶対ロクなやつじゃねぇな」
爆豪の言葉はその場にいた他の4人の感想でもあった。
ネギを貰ったので投稿してみました。