凛として、生きて 後編   作:樋口晶子

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研修医として思い浮かぶのがメディカルドラゴンの彼しかいませんでした


研修医伊集院先生の記録

「先生、手術室の滅菌終わりました」

 

「ありがとうございます、看護師さん達もお昼にしてください」

 

「はーい、先生も一緒にいかがですか?」

 

「ああ、ごめんなさい…私は麻酔薬の選定が残ってるから皆さんで行ってきてください」

 

「そうですか?じゃあ私たちだけで行ってきちゃいますね!」

 

「ええ、お疲れ様!」

 

「…間宮さんのスイーツおいしいよね~」

 

「……雰囲気もいいお店よね」

 

「………早くいこ、昼休み終わっちゃう」

 

「…ふふふ、新しい常連さんができましたね間宮さん」

 

 

「さて!午前の診療終わり!…お母さんのお店で何か作ろうかな…あれ、足柄さんどうしました?」

 

「……ちょっとー!凛ちゃんなんで黙ってたのよ!!……」

 

「え?なんですか?」

 

「……あの人よ!あの人!……」

 

「ああ、伊集院先生ですか?彼は研修医で今度ここを手伝ってもらうことになってるんですよ」

 

「…かわいい男じゃない…ねぇ、彼ずっとここにいるの」

 

「あー実習できてますから…なんでも彼の親は開業医だそうで、終わったら戻るんじゃないですかね?」

 

「そ!そんなのダメよ!ここに繋いでおいて!」

 

「そ、そんなこと私に言われても…大体こんな僻地に来る医師は少ないですから、研修医でもとてもありがたいことなのにムリは言えませんよ」

 

「とにかく!!紹介してよ!」

 

「……足柄さん、先生のこと変な目で見てます?」

 

「運命の予感がしているわ!!」

 

「…え」

 

 

 

研修先に決まったのが軍の診療所でした

父の病院を継ぐために医者になったので外科志望ではないのに

こんな最前線の救急救命に飛ばされて僕はなんてついてないんだろう

そう思ってました

 

 

 

 

「じゃあ、おとといの緊急入院患者大和さん、瑞鶴さん、翔鶴さんについてのカンファレンス始めます」

 

「お願いします」

 

「まず翔鶴さんからね、一時CPAから挿管して緊急手術、エコーの結果心タンポナーデと気胸併発と診断、これに対し患者の体調を考慮して開胸はせず胸腔ドレナージと心嚢ドレナージ術開始、大腿動脈からカテーテルで左心室欠損部位にアプローチ、アンプラッツァーの応用で閉鎖しています患者の状態は…看護師さんお願いします」

 

「はい、患者は昨日の19:00には意識が戻りバイタル安定しています、脳機能障害はありませんでした。現在補液のため生食を500mlと抗生剤セフトリアキソン投与しています」

 

「ありがとうございます、では今後体力が戻り次第、開胸して欠損部位を縫合します。人工心肺の準備しておいてください…続いて伊集院先生、瑞鶴さんのカンファレンスをお願いします」

 

「はい、僕が診察を始めた段階で患者は意識がなく努力呼吸が認められる状態でした、ですので呼吸補助として酸素マスク4Lを装着してみました、その後意識は回復しエコーCT検査の結果、強い圧迫による急性呼吸不全と診断」

 

「ちょっとまって…」

 

「は…はい」

 

「看護師さん、瑞鶴さんの容態は?」

 

「現在3人とも意識は回復していてバイタルも安定しています」

 

「ならよかった…先生運がよかったわね、このエコーとCTでどうして呼吸不全と診断したの?まあ呼吸できてなかったんだから呼吸不全には変わりないけど…」

 

「え、えっと…特に欠損がみあたらなかったので…」

 

「……はぁ…横隔膜、大静脈孔付近の血管にあるわよその破裂部位」

 

「え!そ、そんな!」

 

「カンファレンス中止ー!瑞鶴さんの緊急手術よ、今は血栓で出血を抑えられてるけど何かの拍子にとれたら死んじゃうわよー!看護師さん、できるだけ衝撃を与えずに運んできて」

 

「はい!」

 

「せ、先生!一体何が!」

 

「とにかく早く手術の準備して前立お願いね…おそらく運ばれた時点では大静脈破裂している状態で出血により肺機能がなくなって自律呼吸できなくなったんだわ、でも偶然損傷部位に血栓ができて血流再開、横隔膜に浸潤がなくなると呼吸ができるようになったってこと、とにかく急いで大静脈を縫合するかグラフトに置き換えるかしないと」

 

「ぼ、僕は…なんて…」

 

「いま後悔しても仕方ないでしょ、気持ち入れ替えて。大丈夫必ず救うわ」

 

「先生…」

 

 

 

「ふぅ、よかったわね無事手術成功して」

 

「…水神先生、僕は」

 

「辞表なんて受け付けないからね!あなたはまだまだ研修医、こうゆう失敗を乗り越えて医者になっていくのよ」

 

「でも…僕はもともと内科志望でこんなERに来る予定ではなかったんです」

 

「んーそれは違うわね」

 

「え…」

 

「医者とは人の体の不調を治す仕事よ、患者に内科も外科もERも関係ないわ…人体は1個の有機体よ不調の原因がどこにあるのかは経験でしか見分けられない、伊集院先生が今後医師として人を救うならここで得る経験は先生の役に立つんじゃないかしら」

 

「でも…こうして診断ミスをして、患者を殺すところでした」

 

「なら、瑞鶴さんの意識が回復したら一緒に謝罪に行くわよ」

 

「え、先生もですか?」

 

「あなたの指導医は私、当然責任は私にある…だから先生はここでしっかり経験を積みなさい」

 

「ありがとうございます」

 

 

 

 

「申し訳ありませんでした」

 

「ちょ!凛ちゃん先生いいって!頭上げてよ!」

 

「いいえ、危うく瑞鶴さんを殺すところでした本当に申し訳ありませんでした」

 

「いいって!こうして生きてるんだから!」

 

「僕が悪いんです…診断を誤りました、本当にすみませんでした」

 

「私たちこそ凛ちゃん先生たちに助けられてるよ!だから大丈夫!これから失敗しないように頑張ってよ!」

 

「瑞鶴さん…」

 

「瑞鶴さん…本当にすみません」

 

「もういいって!」

 

 

 

「伊集院先生」

 

「…足柄さんですよね」

 

「名前覚えてくれたのね!隣座ってもいいかしら」

 

「…あ、どうぞ」

 

「どうしたんですか?浮かない顔して」

 

「…瑞鶴さんの診断を誤って、危うく死なせるところでした僕は水神先生のようにみなさんを救うことができない…すみませんこんな話を」

 

「いえ、伊集院先生は知ってる?ここには前まで病院すらなかったのに先生たちのおかげで最近死んだ子はゼロよすごいことじゃない」

 

「全部水神先生の治療です…僕はなにも」

 

「いくら凛ちゃんがすごい医師でも一人じゃ何もできないわよ?先生がいるから救えた命もあるわ」

 

「怖いんです…また僕の診断で今度は誰かが命を落としたらと思うと」

 

「ならどうして先生は医師になろうと思ったのお父様の病院を継ぐため?」

 

「…それもあります、でもここに来て僕でも救える命があるなら救いたい」

 

「ならもう怖がることなんてないじゃない、あとは先生のできることを増やしてどんな治療もできるようにミスしないように頑張ることじゃないかしら」

 

「足柄さん」

 

「伊集院先生には先生にしかできない最高の治療があるはずよ!例えば…私の」

 

「ありがとうございます!足柄さん」

 

「ああ!ちょっと!…もう、また口説けなかった」

 

 

「水神先生!」

 

「あら、どうしたんですか伊集院先生」

 

「先生がこれまで経験した症例と治療法、着眼点を教えてください!」

 

「ふふ、ええ!いいわよ」

 

 

 

 

「…というわけで私はしばらくここを留守にします、看護師の皆さんと伊集院先生はここに残ることもできるし、離職も許可します」

 

「ふふ、私達は…ねえ」

 

「水神先生!私達はここでみなさんのお帰りをお待ちしますよ!」

 

「間宮さんのお菓子また食べたいものね!」

 

「みなさん…」

 

「それにまだ全快じゃない患者さん達もいますから放ってはおけません」

 

「…ありがとうございます留守中この院のこと完全に任せてしまう事になります、申し訳ありません」

 

「水神先生、僕も残ります」

 

「伊集院先生…あなたは研修も済んだのだからここに留まらなくても」

 

「いえ!僕の患者はここにいます…先生のお帰りをお待ちしてます」

 

「伊集院先生、あなたには私の教えられること全て伝えてきたわ、自信を持って!あなたを医師と見込んで院のこと…よろしくお願いします」

 

「はい!」

 

 

 

「伊集院先生!足柄さんが敵と交戦中に爆弾を受けて意識不明CPA状態です!」

 

「すぐに手術室に運んでください挿管とAED、静脈ライン確保、アドレナリン準備してください!」

 

「はい!」

 

「必ず救います!足柄さん」

 

 

 

 

「足柄さん、点滴変えに来ましたよ」

 

「もう!そんな他人みたいな呼び方やめてって言ってるじゃない!」

 

「で、でもここは病室ですし…」

 

「登!隣、きて」

 

「…う、うん」

 

「…凛ちゃん達、いつ帰ってくるかしらね」

 

「…いつだろうね、でもあの人なら全員の怪我を治して皆んなで帰ってくるよ」

 

「ふふ、そうね…ねえ!皆んな帰ってきたら私の姉妹に登のこと紹介していい?」

 

「ああ、足柄にはお姉さんと妹さんがいるんだよね」

 

「そう!あいつらに目にもの見せてやるんだから!」

 

「その前に足柄は怪我を治さないとね!」

 

 

 

 

僕はここで、これからも医師として働き続けます

 

 

 

 

 

 

 

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