凛として、生きて 後編   作:樋口晶子

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最終話 また、ここから 前半

「あ、凛ちょっといいかしら」

 

「陸奥さん、どうしたんですか?」

 

「鎮守府の提督から封密命令が届いたの長門と私、赤城、金剛そしてあなたの前で開封するようにと、だから一緒に来てくれない?」

 

「わかりました、長門さんと士官室に向かいますね」

 

「うん!お願い」

 

 

「陸奥、赤城、金剛、凛…私の不在で迷惑をかけたな特に陸奥、旗艦を任せてすまない」

 

「いいのよ、それよりもう復帰できるの?」

 

「あ、ああ!このとおり」

 

「まだあと一週間は安静です!」

 

「でも本人も大丈夫って言ってるし…」

 

「ああ!凛のおかげで!」

 

「傷口からの浸潤がまだあります、このまま戦場に戻ったとき命の保証はできません」

 

「ドクターの言うことは聞いておいた方がいいネー」

 

「そうですね、凛ちゃんの意見を考慮して編成を今まで組んで来ましたが、怪我人こそ出しても沈んだ方はいませんからね」

 

「…赤城、しかしだな」

 

「このタイミングでくる封密命令よ、おそらく…はい長門、あなたが開けて」

 

「ああ、ありがとう陸奥」

 

[大海令第3号 敵本拠を撃滅せよ]

 

「そうなるわよね、ここまで敵勢力圏を削ったら」

 

「機動部隊はいつでも行けます」

 

「第二艦隊もノープロブレムネー!」

 

「第一艦隊、準備できてるわ…あとは長門と那智よね」

 

「これより作戦準備をする」

 

「長門さん、わかっていますよね」

 

「凛、感謝する」

 

「では、私は下がります」

 

「凛ちゃん、後で加賀さんにお会いしに行ってもいいですか?」

 

「お待ちしてます、赤城先生」

 

 

「那智さん!何しているんですか!」

 

「凛、世話になったな」

 

「まだ動いていい体じゃないんですよ!」

 

「陸奥が長門と凛を呼びに来た、大方予想はつく」

 

「だからって!」

 

「凛、私だけここで寝ているわけにはいかないんだ…本当にありがとう」

 

「…那智さん」

 

「戻ったらまた入院させてくれ」

 

「…ベッドが満員になったら、床で寝起きしてもらいます」

 

「はは!それはさぞ腰にくるだろうな!今のうちに体を動かしてくる」

 

「…みんな、私の言うことを聞きやしない」

 

「凛ちゃん!」

 

「赤城先生…」

 

 

「…そうですか、那智さんも」

 

「…はい」

 

「次で決着がつきそうです、やっと帰れますね!向こうに着いたら何を食べましょう、まずはお寿司に天丼に…楽しみですね!」

 

「ふふ、先生と話していると何だか悩んでいることがバカみたい」

 

「ふふ、凛ちゃんは加賀さんと待っていてください…ね、加賀さん」

 

「…」

 

「加賀お姉さんも目が覚めていたら、きっと私の言う事なんて聞かないで飛び出して行くんでしょうね」

 

「ふふ、ですね…でもそれは凛ちゃんの言う事を聞かないからじゃないです、きっと守りたいからです」

 

「私も…守りたいんです長門さんも那智さんもみんなを」

 

「ええ、わかっていますよだから向かうんです。終わらせるために」

 

「…赤城先生」

 

「加賀さん、私達は行ってきます安心して待っていてください、そしてまた一緒にご飯…食べましょう」

 

「…」

 

「じゃあ私は準備があるので失礼しますね」

 

「…おやすみなさい」

 

 

 

 

「間宮さん、これを」

 

「トリアージね…黒が無いみたいだけど」

 

「…私、トリアージ嫌いなんです…最初から諦めてるみたいで…そんな気持ちが死者を出すかもしれませんが、後悔したくないので。取り扱いは以前お伝えした通りお願いします」

 

「うん!わかった負傷者はできるだけ早く運ぶから」

 

「伊良湖さんもよろしくお願いします」

 

「はい!凛さんよろしくお願いします」

 

「暁、響、電…気をつけてね」

 

「うん!これが終わったらやっと帰れるわね!」

 

「電もがんばってくるのです!」

 

「凛は負傷者の手当てで忙しくなるだろうけど頑張って、私達も頑張るよ」

 

「ええ、待ってるから」

 

「じゃあ二人とも!」

 

「うん!」

 

「え!そのマフラー」

 

「そう!凛ちゃんが編んでくれたマフラーなのです!」

 

「御守りみたいなものだね」

 

「凛は安心して待ってなさい!」

 

「うん、待ってる!」

 

「凛、加賀さんどお?」

 

「瑞鶴さん…きっと、頑張れって言ってます」

 

「…そっか、ならやるしかないよね!加賀さんに伝えておいて、いつまでも寝てたら私達が一航戦、もらっちゃいますよ?って!」

 

「凛ちゃん、私からも加賀さんに早く起きてくださいって」

 

「翔鶴さん…はい、わかりました」

 

「いつか、凛ちゃんが加賀さんをめちゃくちゃ怒らせたときあったでしょ」

 

「ず!瑞鶴さんそんな昔の話!」

 

「あのあと私達大変だったんだからねー!」

 

「ふふっ、ええ加賀さんからいつにも増してキツイ特訓を受けたわね!」

 

「…翔鶴さんまで」

 

「まあ!今になったらそのおかげでここにいられてるのがわかる」

 

「いつか目覚める加賀先輩の為に私達は行ってくるわ」

 

「お二人ともご無事で」

 

「ヘイ!凛なんて顔してるデース!」

 

「金剛さん、榛名さん、霧島さん」

 

「凛ちゃん、大変お世話になりました」

 

「ええ、本当に感謝しているわ」

 

「私こそ皆さんに感謝してます、小さい時からよくしてもらって」

 

「それじゃ別れの挨拶みたいネー!もっと明るい送り出しにしてくだサーイ!」

 

「ふふ、そうですね美味しい紅茶淹れてお待ちしてます」

 

「榛名たのしみにしてます!」

 

「じゃあ行って来るわね」

 

「どうか、ご無事で」

 

「凛、世話になった最後まで私の我儘に付き合わせたな」

 

「長門さん…」

 

「もう!そんな挨拶はナシ!これからも凛ちゃんに診てもらうんでしょ」

 

「…そうだな陸奥、多くは語らん連合艦隊旗艦 長門行ってくる」

 

「凛ちゃん、しばらく留守お願いね陸奥参ります」

 

「ご武運を」

 

「凛ちゃん」

 

「赤城先生…」

 

「実は、あなたに話さなければいけないことがあります」

 

「先生」

 

「私には姉がいました天城というもう随分前になくなりましたが」

 

「そう…だったんですか」

 

「はい、でもその時病気で死にかけていた加賀さんの心臓と天城姉様のそれが適合して今、加賀さんは生きています」

 

「…そんな」

 

「加賀さんにも幼い妹さんがいらっしゃったんです…でも…だから加賀さんにとって妹とは特別な意味を持っています、凛ちゃんが加賀さんの妹であること、私は嬉しく思ってます。凛ちゃんにはその意味を知ってほしくてこんな話をしてしまいました、ごめんなさい」

 

「先生…」

 

「加賀さんは私にとっても特別な人です万一の時は…私の臓器を使って加賀さんを救ってください」

 

「そんな!…先生!」

 

「私が本当に願うのは人間の平和でも鎮守府のみんなの安全でもなくあなた達姉妹の幸せです、鳳翔さんの元で育ち、天城姉様の絆を宿した私達は家族。血を超えた家族だと勝手に思っています…ごめんなさいこんな話」

 

「…っ!ずるいです…こんな時にそんな大切な話を…」

 

「ふふ、凛ちゃんは相変わらず泣き虫さんですね…そんなに泣かないでください」

 

「…私は、私は…また一人、大切な家族を…見送らなくてはならないんですか」

 

「…ごめんなさい…でも、なんだか嬉しいです凛ちゃんにそこまで思ってもらえて」

 

「赤城…お姉さん…」

 

「ありがとう、凛………では一航戦、赤城行って参ります」

 

「必ず!…絶対に帰って来てください…加賀姉さんは私が救いますから」

 

「ふふ、慢心してはダメですよ」

 

 

 

「…マップOK、人工心肺、かき集めて2台か…鑷子、メッツェン、ハーモニック、スタビライザー…どれだけ用意してもまだ足りない気がする…」

 

「もう開戦したかな…加賀姉さん、みんな行ってしまいました。赤城さんから聞きましたよ…姉さん、私はまたみんなを送り出すだけ、何にも変われてない昔のまま、お母さんを見送った昔のままでした」

 

「…」

 

「姉さん…泣いてるの?涙が…」

 

「凛ちゃん!負傷者よ!」

 

「間宮さん!でもまだ開戦したばかりじゃない!」

 

「予定より早く会敵したの!早くみてあげて!」

 

「はい!すぐに向かいますロビーのソファー使ってください!」

 

「はい!」

 

 

「白露ちゃん、この指何本かな?」

 

「…4本」

 

「赤、伊良湖さん白露ちゃんをレントゲン室に運んでください」

 

「はい!」

 

「龍田さん、龍田さん!」

 

「…はぁ…は…」

 

「呼吸あり、乱れてる努力呼吸…赤、間宮さん龍田さん手術室に」

 

「はい!」

 

「…高雄さん!なんで座っているんですか!横になっていてくださいって」

 

「…私は大丈夫よ、寝ていたら他の子が座れないでしょ?凛ちゃんそれより早くみんなを診てあげて」

 

「あなた…わかりました診察を始めます」

 

「私は大丈夫!それより早く!ほかのみんなを!」

 

「…腕、大腿骨の骨折と腹部弾創…肋骨もやってるかもしれないわね」

 

「私は大丈夫!お腹の傷は確かに酷いけど、痛くないのよ」

 

「…本当に、痛くないんですか?」

 

「ええ」

 

「…私の目だけを見てください」

 

「ど、どうしたのよ凛ちゃん」

 

「目だけを見ててくださいね…今、膝に何か感じましたか?」

 

「え?膝?何も感じないけど…凛ちゃん!!なんてこと!私の膝メスが刺さってるじゃない!」

 

「高雄さんあなたは外傷より脳のダメージが深刻です、小脳か前頭葉かはこれから検査して確かめますが…一刻を争います」

 

「…そんな…脅かさないでよ、凛ちゃん」

 

「検査でわかり次第開頭して原因を治します」

 

「凛ちゃん…」

 

「安心して、優先して治療するから…任せてくれますか?」

 

「…うん、お願いします」

 

「ストレッチャー準備!」

 

 

 

「凛ちゃん!次どうしたらいい?」

 

「間宮さん、他の方は大丈夫です黄色のトリアージの方に手当てをお願いします赤の3名は私が、第一陣はこれで対処します」

 

「はい!」

 

 

 

「凛!凛はいるか!」

 

「那智ちゃん!凛ちゃんはまだ手術室よ」

 

「負傷者の2陣だ!早く診て欲しい!」

 

「…でもまだ手術が必要な負傷者が3人いるのよ…」

 

「陸奥が…息をしてないんだ、間宮さん頼む!凛に!」

 

「直ぐに運んでください!」

 

「凛!」

 

「凛ちゃん…」

 

「高雄さんと白露ちゃんは手術終わりました、急いで!」

 

「は、はい!」

 

「凛ちゃん!瑞鳳さんが!」

 

「直ぐに診ます!ソファーに寝かせてください」

 

「凛!こっちも伊勢が!」

 

「手空いてる方手伝ってください!1.2.3で床に寝かせますよ!1.2.3!…特徴的な反響音、気胸この場でドレナージするわ!みんな目を閉じてて!……呼吸再開、これで様子見て!」

 

「凛ちゃん…響が、響が!」

 

「電!大丈夫、必ず救うわ…頻呼吸、発疹、蒼白…赤!すぐにレントゲン室」

 

「凛ちゃん!お願い翔鶴姉が翔鶴姉の出血が止まらないの!!」

 

「直ぐに止血!輸血用意!伊良湖さんルート用意お願い!」

 

「はい!」

 

「那智さん、みんな大丈夫かな…」

 

「瑞鶴…ああ、見ろ凛が艦隊みんなの返り血で真っ赤だ」

 

「うん…酷い光景」

 

「みんなの治療をしているのは水神凛、私達の主治医だそれがあんなになるまで必死に頑張ってる。それより信頼できるものがあるか?」

 

「んん!凛ちゃんがやってくれてる翔鶴姉もきっと大丈夫…酷い光景だけど凛ちゃんすごく綺麗」

 

「ああ、まるで真っ赤なドレスを着てるみたいだ」

 

「アドミラルルージュ…血まみれ提督ってとこ?」

 

「ふっ、いいんじゃないか?」

 

「すぐに響を手術室に!」

 

「瑞鶴、まだやれるか?」

 

「ええ!那智さんも?」

 

「ああ!行くぞ!」

 

 

 

 

 

「凛ちゃん大変よ!」

 

「…もうすぐで最後のダメージコントロールが終わります、間宮さんもう少しだけ!」

 

「加賀さんが!加賀さんが!目を覚ましたの!!」

 

「………姉さん…良かった…良かった…」

 

「ええ!本当に!」

 

「大変です!凛さん!」

 

「あら、伊良湖ちゃんどうしたの?」

 

「今、負傷者の第3陣が到着して…」

 

「凛ちゃん!」

 

「ええ、間宮さんお願いします!」

 

「赤城さんが!赤城さんが!」

 

「…」

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