バカがバカやる物語   作:柳龍

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第1話 ある〜日、作戦室の中、虎さんに、出会〜た。

ボーダー

 

それは、近界民(ネイバー)という異世界からの侵略者から人々を守る組織である。

 

戦闘員は皆若く、何人かの例外を除けば上は20代前半、下は10代前半といった具合である。

 

そんな育ち盛りで活発な年頃と、トリガーというボーダーが独占している未知の道具、そしてソレを安全かつ最大限に使用できる場所が揃ったのならば、彼等が熱を上げて競い合うのは自明の理であろう。

 

戦力が向上する事は当然ボーダーにとっても好ましいことだろうし、ランキング戦といったものを考案したことからも分かるように、ボーダー上層部は彼等の切磋琢磨する姿勢を止めはしないしむしろ推奨している。

 

けれども、何事にも限度があるし、血の気が多いのも当然考えものである。

 

 

 

 

ボーダー基地内 宗馬隊作戦室

 

 

 

「死に晒せや、オンドリャアーーー!!!」

 

「テメェがくたばれよッ、クソッタレがーーー!!!」

 

「両方纏めて死ね!ブチ殺してやるッ!!!」

 

上から順に、宗馬真一、汀目俊希、荒船哲次である。

 

この作戦室の主である宗馬真一は、何故かスコーピオンを大剣の形にして振り回している。

 

そんな彼の部下であるはずの汀目俊希は、彼を守るどころかスコーピオンをオーソドックスな短剣型にして殺しに掛かっている。

 

そして、3人目のこの部隊のメンバーではない荒船哲次は、孤月を逆手に取って元マスタークラスの攻撃手に恥じない腕前を見せている。

 

 

 

 

ランク戦でも、仮想訓練室での訓練でもなく、ボーダー基地内の普通の作戦室で。

 

「らぁッ!!」

 

荒船の孤月が、宗馬の腕を斬り飛ばした。

ついでに壁も大きく切り裂いた。

 

「ちぃ!」

 

宗馬の顔に焦りが浮かぶ。

 

元々、3人の中で専門の攻撃手ではない上、今回のような時しかブレード系のトリガーを使わないのだ。悪ふざけの延長線のような戦いであったとしても、どうしても不利になる。

 

しかも、容赦なく片腕を無くした隙を見逃さず、汀目と荒船が2人掛かりで攻めて来た。

 

(くそっ、どうしてこうなった!?)

 

恐らく、数瞬後に落とされる己を予感し、宗馬はこの様な状況に陥ったキッカケを思い返す。

 

 

 

 

 

10数分前のボーダー基地内 宗馬隊作戦室

 

始まりはオレの純粋な疑問からだった。

 

「お前さー、何で帽子被ってんの?」

 

「・・・・・・は?いや、ビックリした。急にどうしたんだよ、お前」

 

特に用事も無かったのか、来てからずっと駄弁っていた荒船が豆鉄砲に撃たれたかのように目を丸くして聞き返してくる。

 

聞かれた質問に答える、という人として最低限のマナーすらも出来ない男だ。

 

「何だよその目は。絶対にロクでもないこと思ってるだろ」

 

「だな。それも難癖付けてる感じのだぜ、多分」

 

何故だろう。オレの部下であるはずの汀目すらも呆れた顔で見てくる。

だが、そんなことは今はどうでもいい。今はコイツだ。

 

「いやさー、ちょくちょく聞くんだけどさー、荒船クンさー、女子に人気あるみたいじゃない?」

 

「いや、知らねーよ。何か言われたのか?」

 

「別にー、何も言われてないですけどー、ただ廊下歩いてたりラウンジで休んでる時に聞こえてくる話しでチョイチョイ聞くだけですけどー」

 

「あー、それ地味に効くヤツだよなー。裏表ない本音って感じでさー「シャラップッッ!!!」っおう、結構キてんな」

 

喧しいのは放っとくとして、腹立たしいのは事実だ。

オレとコイツとで何が違う?言っちゃあ何だが、オレだって顔は悪くない。凄いイケメンって訳じゃないが、そこそこ良い。事実そう言われたことがある。

 

、、、、、、いや、そこそこって。嬉しいけど素直に喜べねーよ。

 

んん!話しが逸れた。つまりだ、オレとコイツとの明確な違い。それは帽子だ。帽子の有る無しがモテるポイントだったんだ。

 

「違ぇーだろ。お前がモテないのはそういう捻くれた所と、危ない思考回路な所とセクハラ野郎な所だろ」

 

「だな。っつーか、だったらお前も帽子被ればいいだろ?」

 

「バッカ、お前バカ。オレが今から被り出しても荒船の二番煎じだろ?男で帽子は荒船、女子で帽子は茜ちゃんってボーダー内のイメージはもう固まっちゃってるんだよ。だからオレは考えた。荒船が帽子を被ってるのはハゲ始めているからだ、ってな」

 

「スマン、全く意味が分からん。分かるか?」

 

「バカの思考回路なんざ分かる訳ないだろ」

 

「トッシー、お前後で殴るから。勿論お前達の言いたいことは分かる。荒船がハ ゲてないのは知ってるし、ボーダー内でも知ってるヤツが何人もいることも。被ってない時もあるもんな。キャラ作りが甘いんだよボケが」

 

「結構荒んでるなー。ってか、帽子ならウチの半崎も被ってるけどな」

 

「溜め込んでたのかね?」

 

荒船とトッシーが好き勝手に言う。人の話しの最中に喋るなよ。何でコイツらがモテるんだよ、クソッ。

あと、半崎は別にいいんだよ。アイツは愛され属性の後輩キャラだから。荒船に似てきたら潰すけど。ついでに太一もな。

 

ちなみに、トッシーというのは汀目のアダ名だ。汀目俊希(みぎわめ としき)、俊希(としき)なのでトッシー。銀魂の土方と同じアダ名だ。

 

「そこー、静粛に。これは深ぁーい考えによってようやく導き出された答えなんだよ」

 

「手短に言うと?」

 

「荒船の印象下げとけば、オレの帽子デビューが明るいものになる」

 

「上手くねーし。浅ぇー」

 

「いつものこったな」

 

コイツら、いくら何でも興味無さ過ぎだろ。

あっ、スマホ出しやがった。まだ終わってねーぞコンニャロー共。

 

「へーへー、余裕ですねー。色男様はよー」

 

「おいおい、いい加減よせよ。流石に哀れになってきたぜ、お前」

 

あ?誰様が哀れだと?コラ、このトッシーめ。

 

「黙ってろドチビ」

 

「あ?」

 

「おい、落ち着けお前ら。」

 

大人の対応がムカつく。

 

「んだこのノッポが」

 

しかし、オレより先にトッシーが荒船に噛み付いた。大人の対応と大人な身長を妬んだのだろう。ちっさい奴め。

 

風間さんの次くらいに気にしてるもんな。女っぽい顔にはそれ程イラつかないのに。

 

だが、そんなことはどうでもいい。

 

「オラー聞いたんだぜ?色男様よぉ」

 

「言ってやれ、言ってやれ!」

 

はて?コイツは知らないはずだが?

まあ、いい。

 

「荒船ぇ、お前さん犬が苦手なんだったなぁ〜?」

 

「・・・それがどうした」

 

チッ、スカしやがって。気にいらねぇな。

 

「ワンワン!おら、ワンワン!怖いでちゅか〜???」

 

「ワンワンワンワンワンワン!」

 

ゲス顔でトッシーも煽る。なんてクソ野郎なんだ。

 

「お前ら、、、、、、」

 

おや?プルプル震えてる。チワワかな?

 

「「ワンワン!ワンワン!ワンワ「うっせぇぞ!永久童貞と成長打ち止め野郎!!!」ッンだとゴルァ!!プルプルチワワがァぁアあッッ!!!」」

 

 

 

 

 

 

現在時刻 ボーダー基地内 宗馬隊作戦室

 

避けようのない状況だった。切り替えよう。

まず、オレは落ちるだろう。これはもう変えられない。エリートのサイドエフェクトが無くても分かる。

 

次だ、最適解を弾き出せ。

 

出た!!!

 

「おぉオオオッッッーーーー!」

 

オレは自分の首を荒船に向かって斬り飛ばした。

 

トラウマになるといい。

 

「うぉう!?」

 

荒船の動きが止まる。

 

オレのトリオン体が解ける。

 

トッシーが隙を見逃さず荒船を落とす。

 

「オレの、勝ちだ!!」

 

生身に戻ったオレが勝ち誇った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

荒船に嫌がらせをし、落とせたからだ。

 

仮に、あの状況でトッシーに仕掛けて隙が生まれても荒船は状況について行けずトッシーを落とせなかっただろう。そういう所が荒船はまだ甘いし、素の実力でもトッシーに劣るしな。

 

最悪の結果とは、戦闘が中断してしまいオレ1人が落ちるという場合だった。危ない所だった。何とか道連れを作れたぜ。

 

「いやいやいや、甘いんじゃなくて真っ当なんだよ。お前らと違って。戦ってる相手の生首が突然飛んできたらビビるだろ。しかも、白目剥いて舌出してたし。ホラーだろ」

 

負け犬が言い訳をする。恥ずかしいヤツめ。

というか、作戦室で孤月を振り回す奴の何処が真っ当なんだ。ちゃんと周りに被害が出ないようスコーピオンを使いなさい、スコーピオンを。

 

オレ達はひっくり返ってたソファーを元に戻しながら駄弁る。

 

つーか、トッシーはまだトリオン体なんだから1人で充分じゃね?

 

「おいおい、勝ち残ったのはオレだぜ?それなのに手伝ってやってんだから文句言うなよ。」

 

「ソファー蹴り飛ばしたのお前だろ。それに、オレが勝ったのは試合に負けて勝負に勝ったの勝ちだ」

 

「いや〜?そいつはどうだろうな」

 

「あん?何だよ?」

 

トッシーが苦笑しながら意味の分からないことをのたまう。

 

「本当に分からないのか?」

 

ピョッ!?

 

聞こえてきた声はトッシーよりも低く、抑えきれない怒りを無理矢理押し潰しているかの如き声だった。

 

壊れかけのブリキおもちゃのような音を出して、オレは声のする方を向く。

 

「お前ら、随分と好き勝手にやったようだな」

 

そこに居たのは飢えた野生の虎、もとい怒り心中の忍田さんであった。

 

まだ野生の虎の方がマシだな。

 

「「「すいませんでした」」」

 

オレ達は3人仲良く土下座をして許しを乞うた。

 

 

 

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