「何かさー、トリオン体だから出来る遊びしねー?」
ソファーに寝転びながら、今週のジャンプを読んでいたトッシーが唐突に語りかけてきた。
「んだよ、いきなり。つーか、まだジャンプ途中だろお前」
そう言って、オレはトッシーに目線を向ける事なくスマホをイジり続けながら、今の自分のメイントリガーが何だったかを思い出そうとする。
ジャンプを読んでいる最中に別の娯楽を求める者には死しか無い。
「いやー、もう3周目に入っちまったからよー。あ、今週のオススメはアクタージュな。やっぱ、景ちゃんの雰囲気好きだわー」
オレはトリガーの起動を取り止めた。
「なら良いか。あと、それ以上言うなよ?ネタバレしたらマジで殺るからな?」
オレはスマホを仕舞ってトッシーの方に顔を向ける。
ちなみに、今のメイントリガーはスコーピオンだった。最近のオレの推しはアクタージュなのだ。
「んで?急にどうしたんだよ?」
「いやさー、ハンターハンター見てて思ったんだけど、トリオン体だったらヤバイシーンも再現出来んじゃね?って思ってよー」
そう言いながら、トッシーはジャンプを閉じてオレの方を向いて座り直した。
「あー、第4王子?のシーンか?まー出来るっちゃあ出来るな」
ややこしかったよなー、アレ。いや、ソコが見所なんだけどさ。
「アレじゃなくてもさ、色々やってみたくねーか?」
コイツは、この前こっ酷く叱られたのを忘れたのか???
この間の、何の合図もなく3人同時に決めた華麗なるトリプル土下座だったが、残念なことにお怒りの虎を宥めることは叶わず、猛説教を受けた挙句三ヶ月間給料9割カットの罰を受けた。
ハァー、仕方ない。ここらでビシッと注意してやるか。まあ、偶にはな、部下を嗜めるのは上司の仕事だしな。
ぶっちゃけ上層部からのオレの評価がマジで怖いし。
よっし、んじゃあビシッと言ってやるぜ。
「メッチャやりたい。何やる?」
ちゃうんや、工藤。だってオモロそうなんやもん。
「取り敢えず何か思い付くか?」
諸悪の根源が尋ねてきたので、巻き込まれたオレは案を出そうとする。
「んー、カッコいい系もいいけど、やっぱりギャグがいいな〜。ボーボボとかどうよ?」
「おお!いいな!ボーボボ!生身じゃキツすぎるもんなアレ」
ジャンプ史上有数の流血漫画だ。ギャグ漫画なのに。
いや、ギャグ漫画だからこそ出来たとも言えるのか?
「そんで、どのシーンやってみるよ?」
「そうだなー」
何かないかと思い出そうとするが、あっという間に出てきた。
「ロシアンルーレット」
「アレか」
そう、アレだ。何だろう、自分でも驚くくらい急に出てきた。
「んじゃー、リボルバーがいるな。アステロイドベースに寺島さんに頼んでみるか」
「ああ、頼む。この前漫画貸した借りです、って言っといてくれ」
そう言って、オレは自分のトリガーを渡した。
「あいあい」
トッシーは駆け足で開発室に向かって行った。
「さて、と。他の準備はどうするかなー?」
ボーダー基地内 宗馬隊作戦室
「さてっ、小道具も出来たが次はどうする?」
寺島さんからアステロイドの調整をして来てもらったトッシーが、笑顔を浮かべながら聞いてくる。
「あー、それなんだけどよ。5発も頭に食らったら、途中でベイルアウトしちまうよな」
最初から気付けよという話しだが、2発目までなら早撃ちでいけるかもしれないが、5発は流石に無理だ。
仮想戦闘室でなら出来るかもしれないが、こんな理由で使用許可は降りないだろうし、スマホで動画に撮ることも出来ない。
「そこは大丈夫だぜ。威力とサイズを低めに設定して貰ったから、撃ち終わった後に一言くらい言えるようになってるはずだ」
「マジかッ、グッジョブ!んじゃあ、どっちがどの役やる?」
「オレはどっちでもいいぜ。でもまー、キャラ的にオレが金天ボで、お前が首領パッチじゃね?」
「はぁ?って言いたいけどオレもそう思うわ。「宗馬はアレだな。ヤラレ役が染み付いて来てるな」って、この前東さんに言われちまったしな」
「かはは、東さんにそこまで言わすなんてよっぽどだな!」
「うっせー、誰のせいだ。いいからもうやろうぜ。あ、あと動画撮ろうぜ。やり直し出来ないしな」
「おう、いいぜ。じゃあオレのスマホで撮るな」
「ああ。じゃあオレのスマホで三つ目の奴のセリフ入れて流すから」
「ああ、そうか。それも必要だったな」
「だろ?あと、場面の切り替えけどよーーー」
うし、じゃあ準備も出来たことだしヤルか!!
ボーダー基地内 宗馬隊作戦室
カチカチカチカチカチ
「1、2、3、4、5・・・・・・オレの勝ちだな」
コ、、、コイツ
イカレてやがる
ドンドンドンドンドン
「1、2、3、4、5・・・・・・チョロイね」
コイツもイカれてやがる
ドンッ!(ベイルアウト音)
「「ぎゃははは!!!」」
マジで出来ちまったよ!
ヤベー、何度も見返してるのに笑いが止まらねー。
「こ、これ。皆んなに送ろうぜ。テロるはマジで」
息も絶え絶えになりながらトッシーが提案してくる。
「だな。ぶっちゃけ城戸司令とかに直ぐバレるけど遅かれ速かれだしな。ププッ、だ、誰から送る?」
「ま、待て待て、見た時の反応も見たいから、片方が話してる間にもう片方が送ろうぜ」
「ナイス!トッシー!冴えてる!!んじゃ早く行こーぜ!先ずは公平からだな、アイツなら言いふらさないだろうし、ボーボボも知ってるかもだしな」
「おっし!かはは、楽しくなって来たぜ!」
そうして、オレ達はあちこちに出向いた挙句、ボーダー内の知り合いに動画を送りまくった結果、速攻で城戸司令達にバレてしまい、またこっ酷く叱られた上に給料の9割カットの刑を半年に延長させられた。