東方闇時空   作:よひつじ

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新作投稿です
11月18日 文章を編集しました


Chapter1 あたらしいたんけん
プロローグ


 不気味な雰囲気の漂う無縁塚に、青い獣が目を覚ました。その紅い双眸が、ゆっくりと開く。

 

「ここは……何処だ? 僕達は卒業試験に合格して……それで、如何したんだろう? いや! それよりもイーブイは……!」

 

 まだ微睡みの中にいる青い獣だが、大事なパートナーの事となると話は別だった。即座に微睡みから抜け出し、自身のパートナーを探し始める。寝てる暇なんて無い。

 

「あれ、は……!」

 

 辺りを見回すと、青い獣が思っていたよりもすぐ近くに見覚えのある尻尾がゆさゆさと揺れていた。不気味な訳の分からぬ場所でふさふさ揺れる尻尾、場違い感が半端ないため当たり前ではあるが……あっという間に見つけることが出来た。

 

 それに気付くと青い獣は慌てて駆け寄り、そこにいる茶色い獣に呼びかける。

 倒れていた為当然、とても焦っている。

 

 焦るどころではない。これは恐怖だ。あのパートナーの味わった悲しみは、これ程のものだったか。リオルには、一度覚悟を決めたはずなのに、怖くて怖くて仕方がなかった。

 

 目を覚まさないんじゃ……といった不吉な想像が青い獣の不安を掻き立てる。鼓動が、速く速く、じわりと瞳から液体が潤んだ。

 

「イーブイ⁉︎ 目を覚まして! イーブイ!」

 

 頼む、目を覚ましてくれ。一心不乱に呼びかけた。

 これじゃあ立場があの時と逆──皮肉のようだ。

 

「う……うぅ……あ、あれ? ……リオル……?」

 

 イーブイはリオルに気付くと、がばり、と起き上がる。

 

「だ、大丈夫? イーブイ」

 

「まぁ……大丈夫だよー、それよりもリオル、なんで泣いて「イーブイ!」……リオル?」

 

 リオルはイーブイに抱き着いた。不安だった。

 何故だろう。このポケモンはこんなに弱虫なポケモンじゃあなかったのに。

 何故だろう。この問に答えれるのは、おおよそ彼とイーブイしかいないのではないか? 

 

『▪▪▪、お前は溜め込み過ぎる癖があるな。もっと頼ってくれ、パートナーであるオレに』

 

 二匹は互いに抱き合っていた。あの──砂浜でのひと時のように。

 ________________________________________________________

 

「リオル、ここが何処か分かる? いろんな場所を探検してきたけどこんな所見た事が無いよ」

 

「それは僕もだよ。手掛かりもないし……」

 

 一時間ほど後、何とかしてリオルは落ち着いた。自分の勇気は消耗品で、あの時に使い切ってしまったのではないか。そう思った。

 と、いうより、一度負った心の傷はそう簡単に治るものでは無いのだろう。

 これでやっと、リオルの精神は安定した。それとは対照的に、イーブイは今も泣き虫のままだろうか。

 

 ──今はそれよりも、ここが何処かという疑問である。

 手掛かりが無い以上迂闊には動けない。今までの探検で、リオルとイーブイは嫌という程分かりきっている。だから、二匹は何かしらの情報を求めていた。

 

 そうしてリオルが思考の海に浸かっていると、イーブイは、あっ、と声を上げた。

 

 何か思いついたのかとリオルが聞く前に、イーブイは自分の主張を話し始める。

 

「ねぇ、リオル。ワタシ、いい考えが浮かんだのよ。手掛かりが無いなら作ればいいじゃないかな?」

 

 何の事だろうと思考するのも逡巡、『じくうのさけび』の事だとリオルは思い至る。確かに、周りには発動に使えそうなそこそこの大きさの石が大量にある。確かに、これなら……と、リオルは思案した。

 

 そしてリオルはイーブイに向かって頷き、意を決して大量にある石の内一つに触れてみた。

 

 ________________________________________________________

 

 ────ドクン──

 

(来た……)

 

 ──ドクン──

 

(じくうの……)

 

 ──ドクン──

 

(さけび……)

 

 

 

じくうのさけびが、発動する。

 

 

 

 

 

 

 __ワシももう一人死ぬだけか……

 

 __さらばじゃ……婆さん……向こうで会おう……

 

 

 

 

 

(これは……、ニンゲンのお爺さんの記憶か……?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 とは言っても今回は声のみだった。だからまだ断定は出来ない。

 だが、話していたのは人間が使っていた言語だった。人間の記憶である事は間違いない。しかし、問題はそこでは無かった。

 

(あれは……、死ぬ間際の記憶だった)

 

 そう、あれは死人の記憶だった。ここは間違いなく不味い所だ、とリオルは考察する。

 このままでは不味いと、リオルは『じくうのさけび』で起きた事とそれによる考察をイーブイに話す。

 

「えっ! そ……それは不味いよ! は、早くここから離れよう……」

 

 二匹が出会った時の頃を想起させる程の怯えを見せるイーブイ。

 ゴーストタイプのポケモンは見慣れてる筈だが……それは関係ないだろう。

 リオルもその提案に異論は無かった。直ぐにこの場を離れよう、と。

 

 それに、少し離れた場所に道があった。その向かいは……ガラクタだらけで進めないだろう。

 

「じゃ、じゃあ……急ごう!」

 

 二匹は動き始める。

 そして、再び始まったのだ。

 新たな舞台での、新たな物語。

 空の探検隊の冒険が……




オリ設定多めです。
あと、時系列は卒業試験合格直後です。

解説

無縁塚
無縁仏の集まる場所。結界の境界か何か(うろ覚え)の問題で、外の世界(現代日本)から色々流れ着く事がある

じくうのさけび
特定の物(ときには者)に触れる事により、対象の過去や未来を読み取る。発生はランダム。使えるのは主人公(リオル)のみ。

空の探検隊の冒険
ポケモン不思議のダンジョン空の探検隊のタイトルから
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