「あなた達は、だぁれ?」
そう言って、一人と二匹に話し掛ける童女。
癖の強い金髪をサイドテールにしたその髪型は色彩は欠片も似通っていないのだが__何処かレミリアを想起させる。そして、ルビーの様に輝く紅い瞳。そしてレミリアと同じくナイトキャップを冠っている。
そしてもう既に秋が終わりかけているにも関わらず__半袖とミニスカートという、見ている方が寒くなりそうな服装をして……いや、正確に言うと、ミニスカートと言うよりは一枚の布を二つのクリップで留めるラップ・アラウンド・スカートというものであるが。
しかし、最も目立つのが、彼女の背中から生える__翼。それは水晶の様に透き通った、宝石の様な__というか、あれは本当に翼なのだろうかと疑問に思う程、その翼は異常__どう見ても生物学的に有り得ない形状である。改めて説明すると、彼女の翼は、まず、飛ぶ為のものではないのかもしれない。いや、何を言っているのかと先程の文脈を見て不信がるかもしれないが、本当に、どう見てもそうとしか思えないのだ。
彼女の翼は骨格はあるのだが……揚力を得る為の皮膜も無ければ、羽毛だって纏っていない。だからといって飛行機などの推進力を生み出す為の特殊な形状でもない。本当に、ただ、骨格しかないのである。いや、それも違う__彼女の羽には、片翼七つずつ、合計十四個の透き通った水晶が付いているのだ。七色の__宝石が。
七色と聞いて、最初に連想するものと聞かれると、大抵の人は虹と答えるのだろうが、彼女の翼もそんなようなもので、赤から青に至るまで、まるで虹の様な配色をされている。
彼女の特異性。それをこの翼が表しているのかもしれない。
「私は東風谷早苗と申します。こっちはリオルとイーブイって言うのですよ」
一瞬見惚れていたのだが、すぐに再起動して自己紹介を始める早苗。
「私は……、フランドール・スカーレット……」
早苗は驚く。そして二匹も。この館の主__レミリア・スカーレットと性が同じであるために__見た目からして、姉か妹__なのだろう。リオルとイーブイはそう推測する。
「成る程……貴女がフランドールですか……」
『知っているの?』
「えぇと…………知っているのかって事ですかね……」
こくん、と頷き肯定の意を示す。
「彼女はですねぇ……」
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彼女__フランドール・スカーレットは、レミリアの妹である。
そして、彼女はその身体の中に秘めた『狂気』、そして、『ありとあらゆるものを破壊する程度の能力』を恐れ、畏れられ、地下に長い間幽閉される。
しかし、スペルカードルールが制定されてから起きた最初__原点の異変『紅霧異変』のとあるきっかけにより、紅魔館内と庭でのみ__活動する事が許された__そうだ。
早苗もあくまで聞いた話であって確実性には欠けるようだが。あくまでも、この吸血鬼の話は__あくまでも__眉唾物である。
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「いや、大体合ってるよ。そんなに『あくまでも』っていうのを強調しなくても……、洒落にしか聞こえない__いや、洒落としてはセンスが足りないと思うけど」
早苗は落ち込んだ。いや、そういう意図を持って説明に混ぜたわけでは無いのだが、『あくまでも』狙ってしたのではないのだが__センスを貶されのは変わらなかった。
まぁ、只、それだけである。よって大して気にされることもない。
「まぁ、それはいいとして……」
バッサリ。さすが悪魔の妹、末恐ろしい……。とリオルは思った。
「事情は把握してるし……アイツ……、おっと、お姉様から既に聞いているのだけど」
「ちょっと待ってください! 今、アイツって言ってませんでした?! 見た目年齢十に満たないあなたからそんな言葉は聞きたく無いんですけど!」
軽くショックを受けた様子でフランに切り込む。イメージ(妄想)と違ったからだろう。二匹は気持ちは分からなくは無かった。あちらの世界で例えると、ルリリがマリルの事を裏でアイツと言っている様な……、まぁ、そんな事は無いだろうけれども。あの兄妹は、言い方が悪いかもしれないが、兄はシスコン、妹がブラコンの仲良し兄妹として有名で__カクレオンの様な大人達に、大層気に入られていた__のだから。
「まぁ、気にすることはないよ。それよりもイーブイとリオルねぇ……」
『どうかしたの?』
そうフランは呟くと、イーブイを抱え上げた。
「ねぇ、この子……。借りていい?」
子供らしさを感じさせる無邪気な__いや、どこか嫣然とした雰囲気も漂わせ__早苗にそう質問した。