あばばばばばばばばあべしっ
何を言っているのかと、リオルは疑問に思う。
波導を扱う__リオルの生まれ持った能力であり、ある種のアイデンティティだ。早苗__彼女はポケモンに詳しく、波導の件に関しては常識問題と言っても過言ではない__それが何故、そんな疑問を抱くのか。
「いやだって、リオル君とイーブイちゃんはポケダンの世界線からやって来たのでしょう? それならストーリーの都合上、一切波導については語られない……、使ってる描写も無かったですし」
『はぁ……?』
リオルにはよく理解出来なかったが、つまり__自分がやってきた__ポケダンとやらの世界、そこでは波導を扱うという事が出来ない、という事だろうか。
「心当たりはありませんか? 貴方の記憶__あの世界で暮らしていた時、一度でも波導を使いましたか?」
そう言われて__リオルは違和感に気付く。今まで自分が通ってきた__道筋__軌跡__それが、何処かおかしい。
(そうだ!! 確かに僕は波導を幻想郷に来るまで使った事が無かった! 何故当たり前の様に……、それにもし使えていたら……、ヨノワールの悪意にもっと早く気付いて、もっと上手く立ち回れた筈だ!)
取り乱して慌てて、頭が正常に機能しない。何故今まで波導を当たり前の様に使用し、それが当然だと自分自身が考えていたのか。その疑問が脳内を埋め尽くす。
それは、イーブイも同じであった。『じくうのさけび』などの特殊能力はともかく、波導の様な種族固有の力__権利を、リオルは一度も使っていなかった。それに気付けなかった、その事実がおもしの様にイーブイの心にのしかかる。パートナーとして、その責務__責任として。
(僕は……)
(ワタシは……)
((どうすればいいんだ?))
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「落ち着きましたか?」
数分後、何とか混乱状態のリオルとイーブイを宥め、漸く落ち着いてきた所で一言声をかける。
『う、うん……』
『な、何とか……』
未だ困惑の感を残しつつも、冷静さを保とうとする二匹。こびりつく様に離れない疑問は消失する様子を見せないが。
「もしかしたら、波導が上手く扱えない原因もそこにあるのかも……、この世界に来てから、初めてあの力を使っているのなら……、あの練度不足も納得出来ますしね」
そう自分の考察を述べる美鈴。半ば現実逃避をする為に自身を思考の渦に沈めているのだが、それが功を奏したというか、彼女の考えは的を得ていた。
「それにしても、謎が増えましたね。一体どうなっているんだか……。正史からずれている? もしくはパラレルワールドの様な……、それか、リオルとしての設定が混じり合ったのか……」
畳み掛ける様に次々と__着々と意見を口に出す早苗。言い出しっぺだったからか、彼女らの中で一番落ち着きを保っており__思考が冴え__いや、周りと比べて頭の回転が速いだけで、普段とあまり変わってはいない。
「取り敢えず……、現状では解決不可能でしょう。原因__いや、過程すらも分からない今、どうしようもない……。それにどうせ紫さんが何か策を用意していると思って間違い無いと私は考えます。あの人、普段から思考を止めていないって聞いた事があって、私が思うに、第二第三の刃__策謀を準備しないと気が済まないタイプの人ですし……、いや、人ではないか。
まぁ、だから現時点では様子見が一番かなぁと思うんですけど、どうですか?」
そう長々と__淡々と言い切り、周りを眺めて異論がないか確認する。二匹と美鈴は気圧されながらも__それに反対意見は無く、それよりも画期的で素晴らしい意見が出るわけでも無かった。
しばらく間を開けて、頷く。
「了解しました。それじゃあまぁ、リオル君とイーブイちゃんはこれまで通り紅魔館でしばらく暮らす__紫さんから連絡があるまで。特に期限も言われてないし、それでいいでしょう。
……後、私はちょっと神社の方に用がありましてね。うちの神様に呼ばれてるんですよ。さっきから__念話で来いってね、多分料理とか家事関係がしんどいからだと思いますけど……、もう少しいたくて無視してたんですが……。そろそろやばそうなので、行ってきますね」
普段より早口になりながらさっさと用件を言って空へと飛翔していく。途中から話についていけなかったリオル達は特にアクションを起こさないまま段々遠ざかっていく早苗をしばらく見上げるのだった。
早苗さんが急すぎてると思いますが、例えるとメールが毎分届いている様なもので、それで少し焦っていたという事にして見逃して下さい。