東方闇時空   作:よひつじ

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ノリと根性で書き切りました。


破壊

 前日のショッキングな事件から翌日。日を跨いでリオル達は、フランに何か策がないか、もしくは画期的な方法を提案してくれるのかと思い、リオルの波導の件を相談しに行った。

 その答えが、

 

「いや、可能と言えば可能だよ? まぁ、それをお姉様が承諾するかどうかだけど、ね」

 

 戯ける様な仕草をして喋るフラン。その言葉には、先を見越したというか、既に未来が分かっているという念を感じさせる。

 事実、その通りであるのだろう。リオルはイーブイから能力行使した後の様子を教えてもらった事があり、美鈴もこの館に仕える中で何度か目にしている。

 それに、リオルも美鈴も善人であって、自分の為だけに他者を苦しめるという事は絶対にしようとは思わない。

 

「あ、でも。イーブイちゃんが付きっきりで看病してあげたら大丈夫かもよ? あの、ニンフィアっていう進化系なら治療も出来るし」

 

 とは言っても精神的なものだけどね、と付け足す。確かにニンフィアなら可能だろう。あの耳と首元のリボンから生えた触覚__あそこから精神安定を促す特殊な波長を発生させられる。そんな特殊能力を使えば、レミリアに無理な苦痛を与える心配も無い。リオルと美鈴が期待した通り、画期的な第三の選択肢を提示してくれた。

 

『それだ!』

「それです!」

 

 全く同じ様な反応をするリオルと美鈴。共に修行している内に波長が合ったのだろうか。

 

 ________________________________________________________

 

『と、いうわけなんだ。頼んでもいいかな? イーブイ』

 

『まぁワタシは別に良いけど……』

 

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「と、いう事なんです! どうかお願いしますお嬢様!」

 

「お、おう。いや、そんなに畏るというか、謙る必要は無いぞ? 普段なら断っていたけれども、治療を保障されているのだし、問題は無いからな……。けど、あの眠気はどうならんのか? もうやだぞ私、醜態を晒すのは」

 

 ________________________________________________________

 

 さて、レミリアがほんの少しだけ幼児退行してしまったのは限りなく全力で無視して、更に翌日。

 

 執務室にて、パチュリー等の一部を除きほぼ全員が執務室に集合していた。

 

「さて、準備はいいか? フラン」

 

「寧ろ準備が必要なのはそっちじゃない? お姉様?」

 

 そんな他愛のない軽口を叩きながら駄弁る姉妹__しかしその表情は真剣であって、その瞳は一片の揺らぎも見せない。確固たる自信と、燃え滾るやる気、そして、これが終わったら何を要求しようかという悪魔めいた(悪魔である)考え、そんな思い__想いが交錯していた。

 

 フランに関しては後者が強そうであるが。主に目的はリオル。

 レミリアは美鈴のサボり癖をどうにかする為に咲夜の指導を厳しくするつもりで、それを察した美鈴は遠い目になりつつある__が、これも愛弟子の為だ。と決意を固めた__彼女なりにかっこよく綺麗にまとめているが、自業自得だ__当然。

 

「それじゃあ……、やるよ?」

 

 そう言って右手を前に突き出し、掌を上に向け__何かを乗せるような体制をとる。

 

「私もだ、全力でやらせてもらう……」

 

 呟く様に__見通す様に言って__左手で顔を抑える。そして中指と薬指の間に目を覗かせ__右手を少し開いて前に軽く突き出す。

 非常に香ばしいポーズだ……。

 

「ふぅ……」

 

 フランが一つ、息を吐く。力を少し右手に込め、少しその手を閉じる。

 すると、彼女の右腕全体にオレンジの線が混じる赤い()()が広がり__導線の様に張り巡らされ、しばらくすると指先__全ての五本に集まり、渦を描く。

 その内それらは勢いを増し__やがて電流の様に歪な形の線を迸らせた。その紅い稲妻はフランの掌の中心部分に集まり、固まり、形作られていく。

 それは、目であった。紅く、グロテスクな奇妙さを漂わす瞳。しかし、それは一つでは無い。

 

『う、うわぁっ!?』

 

 二つ目は、リオルの心臓部。そこに透けて浮かぶ目は、リオルの可愛らしい容姿とはあまりにもミスマッチ__決して相容れないものだ。

 

 そして、レミリアも行動を開始する。彼女の指から覗く瞳が爛々と輝き出す。

 他の者には一切視認出来ないが、彼女の目には__数多の絡み合う線が写っていた。それは、レミリアが能力を行使する時に限定して視認出来る数多の世界。自身が存在する時間軸__世界もその中の一つでしか無く、他の世界と見分けがつかない__と言うより、あまりにも数が多すぎて__自身の世界を、覆い隠している。

 そしてそれは一直線では無く、糸から糸へと派生していて、その線は鼠算の様に増えていっている。そしてレミリアはその糸の中の内の一つを引き寄せる。少しでも目を離せば何処に行ってしまったか分からなくなってしまいそうな程に、他とも何も変わらない、矮小な__只、一本。

 しかし彼女は迷わない。確固たる自信を持って引き寄せ続け、奪う様に掴み取る。

 

 それを察知したフランは、瞬間、右手を強く、力強く握り締めた__潰す様に。

 

 パリンッ! 

 

 ガラスが割れる様な音が部屋一面に響き、リオルの心臓部にある目も連動して砕け散った。

 フランの腕に張り巡らされた線も少しずつ消失していき、やがて完全にこの世から居なくなる。

 

「終わっ、た〜〜〜!」

 

 少々グッタリと疲労を見せながらも、清々しい顔付きでバンザイと両手を掲げるフラン。美鈴も同様だ。

 しかし、イーブイ達ポケモン組はこの短時間の出来事についていけずオロオロと視線をあちこちに向ける。

 そしてレミリアは……、

 

 パタッ

 

 倒れ込んだ。顔も蒼白で、生まれたての子鹿の様に震えている。

 

「うっ、うぅ……」

 

 余命間近の重病患者の如く弱々しい様子で、口を手で抑える。色々、我慢している様だ。乙女の尊厳を守る為、何がとは言わない。

 

 それを見てハッとなったイーブイが、瞬く間にニンフィアへと()()し、レミリアに駆け寄る。そのまま触覚から癒しを齎す波長を流し始めた。

 

「く、来るのが、遅い……」

 

 どこまでも締まらない幕引きである。




後半駆け足ですが許して。
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