二人は飛び上がった__いや、飛んだ。魔理沙は箒に跨って、美鈴は気と妖力を使って。
「先手必勝! 華符『芳華絢爛』!」
美鈴はそう叫び、何やらカードを掲げる。そして、彼女は自身の力を解放した。
それは花__華の様に広がっていく弾丸。それと同時に赤色の__いや、立場的に紅色と表した方が良いかもしれないが__全方位弾が飛んで行く。
『わぁ! 凄いねリオル! とっても綺麗だよ!』
『本当だ……。凄く美しい』
リオルとイーブイは魅了される。攻撃の筈なのに、美麗に形作られるその弾幕を見ると__見惚れずにはいられなかった。
「何だ? この程度か?」
しかし、そう言って器用にこの弾を避ける魔理沙。不敵な笑みを浮かべて煽るその様は、彼女の余裕さ__強者の風格を漂わせていた。
「てっ……、おっと。直接的な弾か、少々厄介かな?」
時折華に紛れて巨弾が魔理沙目掛けて放たれるのだが、飄々とした態度を崩さず、余裕の態度を保っている。
そのまま避け続けてしばらく経過。遂に美鈴の放つ弾幕は__枯れた。
「大した事無いな、それじゃあ次はこっちからいくぜ? 恋符『マスタースパーク』」
八卦炉を懐から取り出し、宣言。魔力の波が八卦炉を中心に渦巻いていき__一層輝いて、膨大な魔力を伴った光線が射出される。
「うわぁっ!?」
回避が間に合わず、直撃こそ受けなかったものの被弾してしまう美鈴。悲鳴を上げながらも、これ以上当たってたまるものかと全速力で逃げ出す。
「っと、うわっ、はっ、ぐっ!?」
しかし、焦りが生じてしまう。ギアを上げすぎた結果、その砲弾の周りを螺旋状に飛び交う星型の弾、一発、二発、三発……、と躱していくが、速度を犠牲に精密な操作性を失ってしまい、被弾。
「持ち直す暇は与えないぜ、恋心『ダブルスパーク』ッ!」
言葉の通りに被弾した直後、再び、宣言。先程のマスタースパークよりも巨大で膨大な光線。
スペックも同様、マスタースパークよりも遥かに高い。魔力を極限まで溜め込み、恐怖すら覚える程の質量が__放たれる。
「ぐぅっ、あぁぁぁぁぁ!」
直撃。宣言通り、美鈴に持ち直す暇など与えなかった魔理沙。恐るべきスピードで放たれた光線は、一筋の軌跡を描きながら砲弾の様に突き進んでいく。
美鈴も、目で追う事が精一杯であり、回避する暇など須臾程すら存在しない。
美鈴がその奔流に飲み込まれ、勝負は決した。
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「恋符『マスタースパーク』」
空高くから響き聞こえてくる、金髪の少女__霧雨魔理沙の声。それと共に取り出された物__リオルとイーブイには、見覚えがある物だった。
『あれは……、八卦炉?』
『というと……、あの光線をぶつける気か!?』
驚愕する二匹。少し前、具体的に言えば、二匹が幻想入りしたばかり、魔法の森を彷徨っていた頃。その時、あの化け物__異形の狼を討伐する為、使われた__兵器。
詳しい事は知らないのだが、その威力は知っている__いや、知りすぎていた。目の前で行われた、蹂躙。途轍もない、力の奔流。
それを美鈴に向けて、その上攻撃しようとするのは、いただけない__そんなものではない、許せない。
『止めないと!? リオル!』
『分かってる!』
阿吽の呼吸で合図を取り、共に構える。
イーブイはシャワーズに進化し、リオルは両手を開き、左右対称にして、腰だめに構える。
そして二匹とも力を溜め始める。
イーブイは口を開き、そこに水を。リオルは両手の間に波導を__収束させていく。
この一月の間二匹は修行を積み、新たに手に入れた力__イーブイは可能性、リオルは波導の放出を極めんとしていた。
勿論たった一月ではまだ不完全だが、だとしても使える事に変わりはない。
その修行の成果が、今まさに発揮されようとしていた。
『ハイドロ『はどう「やめなさい」痛ッ!?』』
突然背後から軽い手刀を喰らい軽く仰け反る二匹。何事だと後ろを振り返ると__そこにメイド__咲夜が立っていた。
「別にあなた達が考えるような危険は無いから、安心しなさい」
少し困ったような微笑を浮かべ、二匹に安心させるように努める咲夜。
「あれは弾幕ごっこ、殺生は禁じられてる。というよりあれはスポーツに近いものだから、ね」
美鈴は苦手だけど……。と付け足す__というより呟いて、試合の観戦に集中しだす。
しかしその時には、もう既に勝負は決していた。奔流が止み、ふらふらと美鈴が落下していく。
「あらら、負けたの……、知ってたけど。リオル、イーブイ、ちょっと待ってて。私は回収しないといけないから、あれを」
少々扱いが雑な咲夜であった。