東方闇時空   作:よひつじ

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前回の後書きから垣間見える承認欲求の高さ(自分で自分に引いてる)


放出

 リオルは修行の一環として、霧の湖を訪れる事が多くなった。あれから妖精とリオル、両者が争い、競い合っていたのだ。

 因みにリオルは現状無敗である。

 そう言いつつも、半ば遊びという目的もあった。妖精はもう完全にそれ目当て……意固地になっているのもあるが。

 

 という事で、二日に一回程にリオルが霧の湖へ出向くのは両者間のルーチンとなりつつあった。

 そしてそれを聞き付けた他の妖精達が続々と参戦し、このゲームの難易度は日に日に増していた。

 異常に強い氷精が攻撃したりなどが例として挙げられる。

 いくら妖精が幻想郷最弱の存在と言えど、限度があるようだ。難易度lunatic……といったところか。

 

『っと、はっ、せいっ!』

 

 色とりどりの弾がリオル目掛けて飛び交う。その膨大な量の弾丸は、まさに『弾幕』であった。

 リオルも躱すのは困難。直撃こそしないが、幾多もの弾丸がリオルを掠める……グレイズの回数は、毎秒増えていった。

 だが、リオルもやられたままではない。一瞬の隙を突き、波導弾をぶっ放す。

 

 __はどうだん___

 

「ひぎゃあっ!?」

 

 面白おかしい悲鳴を上げ、緑髪の羽を生やした少女が湖へと沈んだ。しかし、まだ一人。未だ、たったの一人だ。

 その数多の弾丸、勢いは止まる気配を見せない。

 

『くっ!』

 

 このままでは泥仕合。そう判断したリオルは――――波導を全力放出した。ドオッ! っと蒼炎が舞い上がり、四方八方から放たれる水や炎、風に氷が吹き飛んでいく。

 そしてそれが終わった瞬間、リオルは横っ飛びする。

 

 しかし、

 

『うわっ!?』

 

 背中に光球が直撃した。尻尾を掠めながら飛んだそれは、リオルに当たって弾ける。

 

(完全に虚を突かれた!?)

 

 だが、不可解な点があった。その弾丸は、音を発さず、視界にも映らなかっのだ。

 

 動揺を必死に押し殺しながら後ろを振り返る。その紅い双眸は、しっかりと下手人の姿を捉えた。

 

 一人は、黒髪ロングに青いリボンの少女。

 もう一人は、赤いリボンの活発そうな少女。

 最後に、栗みたいな形の口とジト目が特徴的な少女。

 

 全員が、差はあれど笑っている。いたずらっぽい、ニヤニヤとした笑みを。

 

『…………』

 

 リオルは無言でグミ撃ち。イラッときた。イラッと。爆砕音が小刻みに響く。

 

「「「ひゅやぁぁあ!?」」」

 

 本当に軽く笑いが込み上げてしまうような悲鳴を叫び、三人仲良く散った。

 ひゅやぁぁ。

 

 さて、強敵は粗方片付いた。そう考えたであろうリオルは、打って変わって余裕を持った表情に変わる。今回、あの氷精――――チルノがいない事が原因に挙げられるだろう。

 原因と言っておきながらも、リオルの思考に間違いはないが。

 

 だが、負けじとその他諸々の妖精達は、弾幕を張り続ける。しかしリオルにとってそれはもう見慣れた、躱すのは朝飯前のeasy弾幕。

 

『ふっ……』

 

 リオルは、駆ける。

 波導を放つ事はせず、唯己の四肢をもって吶喊した。

 

 飛び出す、風を切る、疾駆する……跳躍。

 

 __でんこうせっか___

 

 名は体を表すとはこの事か、文字通り電光石火の速度で疾走と跳躍をほぼ同時にこなし、妖精が群がる場所に肉薄する。

 

 __かわらわり___

 

 多少加減しながら、脳天に手刀を放つ。それをまともに喰らった妖精は、目を回しながら湖に沈んだ。不運な妖精である。哀れ。

 

 __すいへいぎり___

 

 続けざまにリオルはもう片方の手で横薙ぎの手刀を放つ。威力より範囲を重視で放たれた為、大した威力では無いのだが、それでも妖精にとってはこれすらも大打撃であった。今度は三人の妖精が墜落する。

 

 だがここから攻撃は不可能、既にリオルの体は自由落下を始めていた……そう考えた他の妖精達は、もう近づかれまいと様子を見ながら高度を迅速に上げた。

 それはこの状況では間違いなく、的確な判断だっただろう。

 しかし、それは相手がリオルでなければ、だ。

 

 リオルは両手を自身の背後に向けた。そして掌を湖――――自分の体と湖の間に、丁度直角になるように両手を移動させた。

 そして、波導を放出。

 リオルは――――飛んだ。いや、正確に言えば跳んだ、だろうか。

 波導をジェット噴射の様にして上空へ駆け上がる。

 

『はあっ!』

 

 リオルの波導によって齎される力は、リオルの体重を軽々凌駕した。その証拠として、リオルの体は妖精の方に向かって突き進んでいる。

 

 軽く原付を超えるだろう。

 

 そんな速度で宙を舞うのであるから、あっという間に元の高度まで……いや、それさえも超えるのは文字通り一瞬の出来事であった。

 

 そこで一度放出を止めた。だがそうしたのも逡巡。次は左手から波導を放ち、目の前の妖精に突撃する。

 

 __ドレインパンチ___

 

 右の拳を、振りかぶった。勿論、急所は外して手加減も込みで。と、いうより、全然力は込めていない。速度が速度なのでそれなりに痛痒はあるだろうが、それでも問題はない筈だ。

 

 しかし、彼女は崩れ落ちる。それは殴られたのが原因ではなく、他に――――重度の疲労によるものに見えた。

 

 これこそがドレインパンチの力、体力の吸収。文字通り、相手の体力を奪い、自身のものとする。

 

『やっぱりこれが無いとキツイな……』

 

 リオルはそれをして体力を吸収したにも関わらず、その顔は少しばかり疲労が浮かんでいた。

 

 ……それも当然か。自身の体を高速で飛行させる程の出力を持った波導を放出して、疲れない筈がない。

 

 波導は生命力そのものである。そんなものを無限に扱える程、リオルの体は丈夫にできていない。

 ……それでも三日間ぶっぱなしで走り続けられるぐらいにはタフであるが。

 

 だからこそ、ドレインパンチ一発では、疲労は色濃く残ってしまうのだ。

 

『早めに終わらせないとね……』

 

 リオルは、全身に波導を纏った。

 

 

 

 

 

 

 

 ……やけにシリアスだが、遊びである。

 

 

 




*リオルはポケモンです。決して何処ぞの某野菜人ではありません

前提として、作者は三月精を読んだ事がありません(遅い)
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