そして新章突入!
前回のあらすじ(大嘘)
リオル「イーブイの事かーーー!!」
妖精「こ、これが伝説の波導の勇者……」
天気
夏。
カンカンと日光が地上を照らし、それと同時にその熱を持って人々を苦しめる。蝉の鳴き声が辺りに響き、さながら合唱の様。
家屋の縁側では風鈴のチリーンといった冷涼な音が聞こえ、猛暑の中人間達にひと時の癒しを与えるのだ。
空を見上げれば、雲一つない唯広大な水色が広がる。空一面がキャンパスだとすれば、一色で彩られたそれは味気ないかもしれない。然しその美しいスカイブルーは、色付いた深い緑色の木々達に、人里の皆の風景と相まって、まさに『幻想郷』の名に恥じないものであった。
……だが、それは本来の夏であって、今回はどうやら違うようだ……。
門番の仕事が形骸化してきていた。リオルの波導の能力、生命感知があれば必要無いのでは? と誰かが疑問に思い、気が付いたらこうなっていた、というわけだ。
美鈴も一応守護はするのだが、当然のように爆睡していた。
話を変えるが……いや、間接的には関係しているか。
リオルは美鈴との修行終わりに霧の湖で妖精達と遊んでいる。それは前回で描写した通りで、もう一度言うと結構な頻度で行なっていた。もうほぼ毎日と断言しても良い。
……門番の仕事が無くなった事が、因果として繋がっていると言っていいだろう。
だからこそ----異常に気付く事が出来た。
『やっぱり……おかしいよね?』
そう、ぽつりと声が漏れる。リオルは今現在、妖精達に目もくれず……正確に言えば多少気にしてはいるが----兎も角、リオルは上空----広大な空に、疑問を感じていた。
『んぅぅ……?』
また声が漏れ、次に前方----紅魔館、もう少し条件を絞って言えば、紅魔館の上空を見つめる。
そこに映るのは、厚い雲が膜のように張る、夏場には珍しい曇天の空であった。
『…………』
とうとう無言になり、再度自分の真上を見上げた。
そこに映るのは、薄く張った雲……巻層雲とも呼ばれる、薄雲という天気だ。
補足として、リオルの現在地と紅魔館との距離は、百メートルと少し。その短い間に、どんよりとした雲と、グラデーションの様に太陽を淡く隠す薄雲が存在していた。
もし見かけたとしてもそこまで驚愕こそしないものの、一笑に付してはいけない。それぐらいには、珍しい天気だろう。
しかし、
『これが数日続くっていうのは……ねぇ?』
そう、この天候がかれこれ数日間続いていた。と、なると、それこそただ事では無い。今は夏場真っ只中だというのに、太陽が紅魔館に直撃する事は無かった。
『それに、波導が抜けている?』
そして、波導が靄の様にリオルの体から抜け落ちていた。その上、色も赤く変色して。
『ん……?』
色々とこの異常事態について思考を巡らせるのだが、一向に答えは出ない。情報が少なすぎるのだろう。
そうして思考が半ば諦めモードに入った時、例の雲の中を進む物体をリオルは発見した。
この距離ではそれが何なのか、見た目だけでは全く不明だが、リオルはその物体に、ある程度目星がついていた。
『魔理沙……?』
そこは、一触即発の状況であった。魔理沙と咲夜が向かい合い、弾幕ごっこを始めようとしている。
そして、完全に観戦ムードな美鈴とイーブイ。そして、追加でリオル。
「あら、雨が降ってきたわ」
「そうなんだよ、最近雨続きで困るよな」
しかし、それを遮るように雨が降り始める。リオルや咲夜からの視点だと、久々に雨が降ったという感覚だが、魔理沙の視点から見ると、どうやら今迄雨続きだったようで、愚痴を零している。
「全く、本を持ち帰ろうにも湿気ちまうし……」
「勝手に持っていかないの」
困り顔で指摘する咲夜。この魔理沙、どうやら例のパチュリーの新作魔法を破ったらしい。魔理沙自身決して天才では無いので、相応の努力が必要だっただろう。もっと他の部分で使うべきだが。
「まぁ、最近天気が悪いのは確かだけれど。それよりも、何か感じない……?」
おそらく、天気の件と関係しているのでは? とリオルは推察する。そして、波導の事にも関係しているだろう、と。
「あぁ? 全く感じないな……」
「ほら、貴女の体からも……」
そう、リオルだけではなく、咲夜、それに魔理沙までもがこの赤い霧を発生していた。しかし、魔理沙に気付く様子はない。
解けない謎に嫌気がさした魔理沙は、ミニ八卦炉を取り出し、構える。同時に咲夜も両手にナイフを構えた。
「兎に角、私はお前には用が無いぜ!」
闘いの火蓋は、切って落とされた----