一人の少女----十六夜咲夜は、一陣の風となって蒼空----いや、少し曇った空を突き進んでいた。
「私が一人の時は曇天----曇り空だった。そして、魔理沙は霧雨……名は体を表すって事かしらね。今回の異変、何やら『天候』に関係してるみたい」
「それに、ぼくたちからもれでるあかいきり……というよりせいめいりょく?」
波導、もしくは気。生命力に値するものが、一部の者から漏れ出ていた。
「リオル、貴方はどんな天気だった?」
「……うすぐも、だったね」
「成る程。じゃあイーブイは……晴れってとこかしら?」
今の天気は少し雲が張っている、ぐらい。リオルと咲夜だけなら相当の----雨が降りそうな程の曇り空だろう。分厚い雲と薄い雲を足したらとても分厚い曇り空、簡単すぎる足し算だ。しかし結果は少しだけ曇った空。
そこから考えるに、イーブイの天候は晴れだと推測がついた。
『はぁ……』
しかし、納得いかない様子のイーブイ。
イーブイには、赤い霧が見えていなかった。その上、生命力を感じる能力もない。
単純に、実感が沸かないのだろう。
「それにしても……」
ぽつり、と咲夜が呟く。
「赤い霧に天候……関連性が見出せないわね」
「まぁ、たしかに」
それにリオルが軽く返す。咲夜の言う通り、赤い霧に様々な天候、そしてその赤い霧は生命力だという。関連性など見受けられなかった。
「…………気や波導に近くて、その異変の犯人……白玉楼が怪しいわね」
長考の末、咲夜の見出した可能性は白玉楼----そこに住まう幽霊達だった。しかし、そんな場所は初耳である二匹、疑問に思うのは当然の事だった。
「どこ、そこは?」
「正確に言えば冥界、かしらね。幽霊とかがいっぱいいるわ」
二匹の脳内に、ゴーストタイプのポケモン達が浮かんだ。主に、ヨノワール。
色々と過去のトラウマが刺激されたのか、一つぶるりと身震いをした。しかしながらヨノワールは、スペシャルエピソードで改心していたりする。二匹にそれを知る術は無いけれど。
『ねぇ、リオル。急に行きたく無くなったんだけど』
『奇遇だね。僕もだよ』
だから、こうなるのは当然だったのかも知れない。それでも、手掛かりも無い以上、結局は行かなければならないが。
(幽霊とか苦手なのかしら……)
そして、そんな二人の会話など露知らない咲夜は、一人脳内で的外れな事を考えていた。
「全く、何だったのか、あの幽霊は」
そことは打って変わってとある場所。そこでは苛立った様子の少女が注連縄に巻かれた岩に腰掛けていた。
「異変解決しに来たと思えば、そんな気はない、とか。前座としてやり合ったけど、煙に巻かれたな……」
釈然としない様子の少女。軽く舌打ちをしてから、手に持っていた立派に熟れた大きな桃を豪快にかぶりつく。
「不味くはないけど、やっぱ飽きた……」
それでも、苛立ちは晴れず、寧ろ新たなストレッサーが生まれてしまい、もう一度舌打ちをする。先程より音量マシマシで。
「まぁ」
独り言は止まない。
「どうせまだまだ来るでしょ、本命の博麗の巫女は当然やって来るだろうしね。私が地震を起こすから」
そして、邪悪な笑みを浮かべた。ほくそ笑み、注連縄の巻かれた岩----要石から飛び降りる。その先は、白く綿飴の様な地面----一面の雲だ。
「さて、ここからが楽しみだな」
そう言って、
「天界での退屈を、紛らわせてくれよ?」
笑った。