咲夜の話した内容、それの要旨をまとめると、こうだ。
リオルとイーブイが技を放つスペルカードを作成する--それだけ。
それでも、ちゃんと動きの設定が必要なわけで--少々ゆっくりと白玉楼に向かい、その間に作成を終えた。時間が無いのは事実なので、ネーミングは適当なものになってしまったが--それは、まぁ、要改善という事で。
そして、冥界の入り口。二匹は、咲夜の左斜め後方辺り、物陰に身を潜めていた。
その眼前には、数多の剣閃が飛び交う戦場であった……タイマンだが。
リオルとイーブイは、スペルカードとしての役割があるので、今は手を出せない。スペルカード宣言された時、全力で不意打ちをする算段であった。
剣士とメイド。相反するどころか、接点が無いように思えるが、その二人は向かい合って--舞う様に、競い合っていた。二本の刀と、幾多のナイフで。
金属が打ち響く音が鳴り、それは時を刻む毎に過激さを増していく。
そんな中、剣士--魂魄妖夢のラストスペル、桜花剣『閃々散華』により--メイド、十六夜咲夜は、手傷を負ってしまう。
一瞬、イーブイが動揺するも、リオルが止める。待っているのだ。スペルカードを、自分達という名の切り札--カードを切る事を。
そして、その思いは、というよりも予想は、案の定と言うべきか、的中した。咲夜が、スペルカードを、宣言したのだ。
--覚醒『フレアドライブ』
リオルは思った。あれ? 僕の出番無いぞ? と。
妖夢は困惑した。その--咲夜が宣言した、スペルカード。それが、彼女自身にとって、完全に初見だったからだ。
まず、スペルカードの名前からして咲夜らしくない。というか、フレアは一部の炎や爆発現象等を指すものであって、咲夜は炎、爆発系統の技を使わない。
妖夢の心当たりがある炎使いと言えば、咲夜と同じく紅魔館に住まう魔法使いや、竹林の不死者ぐらいのものだ。
魔理沙は--爆発ではなく、光か。
妖夢の想定では、ダメージを与えた瞬間、咲夜が何かしらのラストスペルを発動。咲夜が負傷でスペルカード宣言する直前の怯む間に全力で後退し、相手のスペルカード宣言のタイミングを伺う。後は気合いで何とか避ける。
穴だらけどころか穴しかなかったが、だからと言って取れる策は妖夢には浮かばなかったし、ナイフは斬って叩き落とす、もしくは避ける、これさえ熟せば何とかなるだろうと彼女は思っていた。
だが、結果。その考えは覆った。
飛来したものはなではなく--火炎を纏う、獣。
赤い体毛と、首元のオレンジ色で染まったふさふさの毛が特徴的の--ブースター、と呼ばれる、ポケモン。
妖夢の目の焦点には咲夜が映っていた。咲夜を危険視していた為、当然である。
--よって、妖夢は、自身に向かって突撃するブースターを、回避する事が出来なかった。
『うりゃぁぁぁぁあ!』
咆哮にも近い鳴き声で叫びながら、火炎の獣はひた走る。
__フレアドライブ___
妖夢の右脇腹に、全力で体当たり。ゴッ! と重々しい音が響き、妖夢は錐揉み回転しながら弾き飛ばされた。そして、その妖夢が飛ばされた力が消え、砂埃を立てながら、倒れる。
宣言とほぼ同時に勝負は決まった。