結構前だけど、平行線が追加されてからちょっと楽になった
うつ伏せになって脇腹を押さえ、イーブイを睨みつける妖夢。
ブースター……ではなく、既に普段のフォルムに戻ったイーブイは、あわあわしながら頭をぺこりと下げる。
どうしようかと考えながら行動のタイミングを伺うリオル。
そしてそれを愉快そうに眺める咲夜と、あらあらうふふと微笑を浮かべる一人の亡霊。
只々、カオスであった。CHAOSである。
戦いが終わり、倒れる妖夢に咲夜は話し掛ける。
「さあ、屋敷に案内してもらうわよ」
「ゔぅ……」
しかし、妖夢は悶絶。フレアドライブが、
文字通り、虫の息だ。
先程の真剣な表情と雰囲気は何処へやら、妖夢は、諸悪の根源たるイーブイを睨みつける事のみ。それ以上の行動は、一切とれないようだ。
(困ったものね……)
咲夜は考える。どうすれば妖夢から情報を引き出せるかを。
……時間の経過による回復を待つべきだろうか?
しかしそれでは時間がかかる。咲夜からすれば、一刻も早く異変を解決したいのだ。……洗濯物乾かないし。
「あらあらぁ、大丈夫? 妖夢?」
「きゃっ」
ビクッ、と咲夜が肩を震わせる。突然背後から聞こえた声で、瀟洒にあるまじき反応を取ってしまった。
それに恥辱を感じたのか、少し顔を赤らめ、軽く怒りを表情から滲ませながら後ろを振り向く。
「だれっ--」
はっ、と驚愕を露わにする。咲夜の視界に映った人物が、彼女にとって見覚えのあるものだったからだ。
「幽々子さん--」
ここで冒頭の一幕があって、幽々子と咲夜は改めて良いものが見れた、と、とても満足気な様子で微笑をキープしていた。
だが、それも束の間。何故なら--辺り一面、異常な光景が広がっているからだ。
ふわり、と綿のような柔らかい物体が優しく降り注ぎ、その結果、一定範囲内ではあるが--辺りは銀世界へと変貌していた。
そう、雪である。
「どうやら私の目に狂いはなかった様ですね、幽々子さん。何せ、貴方までこの異変に影響されて--白玉楼まで、おかしくなっているみたいだもの」
「何を言っているのかしら? ここには、おかしいことも、変な事も、起きていませんよ?」
咲夜はその発言に対し、明確な否定の意思を持った。変な事しか起きていない、と。常識外れの幻想郷でそんな事を言い放つのは野暮かもしれないが、それでも、数々の--これらの異常事態に、流石に耐え切れなくなったのだろう。
それに--
「積もりすぎでしょう」
今更だが、場所は既に移していて、例の一幕の後、幽々子と共に白玉楼内部に見事正面から入場している。
それは兎も角、咲夜の言う通り、積もりすぎであった。夏真っ盛りなのに、真冬かと思ってしまうぐらいには。
こうなると、咲夜の周りで発生した異変は些かしょぼいものでは無いかと思えてくる。咲夜は、特に勝っても嬉しくないし、寧ろ勝利した場合のデメリットが半端なく大きいのだが、軽く悔しさを覚えた。
「別に構わないでしょ? 貴女も私も、こんな真夏に避暑が出来るわよ? それも、特上の」
「寧ろ肌寒いですよ……」
豪雪--とはいかなくても、雪が降っているのだから、普通に寒かった。
「というか、ここまで堂々としているなら、貴女は何も企んでいないようにも見えてきますね」
「そんな事はないわよ。……それより、あのリオルって子は?」
「あの場所で悶えている妖夢の介抱を」
リオルは、あの場で待機することになった。誰かを置いて行かなければいけないが、咲夜は異変解決に必要不可欠というか、それの張本人。イーブイは、妖夢がああなった原因だから、万が一の為に距離を引き離した。結果、リオル。
……消去法とか言ってはいけない。
「本当は二人ともの戦いを見てみたかったけど。架空の世界の獣の戦い方、気になるわねぇ。幻想郷の為に戦う為の強さを」
異変解決の為に動いているリオルとイーブイ、動機が動機なので、幽々子の信念--愛国心からすると、
「何か色々知ってそうですね。勝ったら、色々教えて貰えませんか?」
何か意味深な言動で、咲夜は前言を撤回した。こいつ何かを知っている、と、確信。まぁ、異変解決には弾幕ごっこがセットで着いてくるのは仕方がない事なので、咲夜は好戦的に、相手--幽々子に勝負を仕掛けた。