……大して変わってないけど。
後、今回から技の演出を変えます。
「光珠『龍の光る目』! 喰らいなさい!」
先に攻めたのは衣玖だ。先程の会話に何か感じるものがあったのだろう。潰す気である。
「ハァッ!」
叫び、雷光を射出。両端の巨大な弾丸、その間には電気がまるでその巨弾を繋ぐかのように、線となっていた。例えるなら──ダンベルのような形状と言えるだろう。
それは円を描くかのように回転しつつ、前方に向かって突き進む。当然ではあるが──咲夜に向かうのと、前方に向かう事は同義。
雷光の螺旋、暴力的なまでの凄み、そしてその上──
(軌跡……)
螺旋の軌跡が逃げ道を塞ごうとする。その場を覆い隠すかのように。
しかし、それは縦に飛ぶ弾幕。二次元的なものであった。それだけなら、躱すのは容易であるが……
「まだ……終わりませんよ!」
今度は横向きに、咲夜の上半身と下半身を両断せんとばかりに、第二撃が直進する。
(早めに何とかしないと、厄介なタイプのスペルカードね)
衣玖の行動を観察し、このスペルカードの性質を瞬時に理解した咲夜。
衣玖は今にも第三の弾幕を飛ばそうとしている。移動を交えつつ、様々な角度から咲夜を追い立てようとしていた。
このままでは、袋小路、詰みだ。
(そうなると行動は早めに……離脱、ね)
【バニシングエブリシング】
幽々子との弾幕ごっこと同じように、懐からトランプを取り出し、ばらまく。そして雷光に被弾する直前に──その場から消え失せた。
現れる場所は衣玖の背後──スペルカードの適用範囲外の地点。
「チッ!」
衣玖は舌打ちをしつつ、背後に向かって瞬時に第三撃を軌道修正して放つ。
「遅い」
咲夜はそう呟く──いや、決して反応ば遅いわけではなく、寧ろ早いのだが──それでも、咲夜が一つ行動を取る時間は余裕で残されていた。
咲夜はナイフを投げつつ斜め前方にステップし、距離を詰めていく。
「傷符『インスクライブレッドソウル』!」
流れに乗って、スペルカードを宣言。瞬間、咲夜の目が──紅く光った。
レミリアやフランを彷彿とさせるような、爛々と光る双眸。彼女らのような──紅玉の眼光。
観客に徹していた(指示されたら動くつもりはある)二匹には、咲夜が自分の知る彼女と、一瞬だけではあるが──別人のように感じられた。
そこから始まるのは──いや、降るのは、ナイフの雨。エターナルミークと似通っているが──威力が段違いだった。幽々子との弾幕ごっことは違い、パワーで押し切るつもりなのだろう。
何重にも、咲夜の腕辺りの残像が重なる。それに比例するように、高速で射出されるナイフの数も増していった。
ナイフが飛ぶ。空気を斬る音が響く。銀の刃が鈍く輝く。
そんな中──衣玖はスペルカードを発動している途中、それも、先程一度放ってしまった──その隙を突かれた状態で、躱せる筈が無かった。
「そんなっ、ものっ! ぐっ!」
咄嗟の判断で雷弾を放ち、いくつかのナイフを弾く。だがそれでも、この須臾程の時間で全てのナイフを相殺は出来なかった。
──被弾だ。
「うっ、ぐぅっ、 らっ!」
その衝撃で後ろに飛ぶ──負荷を抑える為に、自分で後ろに跳んだのもあるが──吹き飛んだ。
それでも何とか受け身を取り、掛け声一つで体勢を立て直す。
片手一つで、羽毛のように──体重を感じさせない動きで、ふわりと立ち上がった。
その際、衣玖は牽制の為に一発弾丸を飛ばす。それにより、咲夜は追撃に失敗した──その間に衣玖は飛翔し、距離をとった。
戦況は──咲夜が有利。スペカ使用回数は二人とも残り一回だが、衣玖は被弾が後一発しか許されない状況。
その上──
「戦舞『蒼炎の舞』」
リオルとイーブイがスペルカード要員として戦闘に参加するという事を、知らないのだ。