「大体ね、リオルが殴ってきた時点で気づかないの?」
割と辛辣な口調で嘲り混じりの言葉を言い放つ咲夜。
そう──勝負は既に決していた。
衣玖がリオル──の分身を攻撃した瞬間に、背後からリオル(本体)が衣玖に波動弾を放ち、戦いは終わった。
代償があるとすれば、リオルが想像以上に疲れてしまった事か。
予想外、だったのだ。本来ならば、もっと速く、とても速く、この戦いは終わる筈だった。初撃、背後からの不意打ちで、勝負を決するつもりであった。
しかし──さすが5面ボスと言ったところか、彼女は人外めいた──人外ではあるが、兎に角、常軌を逸した反射神経をリオル達に見せた。というか、分からせた。
結果的に見れば、咲夜一行の大勝利だが──苦戦も良いところだ。
この結末、リオル達が弱いと見るか、衣玖が強かったと見るべきか────当然、というかほぼ間違いなく、殆どの人妖は後者だと答えるだろう。衣玖以上の実力を持つものなら、ごく僅か、例外があるかもしれないが。
もし本当に、正真正銘の真っ向勝負なら、勝敗は変わっていただろう。
まだまだ、リオル──いや、イーブイも、これから成長しなければ。何となく、何となくではあるが──二匹はそんな事を考えていた。
時間だって、伸び代だって、二匹にはまだまだ用意されている。これから一ポケモンとして、探検家として、心身共に強くなろう。兎に角今はその為に──
おっと、話が逸れた。
咲夜が辛辣な理由であるが……
「貴女は電気を帯びていた、そんなのに近付けるわけないじゃない。リオル(分身)が近接攻撃を仕掛けた時点で、あれはフェイントだって気付けたんじゃない?」
咲夜は少々苛立ちを感じていた。天界までもう少しという所で、そこに向かうのを阻止されたから。どうせ、霧を追っていればその内この異変の元凶には辿り着けたであろうに──はっきり言って、邪魔だった。
リオルのスペルカードを試運転出来た、というメリットはあったけれど、リオルの疲労具合を見ればリオルがしばらく戦力にならない事は分かる。
休憩の意味が消え失せた。よって、再度リオルを休ませる為に時間を少しだけ取っていた。
それで、その間に衣玖から話をしたり聞いたり──なのだが。
『天界の事情』『赤い霧』『異変の元凶の正体の推定』『これから起こる地震』
これらの情報を交換、それだけなら、特に問題なかった。
ただまぁ──それとこれは別、と言うか、邪魔された事に変わりはなく……リオルが復帰する迄、軽く詰っていた。
とは言っても、本気に──キレている訳ではなく、冗談半分である。
台詞を文面だけ見るならば、それこそ棘だらけの言葉に思えるが、実際はそこまででは無い。
証拠に──うっすらとだが、笑っていた。見た感じ只のS。
ちなみに某緑巫女なら「wwwwwwwwwm9(^Д^)プギャー」みたいなことになる。これは酷い。
「もうだいじょうぶ。さきをいそごう」
そんな時、リオルが咲夜に話し掛ける。衣玖を庇う意味も含まれているのか、少々の冷や汗が。
「あら、もう大丈夫なの?」
「ごわりってとこ」
「もうちょっと休んだ方が……」
「だいじょうぶ、じかんがみかたしてるうちにさ?」
先を急ぐ事を催促するリオル。
庇う庇わないを抜きにしても、早く先に進みたいのだろう。
「そりゃあまぁ、さっさと行かないと面倒な事になるけど………………うん、分かったわ。先に進みましょう」
長考の後、まとめ役(暫定)として判断を下す。
『大丈夫なの?』
『問題無いよ』
イーブイも心配するが……断固として、意見は変えなかった。主張は一貫している。
『……うん』
イーブイも心配しているが……リオルがそう言うのならば、平気だろうと考えた。躊躇いながらも、返事をする。
「それじゃあ二匹とも、行くわよ」
『『はーい』』
一行は飛び立つ。妖怪の山頂上──からさらに上へと。昇っていく。
辺りには、霧が漂っていた。
多分この時点で後の展開が大体分かる人いると思う