そして、1話を書き直しました。ぜひ見てください。
黒い。黒い。黒い、何か。
それがいた。
それは動けなかった。
何故だろうか?
──鎖で拘束されているからだ。
それは抵抗した。暴れた。暴れに暴れた。
それでも、脱出出来ない。
それを拘束する存在がいた。
幼さの残る少女──ではなく、鬼の頭領。山の四天王、伊吹萃香である。
『おい紫、さっさとしろ。……はっきり、言って、もう、無理だ──』
『分かってる! 黙って耐えてなさい!』
妖怪の賢者──八雲紫は、苛立ったように叫ぶ。
視線の先には──緑の小さな小さな蜥蜴のような生物。その黄色い瞳は、意識が虚ろなようで、何も映ってはいない。理性を失っているのか。その証拠と言っては何だが、魂が抜け落ちたかのように、身体に力が一切入っていない。虚無の瞳と、幽鬼の身体。それの正体はなんであろうか。
その前に特筆すべき点がある。それには、異常な──本来ある筈の無いであろうものがあった。付いていた。その右腕に。
それの右腕は……鋭く、鋭く、硬質化していた。刃のように、全てを切り裂く、刀のように。どちらかと言えば、鎌だろうか。あらゆる物を切り裂かんとばかりに鈍く光っている。
『妖術、威力強化──硬質化、属性強化』
本来必要無い詠唱──それを紡ぐ。言い聞かせるように語る。
『本当は、したい訳じゃないけど──』
『罪悪感を感じてる場合かッ! もう私達しか残ってねぇんだぞ! お前の式神もやべぇじゃねえかっ!』
『……えぇ、そうよ。これは、残されたただ一つの攻略法』
紫は落ち着いて操作する。その生き物を。黒い何かを殺す為に。
「ふぅ──」
蜥蜴は、腕を振り上げる。ゆっくりと、鈍重な動きだ。それでも、纏う殺気は動きの何倍もの速さで膨れ上がっていく。
「喰らえ──!」
『ァ"ァ"──』
『リオル!』
イーブイ、いやエーフィはいち早く気付いた。『じくうのさけび』だと。
あぁなってしまえば、リオルは無防備だ。今までは運が良かったが──最悪の状況下で、起きてしまった。
『やっ!』
エーフィは駆け出す。四足歩行の獣として、走る。
そして──
『はぁっ!』
身体が、薄紫色から黄色へと変化する。美しい猫又から、荒々しい雷の狐に。
ブイズの中でも最速。全ポケモンの中でも、突出した素早さを誇る獣。第一世代から今まで、戦線で活躍して来た老兵。
そう──サンダース。
エーフィとは、何倍の速度の差だろうか? 速い、あまりにも速い。あの天狗と見違えるかも知れない圧倒的速度。
しかし──どこかぎこちない。
(体が、慣れないッ──)
考えてみれば、当たり前の話だ。エーフィとサンダースでは、身体的能力の差が激しい。さらにその上──
(能力が──)
リオルとイーブイが、互いに持つ程度の能力。それの条件として、互いを認識するという条件があった。
そして、それは一方通行の場合効果が弱まる。サンダースは、上手く実力を発揮出来ないでいた。
それでも──
【こうそくいどう】
【でんこうせっか】
素早さを上昇させ、文字通り雷の速度で走ろうとする。いや、走った。
高速移動と電光石火の合わせ技は、文字通り雷光の速度。
『ヤァッ!』
鈍く、重く、衝突した。その小さな体躯、小柄という不利な条件をものともせず、文字通りその鬼に押し勝──
「何だ? さっきからこいつ含めて……」
──たない。がしり、と。その身体を乱暴に捕まれ、拘束された。何たる動体視力、反射神経か。本調子でなかったとは言え、サンダースの動きに反応し、その上対応し切るとは。
これが、鬼。身体能力はリオル以上。速度単体で見ても、サンダースを上回るかもしれない。
──化け物。
【でんじは】
「ぐぅっ!?」
だが、それで諦めるか? このポケモンが。何度も挫けようが、醜態を晒そうが、彼女はイーブイ。元人間の英雄──リオルのパートナーだ。
勇気ある小さなこの獣が、これしきのことで終わる訳が無い。
『ワタシは弱い──けれどっ!』
その背後にはリオル。
『勇気とッ!』
その双眸には、萃香が映る。
『仲間──達がいればッ!』
一度殴られたからこそ分かる。あれは手加減されていた。あの攻撃は、本気ではなかった。もし全力を出されたら? 動けないリオルが──それを喰らえばどうなる?
それなら──
『いくらでも戦えるッ! 守ることが出来るんだ!』
『十万ボルトオオォォォォオオオオ!!!!!!』
────ドクン
──ドクン
──ドクン
──とくん、とくん、とくん
『──うぐっ』
目が、覚めた。僕は……じくうのさけびで目眩がして……。
随分と長かった。あの黒いものと、紫と萃香。そして、ポケモンらしきもの。
いや、ポケモンだ、あの子は。あんな小さな……自分にも刺さっちゃうか。兎に角、あんな子が……戦わされていたようだった。操られるように。
あの子、何故か見覚えがある……気がする。何故だろう。見た事なんてない筈だけど──
待てっ! イーブイが──イーブイはどうなった? あの攻撃は防げたけど、それでも……
くそっ。思考が霞む。意識がぼんやりしている。
どういう訳か、あの黒いもの──黒いという特徴しか覚えてない。それ以外も、何やら曖昧というか。
目の前が真っ白だ。脈打つようにも見える。何だろう? まだ、叫びは続いているのだろうか?
いや、違う。見た事があるような。そうだ、エレキへいげんの時みたいな……
雷?
今更ですが、投稿が遅れてしまったこと、誠に申し訳なく思っております。
しかし、度重なるテストなどがこれからも続くので、どうか御容赦下さい。
今回も少々無理な展開になってしまいましたが、後に繋げる為なのでお許し下さい。