リオルとイーブイが魔理沙の家に泊まってから数日が経った。
その数日間は、二匹にとっても、魔理沙にとっても、新鮮で濃密なものだった。二匹は人間の文化に触れ、魔理沙はポケモンの文化に触れる。とは言っても、所々似通っている部分もあり、それに気付いた魔理沙がひどく驚いたのはまた別の話。
「よっしゃ、行くか……お前らは、準備出来たか?」
頷きを返す二匹。そう、これから『博麗の巫女』に会いに行くのだ。
しかし、一つ問題があった。二匹が『博麗の巫女』はどんな人なのか、という質問を何とかジェスチャーで聞いた時……
「まぁ……一言で言うと変わった奴だな。というか、幻想郷の住民は変な奴ばっかだし……あんまり気にしない方がいいぜ」
と、どこか遠い目をしながら語っていたので二匹には不安が現在進行形で募っている。(お前が言うなと言うツッコミもあったが)
イーブイは怖いニンゲンだったらどうしよう……と涙目になってすらいた。
だが、魔理沙はそんな事は知らんとばかりに着々と準備を進めていた。そして、魔法道具や箒の点検が終わると、
「よし、行くか! お前ら、後ろに乗ってくれ!」
箒に跨ると、後ろを向いてそう言った魔理沙。リオルは二人乗りの様に後ろに座って、イーブイは、リオルと魔理沙の間でリオルに少し固定される形で座る。前門の虎後門の龍ならぬ、前門の魔理沙後門のリオルだ。
と、そんなしょうもない事はさておき、箒が舞い上がる。箒を自らの四肢の様に操るその姿は、成る程、魔法使いと言われても納得する姿だ。
「出発!」
そして、超特急で獲物を狙う鷹の如く飛翔した。
……因みにこの時の魔理沙の心情なのだが、
(やべぇ、めっちゃモフモフするんだけどというか反則だろあの首の所のモフモフ……)
結構はしゃいでいた。
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延々と続くのではないかとつい思ってしまう程の長い階段を上ると、そこには『博麗神社』と銘打たれた立派な鳥居が見える。
そして、かなりの大きさの本殿。それと同様に境内もかなりの広さを誇っていた。
その境内では一人の少女が掃除ををしていた。少し前から落ち始めた赤みがかった木の葉を一箇所に集めている。
すると、彼女の特異性の一つである『勘』が働いたのだろう。光の差さない空を見上げ、怪訝そうな表情を浮かべている。
そこに見えたのは、彼女の見慣れた人影であった。
いや、少し普段と違う事がある。魔理沙の後ろに何かを乗せているのだ。それに気付いた少女は、その怪訝そうな顔を更に深めた__
「よう、霊夢」
気楽そうに霊夢に向かって話し掛けるのを見ると、二人が友人としての関係をもっている事は、容易に想像できるものであった。
しかし、その話し掛けられた本人は、気怠げな表情を浮かべている。
「なによ、魔理沙。私に話し掛ける前に、あれに出すもん出してからよ」
そう言って、賽銭箱を指差す霊夢。そこからは、傲慢というか、高飛車な性格である事が窺える。
「どうせ私一人入れても変わらんだろうに……」
先程吐かれた暴言はさして気にすることなく、ぼやくようにそう魔理沙は口にする。
「何ですって? こちとら死活問題なのよ!」
「はいはい、そうだったな。大変大変」
「うむぅ……」
不毛な口論が始まったが、勝者は魔理沙であったようだ。というより、さっさと本題に入りたいという意思があるのだろう。
「んで……、何よ? そいつら?」
そう問う霊夢。まぁ、当然の疑問だろう。見知らぬ生き物をわざわざここまで連れてきているのだから。
「何というか、中々面白い奴らでな」
そう言って二匹に視線を向ける。二匹は軽く頷くと、霊夢の前に出て、軽くではあるが鳴き声と共に礼をした。
『『こんにちは』』
二人には言語圏どころか、声帯の構造レベルで異なるので勿論通じてはいない。だが、霊夢は驚愕する。人に挨拶するという行為を取れるその知能に。
「……!」
「な? 面白いだろ? 私も初めてこれを見た時は驚いたもんだよ。なぜかは知らないが、こいつらの生活は人と似通っているんだ」
本来この幻想郷において人と同じ、もしくはそれ以上の知能を持つ妖怪もそれなりにいる。
しかしこの二匹には、それらとは違う特徴があるのだった。
まず、力。
見た目だけで判断すると、どう見ても二人からすれば妖怪にしか見えない。しかし、二匹の身に纏っている力は人の持つ力、霊力であった。
それと、姿。
先程言った通り、二匹は妖怪の様な見た目をしていて、人とは程遠い。妖怪は人に姿が近ければ近いほど知能が高い傾向があるのだが……この二匹は別であった。
以上の理由により、二匹はこの常識が通用しないこの幻想郷でも、驚かれる様な珍しい立場にあるのだった。
「……成る程、確かにこれは不思議ね。いくつかテストをしておきたいし……、よし、魔理沙と二匹、上がりなさい」
霊夢は魔理沙と二匹を部屋に上げさせる。その目には、疑問が浮かんでいる。
終わり方が変ですが、ここで一旦区切ります。