「はたらく細胞」の原点のお話、「細胞の話」の白血球さんの、繰り返す命の話。






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輪廻

──繰り返す。

 

 

『そのこと』に気づいたのは、何回目の『俺』だったか。

 

 

──繰り返す。

 

 

一つずつ、一つずつ。番号を着実に増やしながら、俺の意識は繰り返す。

 

 

──繰り返す。

 

 

ともすればそれは呪いの様で。実際継承してきた記憶は数知れない。

 

 

 

──繰り返す。

 

 

仲間の死も。傷の痛みも。よりよい戦闘の術も。気のよい仲間の性格も。通過儀礼(イニシエーション)も。脾臓の光景も。最期に視る夢も。

 

 

 

──繰り返す。

 

 

微睡みに堕ちていく中で、これまで《1116番》として生きた記憶を再構成する。

 

──繰り返す為に。

 

 

 

──《次の俺》に、繋ぐために。

 

 

 

《1116番》としての最後の戦闘。

赤い彼女との邂逅。

協力要請。

『また、会えますか──』

 

その問いに自分は何と答えたか。

 

 

 

覚えていたい。

 

忘れたくない。

 

 

 

だから、引き継ぐ。

 

 

 

 

 

 

──もう一度、会えよ。あの子に。

 

 

 

 

 

──1()1()1()7()()

 

 

 

 

願いと、共に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

奇妙な夢を見た気がして、俺は飛び起きた。

そして気付く。

──ああ。《引き継いだ》のか。《前の俺》から。

一つだけ増えた《今の俺》の識別番号(コードナンバー)

1117。

この番号札(ナンバープレート)をもらった初日に、寝台で見る夢。

脾臓での研修と併せて、確か100番台の頃からの《いつものこと》だ。

 

記憶の継承。

何度も何度も繰り返されるセカイで、それでも周りは変わっていった。

班行動がなくなった。

脾臓業務員が1人になった。

ゴタゴタし始めた。

そんな中でも俺は生きて、とうとう《ベテラン免疫細胞》の域たる4桁識別番号をもらって。

 

脾臓の内部。

食べた細菌の、ウイルス感染細胞の、寿命を迎えた血球達の味。

研修内容。

料理の仕方。

あやし方。

ナイフの握り方。

よりよい戦闘の術。

 

 

全部全部、積み重なって、《今の俺》がある。

 

そして、記憶の奥底に眠る、赤。

 

 

 

前の俺の最期の記憶は、赤い女と、一本のペン。

その女の識別番号(コードナンバー)は、Ae3803。

 

 

脾臓から心臓、肺、またまた心臓。ここでシフト表と駆除要請を確認し、腎臓へと向かう。

見知った道だ。何のことはない。

掲示板に貼りだされたガン細胞討伐依頼。また腎臓か。やばくないか?

とりあえず()()()()()だ。多少難敵でも、今の俺ならガン細胞で肩慣らしできるだろう。

慣れ親しんだナイフのグリップを確認して、申請用紙に必要事項を記入しようとして……

 

あれ。ヤバい。

また、ペンをなくした。

とりあえず目についた赤い長髪を垂らす女に声を掛ける。

ちらりと腕章を確認。十字に「赤血球」。

 

淡い期待を寄せながら、俺はその一言を口にした。

 

 

 

「ペン、貸してくれ。」

 

 

相手の赤血球は、横目で俺の頭――――正確には帽子の識別番号を見た。

 

 

俺は、《彼》であり《彼》でない。

 

1116の番号を持つあいつは前の俺だ。

でも、1117である俺自身に、少しでも1116の面影が残っているのかもしれない。

そんなことを思ったのは、彼女が俺の中に俺として内包されている誰か(1116番)を見ていたと感じたからかもしれない。

 

 

それが、俺と彼女の再会。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――繰り返す。

 

いつの間にか最年長になった俺は、回想していた。

 

 

 

 

――――繰り返す。

 

あの出会いから、二重螺旋の如く巡り合った俺と彼女のこと。

 

 

 

 

――――繰り返す。

 

何度も経験した大きな戦いのこと。

 

 

 

 

――――今は。

 

これまでにないほど破壊されたセカイで、一人佇んでいた。

 

 

 

 

間もなくセカイは終わる。

肺も心臓も弱々しくなる。

俺たちはセカイと命運を共にする者。

セカイの終末は、俺という一個体の消失でもある。

 

 

最後に、願うならば。

来世でも、あの赤と。

 

 

 

一巡してまた1116となった11116番目の俺は、そう願いながら、終焉を迎えた大地に身体を横たえた。

 

 

 

 

 

――――繰り返す。

 

 

――――何度も。


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