特別だからって世界を救う義務は存在しない。 作:霧ケ峰リョク
ちょっとハーメルンで投稿して無さすぎるので…………
ただ今はちょっとオリジナルの方で頭を割きすぎているという………。
プロローグ
―――――特別だからって世界を救う義務は存在しない。
例えば未来を知っていて一国を亡ぼすような災害が来ると言う事を分かっていたとしよう。
どうやってそれを伝えると言うのだろうか、そしてどうやって救うと言うのだろうか?
結論を語ると絶対に不可能だ。どれだけ声高々に叫んでもそれを誰が信じると言うのだ。
仮にそれを信じてくれたとして、全ての人間を救う方法なんてどうやって考えれば良いのだろうか。
と、まぁ長々と語ったわけだが自分が言いたい事はただ一つ。
「主人公に憑依したからって原作通りにやらなくて良いよね。てか逃げる」
これ一つに尽きるのである。
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気が付いた時、自分は『家庭教師ヒットマンREBORN!』の主人公『沢田綱吉』に転生憑依していた。
その事実に気が付いた時、自身はかなり絶望した。
如何して絶望したのか、その理由がこの物語のストーリーを知っているからである。
何をやってもダメダメな劣等生である主人公、沢田綱吉のもとに羽の無い天使と言う名の殺し屋兼最強の殺し屋であるリボーンが家庭教師としてやって来る。
リボーンの手によって毎日が波乱万丈な日々に変化していく。自身の命を狙いに来たが改心した右腕、努力をした結果怪我をしてしまい自暴自棄になった親友、それ以外にもはた迷惑ながらも頼りになる仲間達が出来るのだ。
そして組織の後継者争いや世界の滅亡に立ち向かっていくのだ。
かなり捻くれたものの見方をして視れば沢田綱吉とその仲間達の出会いはリボーンが仕組んだからなのだが、それでも彼にとっては失いたくない大切な至高の宝石に他ならない。
実際、辛い事だらけでも彼が頑張って手に入れ、そう思ったからこそ彼はそれを誇っている。
だからこそ普段は何をやってもダメダメな少年は拳を振るって立ち上がり、折れそうになっても勝つことが出来たのだ。
確かに彼はダメツナなのかもしれない。だがそれ以上に彼は勇気のある少年だった。
しかし、だがしかし、前世がただの一般人な自分が彼に転生憑依したところで何の意味も無いのである。
何? 沢田綱吉も最初は一般人どころか劣等生だった?
―――――知らんな。
世の中には劣等生と名乗っておきながら滅茶苦茶頭が良い奴だって居るのだ。
そして、沢田綱吉は劣等生だからこそ世界を救うことが出来たのだ。
自分のような人間に彼と同じことが出来ると思わないし、出来るわけが無いのだ。
ならばどうするべきなのか、そう聞かれれば答えは一つ。
原作に関わらず平穏に過ごすしかないのである。
とは言え、沢田綱吉は基本的に巻き込まれ系の主人公だ。
しかも巻き込んで来るのは最強の
当然自分一人が通用するような相手なわけが無い。
しかし、自分はマフィアのボスとかになりたくないし、原作通り進みたくはないのだ。
だが普通に生きていたら間違いなく原作に関わることになってしまう。
故に平穏な生活は絶対に手に入らないのだ。
それでも、原作に関わるという悲惨な結末だけは絶対に嫌なのである。
改めて考えると本当に酷い話である。
そして何よりも自分一人じゃ絶対に逃げられない。
だったら仲間を手に入れれば良いじゃないか、と言われても沢田綱吉の仲間は基本的に一癖二癖あるような連中ばかりだ。
しかも癖が強ければ強い程に優秀だというのがまた泣けてくる話である。
「でも、やらないと駄目だよな」
心の中で決意を固めながら最低でも自分の味方につける存在を決め、準備に取り掛かる。
期間は原作開始前まで、
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長かった、全ての準備が終わるまで本当に長かった。
父親に怪しまれないように仕事でイタリアに行ってから準備を始め、約二年程度の短い期間の中で地獄のようなスケジュールをこなしたのだから。
大空のリングを手に入れる、もしくは作成すること。死ぬ気の炎を使えるようになること。武器を手に入れること。信頼でき必要な能力を持つ味方を此方側に引き入れること。
本当、原作主人公はよく短期間であれ程強くなれたものだ。
まぁ彼の場合は強くならなければ皆死ぬしか無かったわけだから死に物狂いでそうならないといけないのだが。
「ボス。どうしたの?」
「ああうん。何でも無いよ、凪」
ここまでの苦労を思い返して感慨に耽っていると味方にした少女、凪が心配そうな表情をしていた。
すぐに平静を装って返事を返す。
凪、原作においてクローム髑髏と名乗った彼女は術師という稀有な才能を有した存在である。
彼女を仲間に引き込むことが出来たのは本当に良かった、そう心から安堵する。
「でも良かったの? 俺と一緒に行くという事は多分家には二度と帰ることは出来ないよ。それでも俺と一緒に行く――――」
念の為に最後の確認をしておこう。
そんな事を考えながら凪に問い掛けようとして、その前に彼女は言葉を告げた。
「構わない。私はボスの身を護る為の牙であり盾でもある。それに私の家族はボスだけ、あれは家族じゃない」
「…………そっか」
何とも頼もしい話じゃないか、ちょっと背筋がゾッとするような嫌な感覚があるものの気のせいだと思う。
気のせいでなくてもそれは自分自身の緊張感から来る勘違いである。
「さて、それじゃあ目指すは目的地はアメリカ合衆国のラスベガスだ」
「分かった」
頷く凪を連れて飛行機の搭乗口に向かう。
その道中、黄色いおしゃぶりを付けた黒スーツの赤ん坊を視界に収めたが無視することにした。
凪の幻術に加えて偶然手に入れたレア度5星の
如何に最強のアルコバレーノたるリボーンでも意識していないと強化された幻覚は見抜けないらしい。
まあ流石にこんな所で幻覚を使う奴が居るなんて思うわけが無いか。
「さらば日本、さらば並盛、さらばマフィア生活!」
こうして今生の俺は家出に成功したのだった。
面倒ごと、辛い事に巻き込まれると最初から知っていて態々されるがままというのは愚かな事である。
なので二度目の人生は独学とは言え必死に鍛えた自身の能力を駆使し、楽して生きて行こうと思う。
可愛い女の子も居るし、文句は無い。
さぁ、平穏な生活の始まりだ!
なお、折角手に入れたこの平穏な生活もたった一週間で崩壊する事を、この時の自分はまだ知らなかった。