特別だからって世界を救う義務は存在しない。   作:霧ケ峰リョク

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恐らく今年最後になるだろう投稿です。
一寸今年の後半は忙し過ぎました。マジすみません。


逃亡生活その10

スカルはマフィア界、否、文字通り人類最強の7人の赤ん坊(アルコバレーノ)である。

最も彼自身の実力は下から数えた方が早く、単純な戦闘力は決して高くはない。だがスカルにはその高くない戦闘力を補って余りある特異過ぎる能力を有していた。

 

その能力こそアンデッドボディ。

 

どのような大きな怪我や損傷を負ったとしても死ぬ事が無い。

腹を刺されようが、臓物を引きずり出されようが、常人であるならば10回は軽く即死出来る程の酷い損壊をしていても痛いだけで済む。スカルが、ただのスタントマンでしかなかった彼がアルコバレーノにされたのはこの不死性が理由だった。

だからこそ、そのような能力を持っていたが故に何度も修羅場をくぐって来た彼だからこそ理解してしまった。

 

――――目の前で自らの相棒であるタコの足を斬り落としたこの少年と戦えば間違いなく死ぬということを。

 

「な、何だお前は…………!?」

 

歩み寄って来る綱吉の姿を見て、スカルは声を絞り出す。

まるで自分の事を、精神的にも身体的にも見透かしているかのような目で此方を見ている少年を見て、足が竦んでしまう。

 

「く、くそ! タコ! あのガキをぶちのめせ!!」

 

その事実を払拭しようとスカルは綱吉を倒そうと己の相棒であるタコに命令を出す。

しかし、タコがスカルの命令を聞く事は無かった。

 

「おいどうしたんだタコ!? なっ!?」

 

一向に動こうとしないタコに腹を立てたスカルは自分の足下に居るタコに視線を向ける。

そして理解する。身体の動きに合わせて動く程、己の命令に忠実な相棒が何故動かなかったのかを。

 

「か、身体が石になっているだとぅ!!?」

 

スカルは石化しているタコの姿を見てスカルは驚愕の声を上げる。

綱吉の手によって斬り落とされた個所から徐々に石に変化し始めており、既に身体の殆どが石になっていた。

 

「な、何故だ!! 一体どうして――――」

「俺が石にしたからだよ」

 

相棒が石化しているという事実に困惑するスカルの耳元で綱吉がその答えを囁く。

 

「ッ!!?」

「油断し過ぎだよ。アルコバレーノ・スカル」

 

自分の真後ろに綱吉が居た事にスカルは驚愕のあまり言葉を失う。

その様子を見て綱吉は呆れたような表情を浮かべ、右拳を振り上げる。

 

「それじゃあ、空の旅を楽しんで来い」

 

僅かに怒気を込めた言葉を呟くと同時に莫大な死ぬ気の炎が込められた拳がスカルに振り下ろされる。

強い、速い、そして何よりもやばい。

アンデッドボディを持っているスカルに対し物理攻撃は効果的ではあるものの命を奪うには及ばない。

だというのにスカルの直感はこの攻撃を受けたらやばいと告げていた。

受けてしまえば何か致命的なバグが発生してしまうような、そんな嫌な予感だった。

 

「ぐっ、アーマードマッスルボディ!!」

 

だが既に回避する事は不可能、そう判断したスカルは自らの必殺技を使って防ぐ事にした。

アルコバレーノには固有の能力とも言うべき必殺技が存在する。

スカルの場合は一時的に自らの肉体を強化(マッスル)することで防御力を高めるアーマードマッスルボディだった。その防御力はアルコバレーノの中でも折り紙付きで、仮に突破されたとしてもアンデッドボディがある。

そのせいで同じアルコバレーノ、特に晴れと雨にサンドバックにされる事も多いのだが、スカルは防御に関してだけは自信があった。

だからこそ、その防御が何の意味も無く易々と突破されるとは欠片すらも思っていなかったのだ。

 

「がっ、ぐはぁああああああああああああ!!!?」

 

死ぬ気の炎を一点に集中させた綱吉の拳がスカルの胴体に突き刺さる。

殴られた個所だけじゃない、内側からもまるで爆発したような衝撃が走る。

今まで感じた事もないような物凄い痛みで、アーマードマッスルボディが全く機能していない。

 

「あ、が…………」

 

スカルが、意識を失う最後の瞬間、ピキッと何かが罅割れる様な音を聞いた。

 

   +++

 

「おー、結構飛んだなぁ…………」

 

殴り抜いた拳でスカルの身体が流れ星の如く宙を舞う姿を見て、俺は思わずそう呟いた。

スカルの必殺技、アーマードマッスルボディ。その防御力は確かに侮れない。いや、心の底から称賛する程に素晴らしいものだった。

恐らく普通にやったところであの防御力を突破するのは不可能だろう。

だから普通じゃない方法であの防御を突破した。

鎧のように身に纏った炎を更に強めて殴り、相手の体内に浸透させた上で外部だけでなく内部も破壊する。

元々この技は武装色の覇気を模倣して作った技だ。

覇気ではなく死ぬ気の炎な為、上手くいくかは分からなかった。

だがアルコバレーノの中で最も防御に特化したスカルを打ち破った以上、成功したと言っても過言ではないだろう。

ただちょっと無駄が多すぎる気がしなくもないが。

 

「まぁ、大丈夫か」

 

恐らく後何回か練習すればもう少し制御できるようにもなるだろう。

ただやっぱりと言うべきか炎の消耗が激しすぎる。弾く力も結構使うが、浸透して破壊する力に関してはそれ以上に使う。

ぶっちゃけた話、ここまで炎を消耗するなら他の技で代用した方が良いかもしれない。とはいえ、結局のところ己の力量不足が最たる原因である事に違いは無い。

全身の炎を一点集中すれば話は違うのかもしれないが。

そんな事を考えながら、主人が流れ星の如く飛んでいった方向に走り出した石化が治ったタコの後ろ姿を眺めていると耳に聞き覚えのある声が聞こえた。

 

「ボスっ!」

「10代目!!」

 

凪と獄寺君の声に思考を中断して二人に視線を向ける。

 

「二人とも、終わったよ――――」

 

幻覚で隠れていたのは知ってたけど無事で良かった。

戦闘もマフィアランド側の勝利で、カルカッサファミリーの連中は一人残らず捕らえられている。

誰がどう見ても俺達の完勝だと言うだろう。

それにしてもスカルの身体を見てみたけど、あれ本当に人間なのだろうか。

はっきり言って人間の構造をしていない。

もしかしてあれがアルコバレーノの呪いというやつなのだろうか。

そう考えながら俺は二人の所へ歩み寄ろうとして、

 

「やはりパシリじゃ勝てねぇか」

 

背筋に寒気を覚えるような、とてつもなく嫌な声を耳にした。

 

「――――ッ!!?」

「後一つだけ言っておく。誰がタレ眉だ」

 

声が聞こえた瞬間、急いでその場から離れようとする。

だがそれよりも先に声の主が俺の右頬に小さい足からは考えられないような、化け物染みた脚力でキックを喰らう。

ミシリと身体が軋むよりも先に俺は蹴り飛ばされ、凍り付いていない海面に叩き付けられた。

 

「あ、ぐぅ…………」

 

死ぬ気を解除しなかった為、海面を凍らせて足場を作ることが出来たものの、あまりの衝撃に意識を失いそうになる。

今までに喰らった事がないような鋭い衝撃だった。

並盛最強の風紀委員長の一撃でもここまで強くは無いと思ってしまう程に強烈だった。

 

「っち。思ったより頑丈だな」

 

自分にその蹴りを喰らわせた本人は舌打ちをしながらも冷静に分析している。

その声は一度も聞いた事が無い、されど聞き覚えがあって、何処か懐かしく感じてしまうような響きだった。

一瞬、何とも言えない奇妙な感覚に浸りそうになるが声の主の姿を、自分に蹴りを叩き込んだ下手人の顔を目視して我に返る。

 

「『沢田綱吉』並盛中学一年生にして生徒会長。勉学、球技を除く運動では好成績を維持している等、まぁ誰が見ても優等生だな」

 

声の主は淡々と俺の個人情報を口にする。

普段ならばこういった失礼な事に対しむっとするが、今はそんな気は欠片すら起きない。

それどころか寒気が止まらない。今すぐここから逃げろと警鐘を鳴らしている。

 

「好きなゲームは音楽ゲームと落ちゲーで好きな音楽は歌謡曲。趣味はアクセサリー作りと刀剣集めか。まぁ、あれだな。日本(ジャポネーゼ)でいうところの中二病ってやつだな。まぁ、お前の場合は完全に趣味だろうが」

 

コツコツと音を立てて凍った海面の上を歩くその音は、まるで死神の足音のようだった。

実際、似たようなものなのだろう。

 

「最初はつまらなそうな奴だとは思っていたが、ここまで俺をコケにしてくれた奴は初めてだ。本当に今までに無い体験だったぞ。腸が煮えくり返りそうになったのはこれで二度目だ」

 

怒りを滲ませながら声の主は、黄色のおしゃぶりを付けた赤ん坊は頭の上に被った帽子(ボルサリーノ)を上げて此方を睨み付ける。

その姿、その声、その佇まい。間違いなく彼は最強のアルコバレーノ、リボーンその人だった。

 

「さぁ、ようやく会えたぞ沢田綱吉。これからねっちょり教育してやるから覚悟しろ!!」

「ゲェ―――――!! タレ眉!!?」

「死ね」

「ギャァアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!?」

 

己に向かって放たれる弾丸を斬り捨てながら涙目になる。

出会いたくなかった、そもそもとしてこの逃亡生活を送ることになった原因の羽の無い天使と邂逅した瞬間だった。

 




ついに出会っちゃいました。
取り敢えず先にネタバレ、というか予告だけしておきます。
この逃亡生活は後2~3話で終了します。
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