特別だからって世界を救う義務は存在しない。   作:霧ケ峰リョク

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すみません、大分遅くなりました。
ちょっと友達が入院したりポケモン図鑑を完成させたり厳選したりマスターランクに到達したり2月の休みが減ったり、まぁ様々な事がありました。
取り敢えず続きどうぞ。


逃亡生活その12

「ほぉ――――?」

「中々やるな、コラ!」

「あのリボーン相手にあそこまでやるなんてね」

 

(フォン)、コロネロ、バイパーの三人は空中で爆破されたリボーンの姿を見て感心の言葉を口にする。

 

「でもリボーンも油断し過ぎなんじゃないの? いくら殺す気が無いからといって、やっぱり腕が鈍った」

「いや、それはありませんね」

 

バイパーの言葉を風は途中で遮る。

その事にバイパーは不快そうに顔を顰めながら風の方に視線を向ける。

 

「はぁ? 何言ってるの? その証拠にリボーンはいいようにやら」

「風の言う通りだぜコラ! あの沢田綱吉って奴、途中で気配が変わったぜ」

「ええ。明らかにさっきまでとは比べ物になりません」

 

同調する風とコロネロの二人にバイパーは顔を顰める。

術師であるバイパーの純粋な実力はリボーンを含めた三人に大きく劣る。

とはいえ、元々幻覚や超能力を主に使用する為、そこまで戦闘力を重要視していない。

だが風は幻覚の事を見下しており、何かと身体を鍛えるように言ってくる為、率直に言ってバイパーは風の事が嫌いだった。

最もそれはバイパーの被害妄想に過ぎないのだが。

 

「だが何でリボーンはあの攻撃を回避出来なかったんだ? あいつは認めたく無いが天才の筈だぞコラ」

「リボーンは殺気を弄ぶ天才ですからね。なのに察知する事が出来なかった。少し気になりますね」

 

そんなバイパーの僻みに全く気が付いていない風はコロネロと会話を続ける。

 

「ふむ、リボーンに頼んで私も家庭教師やりましょうかね?」

「リボーンは甘いところがあるからな。あいつの生意気すぎる反抗心を圧し折るのに苦労しそうだし、俺も奴を鍛えてみたいと思ったぜコラ」

「…………興味は無いけど、同情だけはしておくよ」

 

楽しそうにとんでもない事を言い合っているアルコバレーノの中でも武闘派な二人。

会話を耳にしたバイパーは僅かばかりの同情を綱吉に向ける。

その視線には綱吉が勝利して逃げおおせるという考えは一欠けらも存在していなかった。

 

   +++

 

やったか、なんて言葉を言えばそれは間違いなくフラグになる。

だからといって言わなければフラグにならないかと言われればそういうわけでも無く、現実はいつだって無情なものだ。

 

「ッ、やっぱり駄目か…………!!」

 

今の攻撃で倒せていないと理解した俺はすぐさま攻撃を叩き込もうとする。

 

「カオスショット」

 

が、それよりも先に煙の中から黄色く輝く銃弾のシャワーが降り注ぐ。

相殺は不可能、この技よりも威力の高い技を持っているとはいえ、発動までに時間がかかる上にこれだけの量を消し飛ばすのは不可能。

かといって防ぐことも難しい。可能か不可能かで言われたら間違いなく可能だ。

だけどそれをやったら多分ダメだと超直感が告げている。

ならば答えは一つ、というか逃げるという選択肢しか存在しない。

 

「っち………!」

 

両手の炎で推進しつつ霹靂一閃の応用で移動し、銃弾のシャワーの射程圏内から距離を取ろうとする。

それと同時にいくつもの銃弾が曲がり、進行方向に向かって落ちて来る。

とは言え、さっきの銃弾のシャワーに比べれば隙間が多い。

回避できそうなものは回避し、回避できないものは炎を鎧のように纏わせた左手で防ぐ。

 

「ぐっ! やっぱりダメか!」

 

だが左腕の防御はいとも容易く貫かれて、手を弾かれる。

一点集中の貫通力がある攻撃に炎の鎧で防ぐのは無理だったか。

痛みを発する左手に顔を顰め、残りの銃弾を回避する。

透明な世界は筋肉の動きとかは見れるけど銃弾の動きは見れないのが難点だ。

 

「流石に自動追尾ってわけじゃないか」

 

まぁ自動追尾じゃないからといって危なくないわけじゃないし、むしろリボーンが狙ってやってる分そっちの方が恐ろしい。

どちらにせよ回避して防ぐというのは変わらない。

 

「――――成る程な」

 

空中で爆破されたリボーンは被っていたボルサリーノを軽く叩いた後、近くの氷塊に着地する。

 

「さっきの高速移動と両手の炎を使った推進力を掛け合わせる事で最初からトップスピードで動けるわけか」

「何で一目見ただけでそこまで分かるんだ」

 

本当に末恐ろしい奴である。

グローブによる推進力は確かに凄いが、徐々に上がる都合上どうしても初速が遅くなる。

その為、足運びと組み合わせて使うことで強引に助走をつけて使用していた。そうすれば遅い初速でも合わせる事で最初から早く動ける。

だけどここまであっさりと見破られるとは思わなかった。

 

「まぁ、別に分かっても倒せば良いだけだ」

「オレを倒せると思ってるのか?」

「最初から自分が負けることを考えているような奴が居るのか?」

「質問を質問で返すな。だがまぁ、確かにその通りだな」

 

リボーンはニヒルな笑みを浮かべると容赦なく銃をぶっ放す。

本当に容赦というものを母親の胎内に置いてきたような物騒な奴である。

正直な話、こっちの戦い方がバレた事に関しては問題は無い。

問題なのは透明な世界、それをリボーンが体得してしまう事だ。

リボーン程の実力者で天才ならば、ふとした拍子に至ってしまう事だってある。そうなったらただでさえ勝ち目の殆ど無い戦いだったのに、僅かな勝機すらも皆無になる。

落ち着いて、冷静になって戦え。相手の動きを、銃弾の軌道を理解しろ。

何も考えないで突っ込んで勝てる相手じゃない、よく考えて突っ込め――――!

 

「日暈の龍・頭舞い」

 

避けられる銃弾は回避し、当たると思った弾丸は刃で斬る。

この技、日の呼吸・陸ノ型『日暈の龍・頭舞い』は移動しながらの斬撃を繰り返す舞だ。

最もこの日の呼吸に関しては記憶で模倣し、超直感で使い方を直感しただけ。

多分だがオリジナルに比べれば精度はかなり落ちるだろう。それでも今の自分が使えるものには違いはない。

リボーンが撃った弾丸は七発。その内の四発を斬って、三発を回避する事に成功する。

 

「――――火車!」

「速いな」

 

リボーンに接近して斬撃を叩き込むもあっさりと避けられる。

だけど最初に攻撃した時に比べて一瞬反応が遅れていた。

 

「烈日紅鏡!!」

「それでいて隙も無い」

 

避けたリボーンを逃さないように最接近し、連撃を叩き込む。

透明な世界での攻撃は確かに効いている。今までの努力は決して無駄じゃなかった。

見様見真似で模倣し、超直感を酷使させる事で体得したヒノカミ神楽、もとい日の呼吸もリボーンに通じている。

 

「っく…………!」

 

リボーンも回避するのが難しくなってきたせいか、苦しい声音が聞こえる。

この調子で攻め続ければ勝ち目が少しは見える。

もっと、もっとだ。もっと攻め続けて反撃の機会を与えないように――――!

 

「円舞!!」

 

振り上げた刀を反転させ、峰打ちになるようにリボーンに振り下ろす。

取った――――そう確信した瞬間だった。

手に持っていた刀に衝撃が走るとともにバキンという音が鳴り、振るった刃がリボーンに当たることなく空ぶったのは。

 

「…………はっ?」

 

刀身が根元から砕け散った刀を見て思わず呆気に取られてしまう。

 

「惜しかったな。だが――――」

 

リボーンはそう言うと銃口を此方に向ける。

 

「これで終わりだ。カオスショット!」

 

銃口から無数に枝分かれする光弾が放たれる。

晴れ渡る空に浮かぶ太陽を思わせる黄色の炎の弾丸は容赦なく俺に襲い掛かった。

凄まじい威力の攻撃が直撃した瞬間、意識が闇に飲み込まれて俺の身体は海に落下する。

 

「ぼ、ボス――――!!?」

 

意識を失うその瞬間、凪の悲鳴が聞こえた気がした。

 

   +++

 

「なぁ、先輩に雲雀。ツナは勝てると思うか?」

「勝つ!」

 

山本武の問いに笹川了平は凛とした表情で答える。

 

「沢田は俺が認めた男だ。どんな状況になっても決して諦めない。出来ればボクシング部に入ってもらいたかったのだが」

「まぁツナは生徒会長だからな。雲雀はどう思ってるんだ?」

「…………それ、言う必要ある?」

 

雲雀恭弥はむすっとした、如何にも不機嫌ですと言わんばかりに顔を顰める。

 

「彼は小動物だ。小動物には小動物なりの戦い方があるし、だからこそしぶとい。その上、感染症の媒介になるような周囲を巻き込むタイプだから尚更質が悪い」

「はは。ひでー事を言うのな。ツナが聞いてたら怒りそうだ」

「そう言うきみはどう思ってるんだい。山本武」

「そんなの決まってるぜ」

 

朗らかな笑みを浮かべながら山本武は告げる。

 

「ツナは勝つ。だってすげーからな」


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