特別だからって世界を救う義務は存在しない。   作:霧ケ峰リョク

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ようやく新しいパソコンを買えました。
そのおかげでお金が一気に吹っ飛んだよ…………。

第二章は中々進みませんがその内仲間たちとの合流も描きたい。
大分先になるとは思いますが。


労働生活その11

何故、どうして、Why。

心の内でそんな言葉しか思い浮かばなくなるくらいに、アリアさんの言葉に俺は非常に困惑していた。

理解出来ない話ではない。ユニはジッリョネロファミリーのボスであるアリアの娘にして次期大空のアルコバレーノだ。だが同時に彼女自身はまだ年端もいかない少女でもある。

本来ならば学校に通っていてもおかしくはない。

だからアリアさんの言うことも理解できないわけではないのだ。

だがそれをどうして自分に打ち明けたのか、どうして自分も一緒に行く必要があるのか。

対外的には護衛であるのだから付き従うのは当然だが、彼女の言葉を聞く限り他にも意味があるという感じがする。

 

「何で急に学校に通うことになったのかを説明すると、この前の抗争が切っ掛けね」

「…………この前の抗争ですか」

「あの時の一件でユニはマフィア界に関わる事になったのだけれど…………それが切っ掛けで普通の学校に行けなくなったのよ。それでマフィア関係の学校に通うことになったのよ」

 

溜め息混じりにアリアさんはそう呟く。

その言葉を聞いた俺は疑問を抱き思わず顎に手を当てる。

ボンゴレⅠ世の子孫で、父親がマフィア関係者の俺はそう言った事は無かったが。

 

「貴方の場合は貴方のお父さんが守っていたからね」

「父さんが、ですか?」

「ええ。チヨヒメちゃん、今は二人っきりだから綱吉君と呼ぶけど…………貴方の父親、沢田家光は日本にマフィア関係者が行かないようにしていたみたいよ。貴方や貴方のお母さんを守るために。それが無かったらきっと貴方も今頃はマフィア関係の学校に通っていたと思うわ」

 

アリアさんが告げた答えに俺は何とも言えない表情を浮かべる。

実際、アリアさんが言った通り俺が今まで平和な日本で暮らすことが出来ていたのは父さんのおかげなのだろう。

それは分かっている。俺の目から見たらちゃらんぽらんな人かもしれないが、母さんから見た父さんは一家の大黒柱で、凪から見たら頼れる養父で、仲間の人達から見たら自分達を引っ張るリーダーだ。

きっと俺の知らないところで物凄く頑張っているのだって分かる。

 

――――だけど、裏社会のような場所じゃなく表社会で頑張ってほしかったと思ってしまうのは俺の我が儘なのだろうか?

 

内心、父親に対し複雑な思いを隠せないでいるとアリアさんは小さく「綱吉君も色々と思うところがあるのは分かるけど」と呟く。

 

「貴方の場合ボンゴレⅠ世(プリーモ)唯一の血統だからマフィア界に関わらざるをえない立場なのよ。ボンゴレ開祖の血統だし」

「あ、それは確かに」

「私は当事者じゃないから詳しくは知らないし、もしかしたら私の勝手な憶測なだけなのかもしれない。だけど、貴方に裏社会に関わらせなかったのは平和な世界で生きていてほしかったからじゃないかしら」

 

アリアさんの言葉を聞いて俺の中で疑問に思っていた事が腑に落ちた。

俺がマフィアのボスの候補に選ばれたのはあくまで他の三人の候補が命を落としたからで、あくまで補欠の補欠扱いだった。恐らく、というか他の三人が生きていたならほぼ間違いなく俺はマフィアのボス候補にならなかった筈だ。

だから父さんは家から離れて外国に行き、9代目は一度俺の死ぬ気の炎を封印したんだろう。

 

――――尤も、他の候補者三人が全滅してしまった為にその努力は無駄なものになってしまったが。

 

まぁ、白いのが全てを台無しにするから二人の思惑は最初から叶う事は無かったのだろうし、あり得たかもしれないIFの事を考えるのは止そう。

仮にアリアさんの言った通り、俺の考えの通りだったとしてもだ。

父さんは父さんでもうちょっと俺に言ってほしかったし、9代目は9代目で俺に封印なんかをかけないでほしかった。特に9代目がかけた封印のせいで死ぬ気の炎を使えるようになるまで苦労したし、基礎能力を引き上げるのにかなり大変だったのだから。

と、いうか原作の沢田綱吉がダメツナと呼ばれるようになったのって間違いなくあの封印のせいだ。

普通に生きるのには必要ないし、そもそも下手したらやばいことになりかねない危険な力であるというのは分かる。

だがもう少し封印を緩めても良かったのではないだろうか。

 

「話が逸れちゃったから戻すけど、大丈夫かしら?」

「あ、はい。大丈夫です」

 

一人考えているとアリアさんは話の続きを語り始める。

 

「まぁ、マフィア関係者が通う学校っていうように様々なファミリーに所属する人間の子供たちが在籍しているのよ。比較的似通ったファミリーの子供が集まるものなのだけれど、敵対してはいなくても仲が良いとは言えないファミリーも在籍しているのよ」

「そういうものなんですか」

「そういうものなのよ。それで、貴方に護衛として行ってほしいのよ」

「はぁ…………まぁ、それは分かるんですけど…………護衛といっても常に傍に居れないんじゃないですか? ユニも俺が常に傍に居たら息が詰まると思うし」

 

教室内で常に見張られているというのはあまり好ましいものじゃない。

日本で例えるなら毎日が授業参観のようなものだ。俺だったら間違いなく息が詰まるだろう。

優しく温厚なユニでも流石に怒るだろうし。

と、なると別の場所から離れて監視でもするのだろうか。

そう考えているとアリアさんはにっこりと笑みを浮かべる。

 

「大丈夫よ。貴方もその学校に通うのだし」

「…………え?」

 

彼女の口から飛び出た言葉に思わず放心する。

 

「綱吉君もまだ学生の身なんだし、学校に通わなくちゃいけないわ。一応保護者である私としてはそこは見過ごせないしね」

「え、え、えっ!? ちょ、ちょっと待って!!」

「何かしら?」

「ユニは小学生で俺は中学生ですよ! 一緒に学校に通ったらユニの事を守れないですよ!!」

 

イタリアの学校がどういうシステムなのかは詳しく知らないが、もし通うことになったら一緒には居られないだろう。

それにマフィア関係者の学校だなんて間違いなく厄介なことが待ち受けているに決まっている。

分かっていて地雷原の中に首を突っ込む程、俺は愚かじゃない。

だから何としてでもこの頼み事は拒否しなければならない。そう考えた俺は脳をフル回転させて適当な言い訳を考えようとして、

 

「大丈夫。ユニは飛び級してるから。綱吉君と同じクラスに通えるわ」

 

口にする前にアリアさんの手によって逃げ道を絶たれてしまった。

 

「まぁ、今すぐ通えっていうわけじゃないわ。もう少し余裕が出来てからね。それじゃあ、その時が来たらお願いね綱吉君」

「…………ハイ。カシコマリマシタ」

 

最早逃げることは不可能であると悟った俺は全てを諦め、アリアさんの自室を後にした。

 

   +++

 

「おいボス。チヨヒメの奴、燃え尽きたような感じであんたの部屋から出てきたんだが…………何かあったのか?」

「ええ。ちょっと頼み事をしたわ」

 

室内に入って来たγにアリアは短く言葉を返した。

するとγは少しだけ顔を顰めて、諭すように告げる。

 

「チヨヒメ…………ボンゴレ坊主には色々と助けられたのは事実だ。だがあいつはあくまでボンゴレの人間だ。頼み事があるのなら俺達に言ってもらいたいんだが」

「ごめんなさいね。でも、彼にしか頼めなかった事なのよ」

 

γの言うことも尤もだ。

しかし、ジッリョネロファミリーには条件が合う人間が居なかった。

唯一条件が合ったのは外部の客人である沢田綱吉だけだったのである。

 

「それに、これは彼にとって良い経験になるからよ。ユニにとってもだけど」

 

アリアの言葉を聞いたγは扉の方に視線を向ける。

 

「そうかねぇ…………俺の目から見たらボンゴレ坊主は十分だと思うんだが。まぁ、マフィアに不向きなぐらいに甘すぎるところはあるが」

「あら、貴方は彼の事を認めているのね」

「認めているさ。マフィアのボスの跡を継ぎたくないって我が儘なところはあるが、この業界じゃ珍しい話でも無いしな。だが奴は傷ついていても命をかけて戦うことが出来る強い奴だ。その覚悟を俺は尊敬するぜ」

 

γの言葉を聞いてアリアは思わず笑いを溢す。

あのγがこういう事を言うなんて、口ではかなりぶっきらぼうではあるが本当に気に入っているのだと。

実際、彼は優しい子だ。

かなりの問題児ではあるものの人の痛みを理解出来る人間で、酷いと思った事を許すことが出来ない人間だ。

 

「でも、ちょっと張り詰め過ぎな気もするけどね」

「そうか? 俺から見たらかなり緩いと思うが」

 

自身の言葉に疑問を抱くγを横目に、アリアは扉の方に視線を向ける。

 

「…………本当にそうかしら? 私には笑顔の仮面を被って空元気を振る舞っているようにしか見えないのだけど」

「ん? 何か言ったか」

「いいえ。さて、私も仕事を頑張らなくちゃね」

 

訝し気に此方に視線を向けるγから目を逸らし、アリアはデスクの上にある書類の山に視線を向けた。

 

「…………γ、少し手伝ってくれないかしら?」

「はいはい。分かったからそんな顔をしないでくれ」

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