特別だからって世界を救う義務は存在しない。 作:霧ケ峰リョク
ただこの章始まってからかなりグダグダしてるのでそろそろ話を進めたかったんです。
そしてそろそろユニが本当の意味で共犯者になります。
はてさて、どうしたものか。
強烈な一撃を食らったお腹を抑えつつ立ち上がる。
幸いな事にダメージはそこまで深刻なものではない。決して大きくないとは言えないようなダメージではあったものの、食らうと分かっていれば耐える事は出来る。防御姿勢を取る事が出来なかった為、かなりの苦痛を味わう事になってはいるがまだ問題ではない。
「ぜぇ、お兄さん…………いつの間にオーバーフローモードを…………いや、無意味な質問か」
そこまで口にして、それ以上先を呟くのを止める。
ああ、そういえばこの人常時死ぬ気だったな。だからオーバーフローモードを簡単に使う事が出来たんだろう。
そして本人はそれを上手く説明することも出来ない。
山本と同じく感覚肌の天才だ。ノリと根性でなんとなく出来たんだろう。
本当、なんて理不尽。獄寺君のように一から理論を立ててやっているわけじゃないけど、それなりに練習しなければ覚えれない俺とは違う。
「取り敢えず、オーバーフローモード解除」
だからといって負ける気はこれっぽっちも無いが。
オーバーフローモードを解いて超死ぬ気モードに戻り、改めて構える。
「むっ、諦めたのか?」
「それこそまさか。今のお兄さん相手にオーバーフローモードを使うのは自殺行為だと思ったからな」
訝し気にこっちを見やるお兄さんにそう言い放つ。
「お兄さんの方こそ、さっきのように行くとは思わない方が良い。さっきは油断してたし、慢心していた」
それに加えて病み上がりで身体は鈍っていたし、本調子に戻っていなかった。
「けど、今のお兄さんの一撃でやっと目が覚めた」
さっきの痛みで鈍っていた身体の方もようやく起き始めたらしい。
確かにここ最近激しい戦いとかしていなかったから鈍るのはしょうがないが、それでもダメージを受ける前には元の調子に戻って欲しかった。
とはいえ、過ぎた事を愚痴っていても意味は無い。
「悪いけど、お兄さんには俺の錆落としに付き合ってもらう。そして、絶対に俺が勝つ」
「そうか…………だが、極限に俺が勝つ!!」
オーバーフローモードは確かに脅威だ。
だけど弱点が無いわけではない。そしてその弱点をつくには超死ぬ気モードの方が良い。
心の中でそう思いながら接近して来たお兄さんを迎え撃った。
+++
戦いの場に到着したユニが見た攻撃は防戦一方に追い込まれている綱吉の姿だった。
猛攻と言う他無い拳の嵐。一発一発が建物を吹き飛ばす人間離れした威力を有するラッシュ。
死ぬ気の炎が無くてもそれなのだ。もしこれに死ぬ気の炎が加わったら目も当てられない事になるだろう。
そして今、ユニの目の前でそれが繰り広げられていた。
凄まじい威力を有する拳の連撃を綱吉は何とか回避している。
しかし、なんとか紙一重でかわしながらもその身体にはダメージが蓄積されている。
「っ、かわしてもダメージがあるなんて…………!」
「どうした沢田! 避けるだけでは俺に勝つ事は出来んぞ!!」
ラッシュの威力に顔を顰める綱吉に対し、了平は更に拳を振るう。
「
今までのラッシュとは違う威力が凝縮された一撃。
晴れの死ぬ気の炎が纏われたそれは砲弾の如く、距離の離れた木々をも薙ぎ倒す。
遠くにあるものでさえそれなのだ。
近くに居た綱吉の血が舞うのは当然の事だった。
「いっ…………たぁ…………!」
額から流れ出る血を拭いながら距離を取る綱吉。
それでも血が止まることは無く、肌を伝って地を濡らす。
「い、今のは危なかった。危うく気絶するところだった」
「直撃を避けておいてよく言う」
「ようやく見えるようになってきたからな」
息を荒くしながらも綱吉は了平に言い返す。
「しかし、だ。沢田貴様、本当に戦う気があるのか? 攻撃を仕掛けて来たのは最初だけで、後は防御するだけ…………成る程、そう言うことか」
了平は一人、納得した様子で呟く。
「沢田、貴様時間切れを狙っているな」
「…………バレたか」
「防御と回避のみに専念していれば流石に気が付く。オーバーフローは限界以上の力を無理矢理引き出している力だ。自分の力を十倍にする代償として相応の負担と消費がある」
「正確には炎を短い時間で全て使い切るんだが」
綱吉と了平の会話を茂みの中から聞いていたユニは思わず呆気に取られる。
死ぬ気の炎は生命力だ。使い過ぎれば命の危機にも繋がり、最悪命を落としてしまう。
それでも基本的にそこまでのダメージを受ける事は無い。
炎を使い切る前に疲労で弱くなるからだ。それこそ、無理矢理炎を引き出させない限りはそんな事にはならないだろう。
だが、あのオーバーフローという力は炎を無理矢理引き摺り出している。
生存を考えていない、命知らずの自爆技。
「でも、だからこそオーバーフローには時間稼ぎが尤も有効だ。既に四分は経過している。貴方の炎が尽きるのが早いか、俺が倒れるのが早いかの勝負だ」
「そうか…………」
残り時間一分の勝負。そう告げた綱吉に対し、了平は何かを考える素振りを見せる。
「唐突だが俺は沢田のような呼吸が使えん」
「まぁ、お兄さんには必要無いからな」
「しかし、だからといって全く使ってないわけではないのだ」
そう言うと了平は勢い良く息を吸い込み始めた。
遠くに居るユニの耳にも聞こえる呼吸音は、綱吉が使っているものとは違っている。いや、そもそもとして種類が違った。
その呼吸を始めた瞬間、了平の身体から光が迸った。
電気のようにも見えるその光は地面に触れた瞬間、草花が生え、水に触れると波紋が発生した。
「んなっ!? それは」
「波紋。沢田、お前が考案しながらも会得出来なかった呼吸法だ!!」
了平の身体から死ぬ気の炎が勢い良く燃え上がる。
「この呼吸があればオーバーフローで燃え尽きる事はない! つまり、俺は常に極限で戦う事が出来る!!」
+++
なんじゃそりゃ、そんなのありか。
目の前で轟々と燃え上がるお兄さんの姿を見て、思わず目を見開く。
超直感で察するに嘘は言っていない。いや、見ただけで説得力がある。
今のお兄さんは生命力に満ち溢れている。それこそ燃え尽きる事がないわけではないが、軽く一時間以上は維持出来る。
そもそもとして波紋法は全集中とは違い、生命力を生み出す呼吸法だ。
身体能力を強化する事も可能だがその本質は生命力の活性にある。
全集中と死ぬ気の相性が良いように、波紋も死ぬ気の炎との相性は良い。
死ぬ気の炎で消費した生命力を波紋で補填する事が出来るのだから、全集中以上に良いのかもしれない。
「…………オーバーフロー」
再びオーバーフローモードに入り、投げ捨てた刀を拾う。
「刀は使わないのではなかったのか?」
「そのつもりだったんですけどね」
今のお兄さん相手に手加減等出来る余裕は無い。
あまり傷はつけたくなかったけど、本気で行くしかない。
「炎破斬!!」
「
炎を纏わせた刀と光を放つ拳がぶつかり合い、衝撃が森の木々を揺らす。
何という威力。下手な受け方をしたらこっちの刀が圧し折れそうだ。
それに加えて波紋が流れてこっちの腕が痺れる。
全集中の肉体操作と死ぬ気の力で握力を強化しなければすっぽ抜けてしまいそうだ。
そして長時間の戦闘は不可能――――短期決戦で勝負を決めるしかない。
「極限ラッシュ!!」
勢いと威力が増したお兄さんの極限ラッシュを刀で受け流し、回避し、それでも駄目なら最低限のダメージで済むように受け止める。
日の呼吸の技はダメだ。今のお兄さんを確実に倒すには峰打ちでは無理、かといって刃の方で戦えば殺してしまいかねない。
ならどうするべきか――――その答えは既に出ている。
殺さないように注意しながら手加減せずに倒すだけの話だ。
そして、俺はその技を既に持っている。
「氷焔世界――――」
炎をノッキングさせて氷に変化、刀身に冷気を纏わせて周囲を凍てつかせる刃を地面に突き刺す。
「イクスノヴァ!!」
瞬間、刀を突き刺した個所を中心として半径20メートル以内の全てが凍結した。
草や木や花は勿論、池やそこに住んでいる魚、そして攻撃をしていたお兄さんも凍り付いている。
この勝負の勝敗は、誰が見ても俺の勝利だった。
「あー、しんどい」
オーバーフローモード、及び超死ぬ気モードを解除して一息をつく。
零地点突破は武器が無ければ使う事は出来ない。特にグローブが無ければ使えない死ぬ気の炎を吸収し力に変える改の方を使う事が出来ればもっと早く決着はついていただろう。
「…………それにしても」
お兄さん、ちょっと見ない間にかなり強くなってるなぁ。
これは多分、他の皆も同じように強くなっている筈。いや、間違いなく強くなってる。
一対一だから勝てたけど、もし二人以上の人数で戦いに来られたら負けるかもしれない。
せめてグローブがあれば話は別かもしれないけど、無いものを強請っても意味が無い。
「修行、する必要があるよなぁ」
それも負担の大きいオーバーフローの代わりになるような技が必要だ。
基礎スペックを引き上げる事も当然必要だとは思うけど、そんな簡単に上げられるものでもないのだから。
「前途多難だなぁ」
疲労から身を投げ出して草原の上で横になる。
「終わったみたいですね」
そうしているとユニが姿を現した。
「ユニ? 一体どうして…………」
「途中からですけど見ていたんですよ」
「…………全く気が付かなかった」
どうやら本当に自分は鈍っていたらしい。
普段なら気配に気が付くことが出来た筈なのに。
「まぁ、それは別に良いんですよ。それよりも沢田さんには色々と聞きたいことがあるんです」
内心落ち込んでいるとユニはしゃがみ込んで俺に質問をしてくる。
「聞きたい事? 答えられるものなら答えるけど」
「沢田さんが家出した理由を教えてほしいんですよ」
「…………それならこの前も言った筈だけど」
「確かにそれも本当の事なんでしょう。だけど、まだ言っていない事がありますよね」
そう呟いた瞬間、ユニは俺の首元に包丁を突き付けた。
突然の蛮行、この心優しい少女がこんなことをするわけないと思っていた俺は驚愕のあまり目を見開く。
「さぁ、全部話してください沢田さん」
主人公は波紋を使えませんが、それ以外が波紋が使えないとは言っていません。
なので守護者は全員何かしらの他作品の技術を持っていたりします。