特別だからって世界を救う義務は存在しない。   作:霧ケ峰リョク

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はい、今回主人公の最終目標を全て明かしました。
割かしこれを明かすのはもっと後の方が良いかなって思ったんですが、このままだとユニちゃんが主人公と敵対しかねないのでこうしました。


労働生活その16

何となくではあるが予感はあった。

彼が「ボンゴレを継ぎたくない」と言って家出しているにも関わらず、裏社会に関わっていること。

そして彼が使う技が自分の身の事を全く考えていないこと。

行き当たりばったりなのは事実だろうし、そもそもとして予定通りに上手く事が運んでいないが彼は、沢田綱吉は明確な目的があって家出をしている。

 

「や、やだなぁ。そんなものを持ってたら危ないよ。ほら、早く下ろして」

「ええ、下ろしてあげます。沢田さんが私に隠している事、全部話してくれたなら」

「別に隠してることなんか」

「嘘です」

 

誤魔化そうとする綱吉の言葉をピシャリとユニは否定する。

そしてついさっきまで行われていた戦闘で賭けられていたものを、沢田綱吉が書いたノートを拾い、ページを開いて目を通そうとする。

 

「ちょっ、それ見ちゃダメ!!」

 

瞬間、綱吉が目を見開いて止めに入った。

オーバーフローモードとかいう自爆技や戦いのダメージのせいか、それとも包丁を突き付けられているせいかは分からないがあまり身動きは取れていないが。

 

「どうしてですか?」

「いや、それは…………あの、そう! それは俺の黒歴史なんだよ!」

「黒歴史?」

「日本の十四歳特有の中二病っていう病気でね、その…………自分の事を特別な人間だと思ったり、自分が格好良いと思った設定を書き連ねたりするんだよ」

「成る程、このノートに書かれているのはあくまでその黒歴史だと?」

「そんなんだよ。だから、その、見られると羞恥心が凄いからさ。今すぐ返してくれると嬉しいんだけど」

「嘘」

 

綱吉の必死の言い訳をユニは一蹴し、ノートを捲って中身に目を通す。

書かれている内容は日本語で、それも汚い文字ばかりだった。日本語が分かるユニでも読むことが不可能な程に汚かった。

恐らくわざと汚く書いているのだろう。

中には髑髏やら変な絵が書かれているのもあったが、途中で諦めたのか少ししか書いていない。

そして、何故かイタリア語で書かれているところもあった。

ユニは日本語の個所を読むことは出来ない、だがイタリア語の所だけは読むことが出来た。

 

『リングと出力の関係性』

『人体で死ぬ気の炎を灯せることが出来る人間でもリングを使うと出力や純度が上がるのは何故か?』

『仮説:リングとは補助輪でもあると同時に強化装置、及びフィルターでもある。人間の生命エネルギーをリングという名のフィルターを通すことで余計な物を取り除き、炎そのものの純度を上げる事が出来るからだと考えられる』

『ただしそれにも限界があり、人体の出力の方が上回るとリングが壊れるのだと考えられる。到達点に至った者が武器を使う事が出来ない理由と同様である』

『仮にその出力に耐えられる武器やリングがあるならば到達点に至っても道具が使用可能となる。到達点に至った者の肉体と武器を融合させたものか、人体から作り出した武器ならば破損する事は無いと考えられる』

『零地点突破、0からマイナスの状態に移行する奥義。ならば同様に到達点にも到達点突破という境地がある筈である』

『いずれにせよ今の自分では使えない為、到達点に至ったら検証する事とする』

 

『炎の特性』

『死ぬ気の炎は大空と大地の対の七属性、そして新しい夜の属性が存在する』

『大空の調和、霧の構築、嵐の分解、雨の鎮静、雲の増殖、晴の活性、雷の硬化』

『人間には複数の波動を持っている者も居るが、それを使えるレベルで持っている者はあまりいない』

『自分も大空七属性は一応持っているが、大空以外の波動は微弱すぎて使う事が殆ど出来ない』

『大空の調和は相手を石化したり、他の特性を無効化出来る』

『だがそれ以外にも失った肉体の部位を補ったり、体内の毒を無毒なものに変える事も可能』

『ただし肉体の損傷を直す際に肉体に負担がかかり、寿命を削るというデメリットがある』

『最も全集中の呼吸で痣が出ている為、寿命に関しては気にしないものとする』

『どうせ二十五歳以内に死ぬ命なのだから』

 

『トゥリニセッテ』

『計二十一個の特殊なリングとおしゃぶり、現在の世界を作り上げた世界創造の礎にして世界の生命を補正する装置』

『リングの中では最高峰であり、同時に大空の適応者に特殊な力を齎す』

『ただしその代償として適応者に何らかの代償を背負わせる。また、死ぬ気の炎の一部を維持に取られる』

『アルコバレーノのおしゃぶりはその最たるもので所有者を呪い、その死ぬ気の炎を奪い取る』

『ただし三種の中では唯一死者の蘇生や世界の改変等といった特殊な能力を使う事が出来る』

『そして他のと違って夜のおしゃぶりも存在する』

『アルコバレーノの寿命は他者からの炎の供給で死は回避可能、大空の短命を回避可能だろうか?』

『マーレリングは並行世界の自分と同期する能力がある』

『ただし能力を使い過ぎれば負担が大きくなっていく等、デメリットも強い』

『並行世界の物を持ってはこれない≠10年バズーカの存在からその仮説は否定される』

『同期している自分自身を持ってこれないという事なのだろうか?』

『ボンゴレリングは最も謎なリングである』

『継承を重きにおいているリングなのは分かるし、だからこそ死ぬ気の炎や超直感が引き継がれるのも理解できる』

『だが、それにしては他のリングに比べてデメリットや力が弱い気がする』

『分割できる構造にしたのが原因か、それとも自分が知らないだけで何かしらのデメリットがあるとしたら』

『マーレリングが無限に広がる並行世界を司るように、ボンゴレリングが縦、上から下の一方通行だけでなく下から上も司るのであるならば』

『ボンゴレリングの継承が前世や先任の記憶も継承するのだとしたら』

『そうすれば俺がこうしてここに居る事のある程度の説明がつく』

『ここまで書き連ねてみたが流石にそれは無い、所詮ボンゴレリングは継承をしていく悪霊憑きのリングである』

 

「…………これは」

 

書かれている内容を見てユニは言葉を失う。

それは自分が知らない知識だった。それは自分が知っている知識でもあった。

中には一笑に付す考察のようなものもあった。考察にすらなっていないようなものもあった。

確かに彼が言うように誰かに見られたら恥ずかしいものに見えるかもしれない。

だがこれは知っている人間であるならばそれは恥ずかしいものなんかじゃなかった。

そして、最後のページに書かれているイタリア語の文字を見た。

 

『最後に、家出計画のおさらいを記す』

『リボーンが家に襲来するよりも前に日本から脱出する』

『その後は世界全体を旅行しつつ、今の自分に足りないものを見つけに行く』

『正直上手くいくかは分からないが超直感に従えば何とかなる、何とかしてみせる』

『タイムリミットは最大でも死ぬ前までの五年まで。五年以内までに黄金長方形の無限回転を完成、もしくは復讐者を襲撃して夜の炎を奪い取る』

『そしてアルコバレーノのおしゃぶり、マーレリング、ボンゴレリングを無人化させる』

『そうすれば皆がマフィアとかに関わらない、平穏な生活を送れる筈なのだから』

『まぁ、それはそれとして家出旅行はちょっと楽しみだ。何も気にせず楽しみたい』

『問題はいつ凪と別れて単独行動をするかだが、それはその時考えよう』

 

「…………ああ、成程」

 

ユニはこのノートを見て全てを理解する。

 

「沢田さん、貴方は全てを知った上でその選択を選んだんですね」

 

思わず両の瞳から涙が溢れる。

そして理解する。あの時見た未来に映っていた自分が何で泣いていたのかを。

 

「死ぬのが怖くないんですか?」

 

未来で視た沢田綱吉が死んでいたのを、ユニはこの時理解した。

 

   +++

 

―――――特別だからって世界を救う義務は存在しない。

 

例えば未来を知っていて一国を亡ぼすような災害が来ると言う事を分かっていたとしよう。

どうやってそれを伝えると言うのだろうか、そしてどうやって救うと言うのだろうか?

結論を語ると絶対に不可能だ。どれだけ声高々に叫んでもそれを誰が信じると言うのだ。

仮にそれを信じてくれたとして、全ての人間を救う方法なんてどうやって考えれば良いのだろうか。

 

と、まぁ長々と語ったわけだが自分が言いたい事はただ一つ。

 

「主人公に憑依したからって原作通りにやらなくて良いよね。てか逃げる」

 

これ一つに尽きるのである。

何が悲しくて自分の大切な人が傷つかなくちゃいけないのだろうか。

何が辛くて世界が滅ぼされかけるのを黙ってみていなくちゃいけないのだろうか。

 

「そもそもとして知っているのなら回避するのが人間だ」

 

だからこうして自分が家出計画を考えているのも当然のことだ。

そう自分に言い聞かせながら計画を立てていく。

全てが完璧に上手くいくとは思っていない、そこまで自分には運が無いからだ。

重要なのは無人化と皆の平穏な生活だ。そこに自分が居れたら文句は無しだ、居なくても文句は無いが。

出来れば皆に囲まれて、病院のベッドの上で死にたい。

そうして衰弱して死ねば復讐に走ったりすることも無いだろうから。

 

「そして、ボンゴレの血統も俺の代で終わらせよう」

 

そうすれば全てが完璧、完全に終わる筈だ。

こんな呪いを次の代に引き継がせないで静かに幕を閉じる。

尤も、組織としてのボンゴレは残ってしまうだろうが、皆がマフィアに関わる理由だって無くなる。

 

「さて、そろそろ寝るとするかな」

 

そう言って俺はノートを隠し、ベッドに眠りについた。

 

――――これは家出計画を実行する五年前の出来事の話である。




※補足
当初の主人公の予定ではこんな感じでした。

1.リボーンが家に来る前に家出する。
2.その後は世界中を旅行しつつ修行したり、黄金長方形の完成か夜の炎の奪取、あるいはその両方を行う。
3.凪と別れた後、 7³(トゥリニセッテ)を無人化させる。チェッカーフェイスとの接触は出会えれば良しとする。
4. 7³を見つからない場所に隠した後、最後は衰弱死して全てを終わらせる。この時、並盛に帰るかどうかはその時までに死んでいるかどうかである。

はい、主人公は最初から死ぬ気でした。
だからあんな自滅技を連発していたわけです。

さて、もしこの主人公の考えている事を知ったら凪を含めた仲間たちはどう思いますかね(愉悦
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