特別だからって世界を救う義務は存在しない。   作:霧ケ峰リョク

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本当はもうちょっと早く展開したかったんですが少し長くなりました。
そして今週から自動車学校ラストパートですので中々執筆できなくなります。
後ポケモンの発売日も決まってますので次回少し遅くなるかもしれません。


学園生活その6

 ジャララという金属同士が擦れ合う音と共に、突起が付いた3つの鎖がオレ達に迫る。

 薄らとしか見えないが鎖には死ぬ気の炎が灯っている。直撃したら間違いなく戦闘不能になる。そう思ってしまうくらいの威力がある。とはいえ、防御すれば防げないわけではないし、回避も出来ない訳ではない。

 だけど、その前提はオレが一人だけだった時の話だ。

 ここにはユニを含めたクラスメイト達が居る。オレが避けられても他の人が避けられる訳では無い。ましてや、大空のアルコバレーノといえど子どもに過ぎないユニにあの攻撃を防いだり、回避する事は不可能だ。

 加えて、この攻撃はオレ一人を狙ったものではなく、オレ達全員を狙った攻撃だ。

 たった一つ防ぐだけじゃ何の意味も無い。

 

「くそったれ!!」

 

 迫る鎖に悪態をつき、攻撃に向かって駆け出す。

 どんな盾であろうとも、防ぐことが出来るのはその場所だけ。その盾が守れる範囲外の場所を防ぐ事はできない。

 それが分かってるからこそ、この攻撃なんだろう。

 例えそれが罠だと分かっていたとしても、その罠にかからないといけないのだから。

 

「っ、らぁ!!」

 

 一番最初にオレに向かって放たれた鎖を迎撃し、破壊する。

 攻撃を受け止めて、改めて理解する。この攻撃は防御するより回避に専念した方が良いタイプのやつだ。防御しても受けるダメージがバカに出来ない。

 でも、回避は出来ない。回避すれば後ろに居る人達は死ぬ、もしくは怪我を負う。それだけは絶対にあってはならない。

 そう自分に言い聞かせ、防御した時の反動を利用して移動し、二個目の鎖も破壊する。

 破壊した衝撃で血が飛び散った。

 痛い、かなり痛い、滅茶苦茶痛い。でもこの程度の痛み、ユニを助けた時に比べれば遥かにマシだ。

 あの時は片目が潰れて、片腕が吹き飛んだのだ。

 これぐらいの痛みで泣き言なんか言ってられるか――――!

 

「三つ目ぇ!!」

 

 二個目の時と同じように反動を利用して三つ目の鎖も破壊する。

 これで攻撃は全て防ぎ切った。後は反撃するだけだ。

 そう思い下手人の方に視線を向け――――包帯塗れの男の貫き手が眼前に迫っている事に気が付いた。

 まぁ、それはそうだ。当然の話だ。

 今の攻撃で仕留めきれるなんて向こうは最初から思っていなかった。

 それどころか今の攻撃を防御するなんてせず、回避する事すら考えていた筈だ。

 だからこうして続けざまに攻撃を叩き込もうとしているのだろう。オレが攻撃を回避せずに防御して傷付いた事は奴等にとって愚かな事でもなければ予想外の事でも無い、単なる幸運でしかない。

 本当、嫌になる。何でオレが戦う連中はこんな油断も慢心もしない、文字通り殺意マシマシで攻撃してくるような奴しか居ないんだ。もうちょっと見下してほしいぐらいだ。

 

――――でも、対処は可能だ。

 

 眼前に迫る貫き手を顔を逸らす事で回避し、そのまま奴の顔面に拳を叩き込む。

 

「オラァ!!」

 

 カウンターとして突き刺さった攻撃に包帯塗れの男はもう一人の男の方に向かって勢いよく吹っ飛んでいく。

 吹っ飛んだ男はもう一人の男に受け止められた。

 出来れば今ので二人とも倒れて欲しかったのだけど、世の中そう上手くはいかないらしい。

 死ぬ気の炎で今出来た傷を修復する。

 

「さて、一体何が目的でオレに攻撃をした?」

 

 襲撃をして来た下手人に問い掛ける。

 それに対し、下手人達は何も語る事は無かった。

 やっぱり話す気は皆無らしい。本当、どうしてこいつ等に命を狙われてるんだろうか。

 

「おい、おいおいおい! どうなってんだよ…………何でここに、復讐者(ヴィンディチェ)が居るんだ!!」

 

 オレと下手人達が対峙しているとシャマルがそう叫んだ。

 その叫びはこの場に居るオレを含めたクラスメイト達全員の思いを代弁していた。

 

――――復讐者。

 

 マフィア界の掟の番人であり、法で裁けない者を裁く存在。

 あのリボーンでさえ厄介と言って関わらないようにしていた連中。

 その正体は最強の赤ん坊、選ばれし7人(イ・プレシェルティ・セッテ)の前任者達。

 憎悪と怨念のみを貪る生ける屍。

 そんな存在自体が厄そのものと言わんばかりのこいつ等が何でここに居るのか。疑問を抱くのは当然の事だ。

 と、いうかどうしてオレに襲撃を仕掛けてるんだこいつ等。

 そう考えているとぶっ飛ばした方の復讐者が口を開いた。包帯塗れだから口なんて見えないが。

 

「…………我等ハ掟ノ番人、我等ガ動クソノ理由…………貴様ナラバ既ニ理解出来テイルダロウ」

「いいや、さっぱりだよ」

 

 これは本当、オレには復讐者が動いた理由が分からない。

 復讐者が動く理由は二つある。一つが奴等が言ったようにマフィア界の掟に関する事、もう一つがチェッカーフェイスに関係する事だ。

 マフィアじゃない、一応今はマフィアに所属しているが、オレは掟を破った覚えはない。

 ならばチェッカーフェイスの事だろうか。いや、それもありえない。

 オレはチェッカーフェイスが何処で暮らしているのかをある程度知っているが、この事は誰にも話していないし、チェッカーフェイス本人もこの事を知らない。オレだけが知っている事だ。

 それなのにどうして復讐者がオレに襲撃を仕掛けて来るのか。

 

「『ボンゴレ』ト『シモン』。カツテ我等ノ前デ誓ッタ事」

「ボンゴレとシモンが誓っただって…………?」

 

 復讐者の言葉に反応した炎真の呟きが響くのが聞こえた。

 シモンファミリーの現ボスである彼にとって、自分の先祖が復讐者に誓ったという事は看過できない事なのだろう。

 一方、オレは拍子抜けしていた。

 復讐者が襲撃を仕掛けて来た目的、その意図が分かった事で安堵する。

 

「なぁんだ、そんな事か。ならオレに攻撃をするのは筋違いだ」

「ホウ…………?」

「かつて、ジョットとコザァートが結んだ誓いは忘れていない。けどオレはボンゴレの人間じゃないし、何よりコザァートの子孫とも争っていない。誓いは何一つ破られていない以上、お前達復讐者がオレを襲うには理が無い。それはお前達の主、バミューダ・フォン・ヴェッケンシュタインも見ている筈だ」

「確カニ、ソノ通リダ…………」

 

 復讐者達はオレの言い分を聞いて頷く。

 

「ダガ何故ソノ事ヲ貴様ガ知ッテイル?」

「――――あっ」

 

 やっべ、やらかした。

 そしてこう思う時はいつだって手遅れな時だ。

 とはいえ、まだ挽回出来る筈だ。そう自分に言い聞かせて復讐者達に言い訳をしようとする。

 

「コホン、オレの先祖はボンゴレⅠ世、ジョットだ。先祖が子孫に色々と残していてもおかしくはないだろ」

「否、ソレハアリエナイ。ジョットハ子孫ニシモンファミリーノ事ハ伝エテイナイ。モシ、伝エテイタナラバラ、貴様ノ父親ガ知シラナイノハオカシイ」

「うぐぅっ!!?」

 

 痛い所を突かれた。と、いうかこんな感じ前にもあったような気がする。

 こういった時に何を言っても説得力は無い。

 なら、真実を混ぜつつ本当の事は喋らないようにする。

 

「……………本当の事を言うと、オレにはジョットの記憶がある」

 

 オレがそう言った瞬間、周囲が騒めく。

 これは嘘では無い。オレにはジョットとの記憶が受け継がれている。

 全集中の呼吸の影響なのか、それともボンゴレリングに選ばれた適応者の直系の子孫からなのか、それとも転生したという特殊性が原因なのか、その全てが要因なのかは分からない。

 ただこの記憶のおかげでオレは力を身に付ける事が出来た。

 

「だからオレは全て知ってる。シモンとの約束も、お前達が復讐者が何者なのかを…………」

「――――成る程ね、納得がいったよ」

 

 オレが隠していた秘密を打ち明けた瞬間、子どものものと思われる声が聞こえた。

 声がした方向にあるのはこいつ等が出て来た黒い炎で、そしてオレはこの声に聞き覚えがあった。

 

「久しぶりだな。バミューダ・フォン・ヴェッケンシュタイン」

 

 その名を告げると共に黒い炎から二人が姿を現す。

 一人目は襲撃者と同じように包帯塗れながらも、鋭い眼光と黒い髪が特徴の男。もう一人がその黒髪で目付きが鋭い男の肩に乗っている。同じように包帯塗れで透明なおしゃぶりを付けた赤ん坊だった。

 

「いや、初めましてか。オレはジョットじゃないんだから」

「いいや、久しぶりで良いよ。沢田綱吉、いいや、ジョット君」

 

 古くからの友と再会したかのような軽いやり取りを透明のおしゃぶりを有する赤ん坊、バミューダ・フォン・ヴェッケンシュタインとする。

 

「透明な、おしゃぶりのアルコバレーノ…………!?」

「お、おいお前! 一体何者だ!! 何で、そのおしゃぶりを持っているんだ!!」

 

 ユニとスカルはバミューダの姿を見て反応を見せる。

 特におしゃぶりを持っているスカルは、自身が着けている雲のおしゃぶりが共鳴している事から、バミューダが正真正銘のアルコバレーノだと理解している。

 だからなのか、二人とも酷く狼狽した様子でバミューダを見ていた。

 

「それはボクがアルコバレーノだからさ。尤も、きみ達よりも前のアルコバレーノだけどね」

「前は前でも遥か昔だろう。ジョットが生きていた時代に既に復讐者を組織していたから、それこそ10世紀ぐらい昔でもおかしくない」

「流石にそこまで昔ではないよ。でもジョット君。きみにだけは言われたくないな。きみだってこの時代の人間じゃないじゃないか」

「あくまで記憶だけだ。オレは沢田綱吉だよ。ジョットじゃない」

 

 記憶があるのは確かに事実だし、時たまジョットの記憶に行動が引っ張られる事がある。

 とはいえ、オレはジョットとは違う。ジョットはジョット、オレはオレだ。子孫ではあるが何処までいっても別人だ。

 その事をバミューダが理解していないわけが無い。

 

「いいや、きみはジョット君だ。少なくとも僕達はきみの事をそう認識した」

「…………傍迷惑な話だ。まぁ、それで良い。で、何でオレを狙った?」

 

 バミューダに対し、復讐者二人にした質問をする。

 

「最初はさ、きみの事をよく居るようなマフィアになりたくないっていう我が儘な子どもだと思ってたよ。まぁ、それにしては行動力があり過ぎると思ったけど」

「オレからしたらそれぐらいやるのは当然だと思うけど」

「きみは一度常識について学び直した方が良いと思うよ。で、当初の予定では逃げ出したきみを捕まえて、その後ボンゴレファミリーに届けようかと思ってたんだよ」

「…………本当に迷惑な話だ」

「僕からしたらきみの行動の方がよっぽど傍迷惑だと思うけどね。でも、それはさっきまでの話だ」

 

 そう言った瞬間、バミューダの纏う雰囲気が変わる。

 

「僕達は、きみが何も知らないで行動しているのだと思っていた。でもきみがジョットだというのなら話は違う。きみは全部分かった上で行動している」

「…………それが、オレを襲った理由か?」

 

 だとするなら納得出来ない話ではない。

 こいつ等は復讐者――――チェッカーフェイスに復讐する為に生き永らえている連中だ。

 オレの行動を放置したら自分達の復讐が出来なくなると考えた。

 そう思うオレの内心を見透かしてか、バミューダは笑みを浮かべる。

 

「ほら、やっぱり理解している。そういうわけだから、きみには大人しく捕まってもらうよ。スモールギア! ビッグピノ!」

 

 バミューダがそう言うと先程襲い掛かって来た二人の復讐者がローブと包帯を脱ぎ捨てる。

 現れたのは生きた人間とは思えないようなスプラッターな外見をした亡者達。その姿を見てクラスメイト達は恐怖の声を上げる。

 

「そんじゃ、かっこよく殺してやるよ。ボンゴレⅠ世」

「ピピ、プピッ」

 

 迫る二人の復讐者を前に溜め息をつく。

 何て最悪な日なんだろうか。マフィアの学校に通う羽目になり、そこで渾身の出来だと確信していた変装がすぐにばれて、挙句の果てには復讐者に襲われる。

 

「まぁ、仕方がないか」

 

 世の中なんてそういうものだ。そう自分に言い聞かせて腰に下げていた刀を抜いて構える。

 復讐者はバミューダを除いて全員が半死人で、夜の死ぬ気の炎を貰う事で生き永らえている身だ。

 胴体に穴が開いても、普通ならば即死するような怪我を負っても死なない。

 正直な話、復讐者連中を複数人も相手にした上で五体満足で勝つというのは不可能だ。

 だから殺すつもりで、その上で死なない程度に無効化すれば良い。

 

「首から下は要らないかな」

 

 そう呟いてオレは二人の復讐者と相対した。

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