特別だからって世界を救う義務は存在しない。 作:霧ケ峰リョク
そしてついに免許取得しましたー!
まだ車は購入してませんがこれでひと段落つきました。
――――それは化け物同士の戦いだった。
目の前で繰り広げられる闘争にシャマルはそう思わざるを得なかった。
先ず、二人の
スモールギアと名乗った巨大な耳かき棒を持った男の接近戦は、裏社会のヒットマンとして生きてきたシャマルの目から見ても脅威としか言えない。否、その評価ですら足りないだろう。それ程までの見事な身のこなしだ。
もう一方の武器を沢山持った巨漢、ビッグピノはあまり動いていないものの手に持った特殊な形状の武器で的確にスモールギアのサポートを行っている。その砲撃の威力も高く、果たしてどっちがサポートなのか、シャマルでさえ分からなかった。
実際のところ、どちらもサポートでどちらもメインなのだろう。
スピードと手数のスモールギア、破壊力と必殺のビッグピノ。互いにの弱点を補い、互いを活かす見事な連携だ。その弱点すら弱点と呼べない程高レベルだから余計に性質が悪い。
だからこそ、その二人を相手に対等に戦えている沢田綱吉は紛れも無く怪物だった。
ガキンという音を立てて、綱吉の持つ刀とスモールギアの持つ巨大な耳かき棒がぶつかり合う。
「やるじゃねぇかボンゴレⅠ世! 剣も使えるとはな!!」
「使えるように努力したからな…………お前のような奴とも打ち合えるように!!」
歴戦の殺し屋であるシャマルでさえこの三人の戦いは目で追うだけで精一杯だ。
だが、それでも――――。
「不味いな。このままじゃあボンゴレ坊主の奴、負けるぞ」
シャマルの呟きは互いにぶつかり合う剣戟の音に掻き消された。
+++
世の中本当に理不尽、というかオレに対してあまりにも厳し過ぎないだろうか。
スモールギアとビッグピノの攻撃を捌きながらそう思わずにはいられなかった。
幸せと不幸せは交互にやって来るというが、それにしたって不幸な度合いが強過ぎる。本当にお祓いでも行った方が良いだろうか――――いや、お祓い程度でどうにかなる程、あの悪霊達は甘くないか。
本当に勘弁してほしい。
ガキンと甲高い音を立てて、巨大な耳かき棒――――スモールギアが脳かきと言う武器で此方の攻撃が防がれる。
「よくもまぁそんな武器で防げるな」
「オレが強いからな。武器が無くても強いけど、なっ!!」
此方の顔面を貫こうと迫る貫手を紙一重で回避する。
そしてカウンターを叩き込もうと拳を握り、自らに向けられる殺意に気付きその場から離れた。
直後、ついさっきまでオレが居た場所に黒い炎の砲撃が叩き込まれた。
その砲撃はビッグピノが放った物で、もし当たってたら一撃で戦闘不能になっていたことだろう。
当然ながらスモールギアは回避している。
「くそ、本当に厄介だな」
元アルコバレーノを二人相手にするのはかなりきつい。
しかも前回とは違い、この二人は赤ん坊の身体ではなく、呪われているとは言え大人の身体だ。
攻撃のリーチが違うし、一発の重みも違う。いや、そもそも地力が違い過ぎる。
リボーン達と戦った時よりも強くなったけど、今のオレじゃあそれでも足りない届かない。
メイン武器であるグローブが無いからなんて言い訳は通じない、残酷な現実がそこにあった。
「厄介、ねぇ…………」
スモールギアは今まで使っていた脳かきを放り捨てて、ビッグピノから巨大なマラカスを二つ渡される。
そしてそれらを手に持ってオレに向かって突き付けて来た。
「お前まだ自分を強化出来る技があるだろ。オーバーフローモードとかいうやつ。何で使わねぇ?」
「…………使わないんじゃなくて使えないんだよ」
オーバーフローモードは
波紋で常に生命エネルギーを生産できるお兄さんと違ってオレが維持できる時間は五分間。
オレがオーバーフローモードになった瞬間、こいつ等は徹底的に持久戦を始める算段だ。そしてオレが力尽きた瞬間にとどめをさす――――いや、それ以前の問題か。
今戦っているのはスモールギアとビッグピノの二人だけだけど、この場にはバミューダとイェーガーの二人が居る。そうでなくても夜の炎の特性は転移、遠く離れた場所であっても関係無い。
本当、夜の炎がヤバすぎる。デイモンが手に入れようとするわけだ。
転移に警戒し、常に炎を薄く放射して探知しながら戦わないと強制不意打ちで殺される。
「お前ら二人ぐらい、オーバーフローモードにならなくても倒せなきゃお前達に勝てないからな」
それでも勝ち目が無いわけではない。
勝ち筋は限りなく低いけれど、この二人を超死ぬ気モードで倒せるだけの力をもてれば可能性が出て来る。
後もう一つの勝ち筋は――――いや、こっちはダメだ。リスクがあり過ぎる。
例え勝利出来たとしても何が起こるか分からない。そんな危険な力は使いたく無い。
だからこそ、オレは勝つ為に、挑発する為にこれから酷い事を言う。
「それに…………うん、ようやく馴染んできたし、そろそろ倒させてもらうよ」
「へぇ、成る程な――――お前、オレ達を舐めてるのか?」
瞬間、この場がスモールギアとビッグピノの殺意で満たされる。
肌がざわつく様な、呼吸が出来なくなる程に重い、とても濃密な殺意だった。
人外の殺意なのだから当然と言うべきか、後方でこの戦いを観戦しているクラスメイト達は息が出来なくなって膝をついている。
歴戦の殺し屋であるシャマルやアルコバレーノであるスカルでさえ冷や汗を流している。
ユニも苦しそうに見える。ちょっとこれは不味い、早く倒さなくちゃいけない。
「舐めてるつもりは無いよ」
「じゃあどういうつもりだ? これで舐めてないって言っても説得力がねぇぞ」
「だから舐めていないって。ただ、心の底からバカにしているだけだから」
殺意を剝き出しにしている二人に向かって、オレは本心から思っている言葉を言い放つ。
「は――――?」
オレが言った言葉にスモールギアは呆気に取られた顔を浮かべる。
「何時まで経っても復讐復讐、憎い憎い許せない許せないの一点張り。アルコバレーノに選ばれてしまった事は同情はする。でも、お前達がそれを語る資格は無いだろ」
アルコバレーノになってしまい裏社会に身をやつした以上、多かれ少なかれ人を傷つけ命を奪っている。
別にその事は否定しない。次のアルコバレーノを生み出さない為という理由も立派だ。
だけど、そんな自分を棚に上げて復讐の権利があると謳うのはふざけている。
「何が復讐者だ笑わせる。お前等に復讐を語る資格なんか、権利なんか欠片も無い。リボーンの奴もお前等と同じ扱いされたらぶちぎれるだろうね」
人の命を弄んだ奴の最後なんか碌なものじゃない。
その事をリボーンは良く分かっていた。チェッカーフェイスを憎いと思う心が無かったわけじゃないが、あいつはその事を受け入れていた。とはいえ、あくまでそれは死ぬ時の話。生きているのなら精一杯死ぬ気で生きなくちゃダメだけど。
「復讐するという気持ちを理解できないオレが言うのもなんだけどさ…………本当、惨めだと心の底から思うよ。折角生き残る事が出来たというのに、復讐復讐と絶対に叶わない。本当に惨めで哀れ」
「黙れぇええええええええ!!」
オレの挑発をスモールギアが怒声でかき消した。
その形相は憤怒一色に染まっており、さっきまでの軽薄な雰囲気は消し飛んでいる。
「てめぇに何が分かる! 自分の仲間の暴走を止める事すら出来なかった、自分の我が儘で結果的に仲間を死なせたてめぇに、何が分かる!!!」
「スモールギア、冷静になれ。そんな見え見えの挑発に引っかかるな」
「っ、悪い…………バミューダ…………」
バミューダの一声によって激高していたスモールギアの怒りが沈静する。
「…………耳が痛い話だな」
一方、オレはスモールギアの言葉に頭を痛めていた。
スモールギアの言う通り、デイモンと袂を分かつ事になった原因は間違いなくオレにあるのだから。
ボンゴレファミリーはあくまで自警団、その理念に従った結果エレナを死なせてしまった。
デイモンの考えが正しかったとは言えない。だけどエレナが死んだのはオレの、ジョットのせいだ。
今だから言える、争いが終わったからと戦力を減らし平和路線に進んだのは間違いだった。デイモンの言う事も決して間違っていなかった。彼の意見も併せて話し合っていればもっと違った結果になってたかもしれない。
でもそうはならなかった。
だからこそ、もう二度と失敗しないように徹底的にやる。
「挑発とはいえお前達の事を侮辱した事は謝罪する。すまなかった。だけど、オレも負けない為に挑発はさせてもらう」
本当は言いたくなかった。けど、落ち着きを取り戻してしまった以上、仕方が無い。
一つ懸念があるとするならこの挑発をすれば、間違いなく敵の増援が来て、ただでさえ少なかった勝ち筋が皆無になること。
そして、それでも勝つ為に使いたくない切り札を切らなくちゃいけない。
でもやらなくちゃ勝てない――――だから使う。
「オレは今、チェッカーフェイスが何処に居るのかを知っている。これは嘘じゃない、真実だ」
「――――ふむ」
そう言った瞬間、殺意が膨れ上がる。
今まで戦いを観戦していたバミューダとイェーガー、そして周囲を取り囲むように黒い炎が出現する。
炎のゲートから姿を現すのは沢山の復讐者達。
「あいつが何処に居るのか聞き出したいのなら、オレを倒して口を割らせてみろ」
「言われなくても、そうさせてもらうよ」
本当ならここでパワーアップしてスモールギアとビッグピノの首が飛んでました。
が、それだとこの先あれかなと思ったので強化はまた今度。