特別だからって世界を救う義務は存在しない。 作:霧ケ峰リョク
ちなみにまだまだ能力隠してますが?
アカデミアに出現した
それもその筈、挑発とはいえ自分達の事や過去のアルコバレーノの事を侮辱されたのだから。その上、自分達が100年以上の年月をかけて追い続け、見つける事すら出来なかった因縁の相手の居場所を知っていると来た。
おちょくっているにも程がある。そう思わざるを得ないだろう。
「随分と性格が悪くなったみたいだねジョット。死ぬまで変わらなかったきみの甘さも、流石に一度死ねば変わるのか」
「だからオレはジョットじゃないって何度言えば――――もう良い。お前等にそれを言っても無意味だと今気付いたよ」
復讐者達が集う中、オレは刀を肩に担ぎながらそう言い放つ。
「さっき言った通り、オレはチェッカーフェイスの居場所を知っている。それが知りたきゃ全員かかってこい」
それは宣戦布告を通り越して自殺のようなものだった。
敵は多数、それに加えて全員が格上。これを自殺と言わないでなんというのだろうか。
「言われずともそのつもりさ。きみには奴の居場所を吐いてもらう。どんな手を使ってでもね」
「それは奇遇だな。オレもだよ」
バミューダの淡々とした呟きが聞こえる。
平静を保っているように見えるが、その実内面は荒れ狂っているのが分かる。
流石は復讐する事を考えて今まで生き永らえて来ただけはある。
復讐という気持ちは理解できないけど、その思いの強さは分かる。それ程までに憎いのだろう、それ程までに許せないのだろう。
だからこそバミューダは夜の炎を生み出せたんだ。
こんな凄い奴相手に余力を残したまま勝とうと思っていたのが間違いだった。
何が使いたくないだ。オレ一人で目的を達成したいのなら、手段も目的も選びたいのなら、出し惜しみなんかせず死の物狂いで挑まなくちゃいけないだろうが。
そう自分に言い聞かせて覚悟を決める。
もう二度と使わないと決めた、その誓いを破る覚悟を――――。
「10分…………いや、5分以内に片を付ける」
刀に死ぬ気の炎を纏わせて一閃する。
すると死ぬ気の炎の輪が発生し、周囲を飲み込むように展開していく。
まるで津波のように押し寄せる死ぬ気の炎は、その強大な力に反して誰かを傷つける事は無い。
当然だ。この炎に威力は無い。
この炎は大空の特性である調和のみを引き出したものなのだから。
「攻撃力の無い炎をそんなに無駄遣いして何をするつもりだい?」
「こうするんだよ。裏返れ――――」
周囲に放った特性のみを引き出した死ぬ気の炎が世界を飲み込む。
オレを中心に世界が変化する。表と裏、内と外、オレと世界の境界を調和させて無くし、関係性を入れ替える。
固有結界、あるいは領域展開、あるいは創造。
それらをこの世界で再現したもの――――再現出来過ぎてしまった結果、封印せざるを得なかった技。
「時ノ庭園」
+++
綱吉が放った炎が消失すると世界が変わる。
さっきまでアカデミアの校庭だった場所が、炎で出来た花弁や氷で出来た花弁を有する花々が咲き乱れる草原に。そして神秘的な大地の上に立つ氷で出来た城という幻想的な光景に。
「時ノ庭園――――これがオレが持つ最強の技だよ」
出来る事ならもう二度と使いたくなかったけど。
そう付け加えた後、綱吉は刀を構える。
「どうなってんだこりゃ…………オレは夢でも見ているのか?」
シャマルは今起こっている事を理解できないのか、変わった世界を見渡す。
それは生徒達やスカルも同様で誰も彼もが綱吉が使った時ノ庭園に目を丸くしている。
「まさかきみが幻術が使うとはね。でも不思議な事じゃない。きみの義妹は術士、彼女に幻術の使い方を教えたのはきみなんだから」
バミューダ達復讐者は驚くこともなく、綱吉の方を注視する。
確かに見事な幻覚だ。自分達を騙す事が出来る術士は世界に数人も居ない。
だがそれだけだ。所詮は幻覚、対処は可能。
そう判断し、綱吉を仕留めようと攻撃に移ろうとする。
シャマルを含めた生徒達も復讐者の言葉を聞いて、この空間の事を幻覚だと判断する。
ただ一人を除いて――――。
「違う……………幻覚なんかじゃない…………!」
誰も彼もが幻覚だと判断する中、ユニだけは幻覚では無いと言うことに気が付く。
大空のアルコバレーノだから気付けたのか、あるいは特別な血筋だから気付けたのか。いずれにせよこの場において真に理解出来たのはユニのみだった。
どういった性質かは完全には分からない。
ただ感じる力は明らかに異質なものだ。死ぬ気の炎でも、異能でも、技術ですらない。取り返しがつかなくなるような、そんな力をユニは感じた。
「沢田さん…………これは一体…………!?」
「先に弁解しておくけどオレはこの技を使うつもりは皆無だった」
ユニからの問いに綱吉は刃を軽く振るい、憂鬱と言わんばかりに溜め息を吐く。
「オレは人間でいたいから、人間として死にたいから。でも、それで目的を達成出来なくなっては本末転倒。だから、5分以内に片をつける」
「大口を叩くのは良いけどこの数を相手に勝てると思ってるのかい?」
「思ってる、いや、既に勝ったも同然だよ」
綱吉がそう言った瞬間だった。
復讐者達の全身が凍結し始めたのは。
「なっ、零地点突破!? 予備動作は無かった筈――――」
足先から上へと向かって凍り付いていく自身の身体に復讐者達は困惑の声を上げる。
「だが、零地点突破の氷は死ぬ気の炎で溶かす事が出来る! この程度で僕達を倒せると思うな!!」
凍り付いていく自分の身体の自由を取り戻そうとバミューダ達は夜の炎を放出し、氷を溶かそうとする。
すると身体から放出した炎が物凄い勢いで、見えない何かに奪われていく様な感覚に襲われた。否、実際に奪われていた。
「が、な、何だこれは…………?」
氷を溶かす事には成功したものの、今度は急速に炎が奪われていく。
その現実に復讐者達はキツそうな表情を浮かべた。
「まさか…………炎の放出を止めろ!!」
バミューダの言葉に促され、復讐者達は炎の放出を止める。
それと同時に身体の凍結が再開する。いや、それだけではない。死ぬ気の炎の放出を止めたにも関わらず、内に秘めてある死ぬ気の炎を、生命力をも奪われていた。
「ジョット! 貴様、何をした!?」
「何もしてないよ。これがこの世界のルールだ」
綱吉の額に灯っていた死ぬ気の炎が髪に燃え移り、出力が上昇する。
「この世界では死ぬ気の炎を使わなければ身体が凍り付き、使えば必要量以上に奪われる。使わなくても奪うけど、まぁ使った時に比べれば少ないが…………お前達復讐者には効果的なんじゃないか?」
「…………わかってて言ってるなら、本当に性格悪くなったな貴様」
復讐者は夜の炎を産み出したバミューダを除いて、全員が自力で炎を産み出す事が出来ない。その為、バミューダが夜の炎を供給しなければ生きることすら不可能なのである。
故に死ぬ気の炎を必要以上に使わせ、更に使わなくても奪っていくこの空間は復讐者達にとって相性がかなり悪い。否、最悪と言っても過言では無い。
「悪いけど、さっき言った通り5分以内に倒す。無駄話は、これでおしまいだ」
復讐者達にそう告げた瞬間、綱吉は手中に収まっていた刀を一閃する。
「イクスブレイザー!!」
オーバーフローモードによって強制的に出力が引き上げられた一撃が、現在進行形で死ぬ気の炎を奪い取られていく復讐者達に襲い掛かる。
回避は不可能。夜の炎を使って転移しようにも死ぬ気の炎を自己生産出来るバミューダ以外、大量の炎を消耗する転移を使えばガス欠となり凍り付くことになる。
カウンターも当然不可能。比較的負担の少ない部分転移ならば使う事が出来るが、この空間でそんな事をすれば何が起こるか分からない。最悪、転移した瞬間、腕が千切れ飛ぶ事になる。
防御は――――可能!
「イェーガー君!」
バミューダはイェーガーに渾身の夜の炎を注ぎ込む。
注ぎ込む瞬間にもかなりの量の死ぬ気の炎を奪われたが、それでも密着していれば注ぎ込めないわけではない。
「――――ああ、バミューダ」
そしてイェーガーもバミューダの意図を察し、夜の炎を使って全身を転移させる。
転移する場所は今攻撃しようとしている沢田綱吉の背後。
「くそっ!」
背後を取ったイェーガーは死ぬ気の炎を纏わせた手刀を振るい、転移した事に気が付いた綱吉はイェーガーの一撃を刀を持っていない手で防ぐ。
大空と夜、二つの属性の炎が轟音を鳴らしてぶつかり合う。
「…………今のを防ぐとは思わなかったぞ」
「防げるよう努力したからな」
イェーガーの呟きに綱吉は冷や汗を流しながら返す。
「本当、化け物だな…………死ぬ気の炎を奪われてる状態だっていうのに、ここまで強いんだから」
「化け物っていう単語、きみにだけは言われたくないんだけどね」
そう言い合いながら綱吉とイェーガーは互いに拳を叩き込み、両者共に吹っ飛んだ。