特別だからって世界を救う義務は存在しない。 作:霧ケ峰リョク
「成る程、ね。獄寺君は自分の技の欠点を気にしているのか」
「はい。俺のボムはスピードが無いので、どうしても速い相手だと難しくなるんです」
現在、俺はマフィアランド内にある森の奥地で獄寺君の相談を受けていた。
相談内容は自らの技に対する欠点を克服したいのだという。
「俺は基本的に接近戦が主体だからボムの事とかになると専門外なんだけどなぁ…………」
遠距離用の技が無いとは言ってないが、爆弾となると話が違ってくる。
そもそもこのダイナマイト自体かなり危険な代物だし、他の武器と違って取り扱いが難しい。
一体何処の誰がこんなものを武器として薦めたのだろうか。でも獄寺君の場合は知力が高くてあっているのだからどうしようもない。
だからといって原作での解答を俺が教えてしまったらそれはそれでだめになる。
こう言うのは自らの力で辿り着かなきゃいけないもので、中途半端な知恵では逆に火傷をするのだから。
「獄寺君の場合はスピードは必要ないとは思うよ。なくても困らないし、それでもあった方が更に強くなるとは思うけど」
「そうですか…………なら俺はどうしたら」
「強いてあげるとするなら、ボムの投げる速度を上げるんじゃなく、ボムを相手に届かせることこそが重要なんだと思うよ」
悩む様子を見せる獄寺君の手中からダイナマイトを二本拝借する。
「例えば、こんな感じかな?」
ダイナマイトに火を付け、二本とも放り投げる。
宙を舞うダイナマイトの内、後方にあった導火線が短いダイナマイトが先に爆発する。
その爆風によって前方にあったダイナマイトは吹き飛ばされ、遠くの方で爆発した。
「ッ!?」
「ん…………やっぱり俺には向かないか」
狙い通りの場所に着弾しなかった為、あまり褒められたものじゃないだろう。
が、獄寺君は今ので何かが嵌ったような表情を浮かべていた。
どうやら良いヒントにはなったらしい。
「獄寺君。きみの先生がどんな技を使ったのかは分からない。だけど本当に大切なのはボムが標的に届いたという結果なんだと思う」
「…………10代目」
「きみはきみの先生じゃない、獄寺隼人だ。同じ方法では上手くいかない時っていうのはどう頑張ってもやって来るものなんだよ」
前世の知識があったが故に、この世界には無い修行法でその技術を取り入れようとした事もある。
だがそれが完全に自分の物になったかと聞かれればNOで、むしろ失敗ばかりだった。
感謝の正拳突き一万回とかを自分の物にしてみようと思って修行したけど不可能だったのだから。
あれらは本当にその人が辿り着いた極みで、そこに至るまでの過程を経て辿り着いたその人だけの解答なのだ。
それをただ知っているだけで会得なんか出来るわけが無い。
「だから獄寺君は獄寺君なりの方法でその技に辿り着こう。獄寺君が歩んできた道程は決して君を裏切らないから」
努力は絶対に裏切らない――――なんていうのは所詮御伽噺に過ぎない。
どれだけ綺麗ごとを重ねて美辞麗句にしたところで、努力だって裏切るし報われない事は当たり前にある。
だけどそこに至るまでの過程は決して裏切ることは無い。
報われなかったとしてもしてきた努力は血肉となる。それは決して無意味なものなんかじゃない。
「じ、10代目!! 分かりました!! 俺、必ず10代目の期待に応えて見せます!!」
獄寺君は歓喜に震えていると言わんばかりに噛み締めた表情を浮かべ、ダイナマイトを全て持って駆け出した。
その姿を俺は何とも言えない表情で走り去っていく獄寺君を見つめる。
取り敢えず、こんな感じで良かったのだろうか。正直自分の専門外の事を教える気にはなれなかったけど、これでロケットボムまで辿り着いてくれるのなら御の字だ。
内心そう考えていると崖のある方に少女のものと思わしき手が現れる。
「ん、ああ、ついに凪も登れるようになったんだね」
「ぜぇ…………はぁ…………」
崖から息を荒くして這い上がった水着姿の凪の姿を視界に収める。
「取り敢えずこれで基礎体力は出来たわけだ。おめでとう凪」
「それは良いと思うんだけど…………何で水着なの?」
鞄の中から取り出した赤い色の弾薬を五つ程手に持つ。
拳銃は持っていないからこのまま直接使うとしよう。数が不安だが俺がコツを教えれば凪ならすぐに体得できるだろう。
本当ならもうちょっと欲しいんだけど量産する方法が分からないし、下手な物を作って凪が死んでしまったら何の意味も無い。
「これを使うと下着姿になるからね。だから水着姿の方が効率が良かったんだよ」
「あ、あの…………ボス。物凄く嫌な予感がするんだけど」
少しだけ後退ろうとする凪、そんな彼女に俺は笑みを浮かべる。
「凪。もしこの修行が終わったらどんなお願いでも一つだけ叶えてあげるから頑張ろう」
「…………本当に、何でも?」
「俺に出来る事だけだよ」
まぁ、凪ならそんな無茶振りはしないだろう。
そう思っていると凪は少し考える素振りを見せた後、俺と対峙する。
「分かった。だけどちゃんと叶えてもらう」
「もう一度言うけど俺が叶えられるものだけだからね」
「大丈夫。ボスは何もしなくても良いから」
何故だろうか、物凄く背筋が凍り付くような奇妙な感覚を覚える。
だが男に二言は無い。ここまで頑張ってくれているのだからちゃんと褒美は与えるつもりだ。
その為のお金だってあるし、頑張ったご褒美が無きゃ凪だってふてくされるだろう。
「じゃあ、一回死んでみようか」
この後、俺は凪に何でも叶えてあげるなんて言った事を後悔する事になる。
だがこの時の俺はその未来を知らず、凪の眉間に向かって赤い弾丸を放った。
+++
現在進行形で家出中の沢田綱吉達がマフィアランドと呼ばれる移動する島で遊びながら修行をしている時、遠く離れた日本の並盛町にある山奥で大きな爆発音が響いた。
「ぬぉおおおおおおおおおお!!! 極限に納得いかーん!!」
その爆発音を鳴らした白髪の少年は憤慨しながらも拳で近くにあった岩を殴り、文字通り爆散させた。
明らかに人間技とは思えない所業をさも当たり前のように行う白髪の少年を、睨み付けるような視線を向けながら黒髪の少年はむすっとした表情を浮かべる。
「ねぇ、きみ。さっきから無暗に暴れないでくれない?」
「ならばこう答えよう。無理だー!!」
苛立ち混じりに言ったその言葉を白髪の少年は暑苦しい叫びを上げながら拒否する。
「まぁまぁ、落ち着けって雲雀に先輩」
その様子を見ていた竹刀を手に持った少年が朗らかに笑みを浮かべながら語り掛ける。
「二人ともあの坊主に負けたからって不貞腐れても仕方ねぇだろ」
竹刀を持った少年の言葉を聞いた二人の少年が固まる。
「俺達の中で一番強いツナが凪を連れて身を隠すぐらいなんだぜ。全員で束になっても勝ち目が見えないくらいあの坊主が強かったんだからさ」
バガンと岩が砕け散る音が響き渡る。
その音が鳴った方に視線を向けると、今度は雲雀と呼ばれた黒髪の少年がその手に持っていたトンファーで岩を粉々に砕いていた。
「おいおい雲雀。笹川先輩に言っておいて自分は良いのかよ」
「…………うるさいよ。それで、あの小動物、もとい勝手に家出したあの風紀違反の生徒会長が何処に身を潜めたのかは分かったのかい――――山本武」
竹刀を持った少年、山本武は雲雀と呼ばれた少年からの問い掛けに笑みを浮かべながら頷いた。
「ああ、あの小僧達が言っていたからな。ツナがマフィアランドって場所に居るって」
+++
「…………っ!? な、何だこの寒気は…………!!?」
まるで背筋に氷柱を直接突き刺した時のような寒さだ。
これはリボーンが俺達がこのマフィアランドに居るって察知したという事を超直感が知らせたのだろう。
と、なると早くマフィアランドから去った方が良いのかもしれない。
楽しかったマフィアランドでの生活もこれで終了か…………少し寂しいが仕方がない。
「凪の方の修行も完了したし、獄寺君も新しい戦法を自分の物に出来たし丁度良いか」
視線を地面に突っ伏している凪の方に向けてから、頭を悩ませている様子の獄寺君の方にも向ける。
この島で過ごした日々は二人の血肉になったらしい。
「後は――――」
そう呟きつつ近くにあった木に軽く触れる。
瞬間、木に触れていた箇所がバーンと音を立てて吹き飛んだ。
「俺の方も新しい技が出来たしね」
ボンゴレリングの強化が出来ない今の状態ではどう足掻いても火力不足だ。
せめて
まぁ無いものを強請ってもどうにもならない。ならば今ある力で何とかするしかない。
幸いな事にマフィアランドでの生活でスペックは向上し、新しい技も基本の強化に繋がった。
「よし、明日ここを発つか」
もうこのマフィアランドに用は無い、あの恐ろしい羽の無い天使に捕捉される前に逃げ出そう。
でも、何でだろうか――――何故か凄く嫌な予感がするのは。
並中生徒会長の日常
「生徒会長! 雲雀さんがまた暴れ回っています!!」
「生徒会長! 黒曜中の奴等との抗争が勃発しました!!」
「生徒会長! ロンシャンの野郎が連れて来た彼女のせいで生徒達が発狂し、パンテーラさんがロンシャンの命を狙っています!!」
「―――――俺、生徒会長を辞める!!」
「辞めないでください生徒会長! 雲雀さんと対等なのあんたしか居ないんです!!」
「やめろ離せぇええええええええええ(血反吐)!!」