交差する時、引鉄は誰が引く   作:ベシ

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真・プロローグ


こっちサイドだってことは、まぁバレバレですか。
あ、ハジメちゃんの記憶は、あの駅で少女に会ったことも含めて今のところは消えています。


始まりの記憶 復讐よりも、家族の愛

 物心がついた頃、私は孤児院にいた。

 院の責任者、ルッカ・アシュティア博士(私たちはルッカ姉さんと呼ばされ……呼んでいる)によると、どうやら私は戦災孤児らしい。この孤児院には、そういった子供達が集まっていた。

 

 

 かつてこの地では、ガルディアという王国が栄えていた。王は心の優しい人格者だったそうだ。王国の繁栄は永く続くと、誰もがそう思っていた。

 けれどそれが実現することはなかった。

 隣国であるパレポリは、虎視眈々と時期を窺っていた。

 ガルディア王国の兵の練度が平和によって段々と下がっていったのに対し、パレポリは兵を鍛え、武器を開発していき、いつしか軍事国家と呼ばれるようになっていった。

 そして王国歴1005年、ついに彼らは動き出した。ガルディア王国に攻め込んだのだ。

 王国に近代兵器に対抗する術はなく、あっさりとパレポリに征服、統合されてしまった。

 その戦火の中でガルディア王は命を落としたのだという。

 

 ルッカ姉さんは、今でもそのことを悔やんでいる。私には、私達には彼らに抗うだけの力があったのに、と。

 けれど、こうも言っていた。

「過去を悔やんでもしかたないわ。起きてしまったことは変えられない。今、出来ることをしなくちゃね」

 私がこの言葉を忘れることは、きっとないだろう。その頃にはもう、前の世界に対する未練は無くなっていた。

 

 

 ルッカ姉さんは、驚くことに世界を救ったことがあるという。その時に一緒に戦った仲間とは今でも交流があり、彼らが孤児院を訪れることもあった。

 赤いツンツン頭が特徴のクロノさん。

 金の長髪を後ろでまとめている快活な女性、マールさん。

 この二人は夫婦だという。確かにとても似合っていると、そう思った。

 他にも、そのまんまロボットのロボさんに、昔カエル男だったことがあるというグレンさん、なんだか原始的な格好をしているエイラさん。

 クロノさんやマールさんほど頻繁に訪れることはなかったけど、彼らがやってくる時は孤児院のみんなが興奮していた。もちろん私もその一人だった。

 彼らの話はどれも刺激的で、なかでもグレンさんが魔王と一騎打ちをした話が私のお気に入りだった。

 

 

 そんな日々を過ごすうちに、私はある少女と親友と呼びあえる関係になっていた。

 彼女の名は、キッド。

 孤児院ができる前からルッカ姉さんに面倒を見てもらっていたという。

 私達は、イタズラを仕掛けてはルッカ姉さんに叱られる、なんでもない日常を愛していた。

 大きくなったらルッカ姉さんの手伝いをするんだ。二人でそう誓い合った。ずっとこんな毎日が続くんだと思っていた。あの日が、来るまでは。

 

 

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「おい、ハジメ!起きろ!起きろって!ルッカ姉ちゃんがどっかに連れてかれちゃうよ!」

 

 体を揺り動かす手の感触と必死な声で、私は目を覚ました。横を見ると、今にも泣きそうな顔をしたキッドが私を見つめていた。一体どうしたのだろう、そう思い、声をかけようとした。けれどそれは叶わなかった。耳を劈くほど大きな爆発音がしたから。

 

 私は慌ててベッドから飛び起き、キッドと共に廊下に出ようと部屋のドアを開けた。真っ先に目に飛び込んできたのは赤い色だった。辺り一面が炎に包まれていた。

 私が描いたグレンさんの絵も、キッドが描いたルッカ姉さんの絵も、全てが燃えていった。

 けれど、何か感傷を抱いている暇などなかった。

 キッドは言った、ルッカ姉さんが攫われてしまう、と。

 助けなきゃ。そう思った。頭の中にはそれしかなかった。

 私はがむしゃらになって探した。

 腕が焼かれようと、肺が焦げ付こうと構わない。

 そして、見つけた。

 床に横たわるルッカ姉さんと、山猫の亜人、道化師の少女を。

 

「あ…うぅ、うぁぁあぁああ!」

 

 悲鳴が聞こえる。一体誰のものだろう?

 そして気付いた。

 あぁ、これは私のだ、と。

 そう思った時にはすでに体が動いていた。

 キッドは、ただ呆然とその場に立っているだけだった。けれど仕方ない。むしろそれが普通の反応だろう。

 

 亜人と、道化師。彼らは客人として迎えられたはずだった。ルッカ姉さんに話があるのだ、と。

 ヤマネコと、ツクヨミ。それが彼らの名だったはずだ。

 

「ヤマネコォォぉおお!」

 

 怒りに任せて飛びかかった私は、しかしあっさりと一蹴されてしまった。

 今になって考えてみれば、当然のことだ。190cmもある巨体に、たかだか12年ほど生きただけの女が敵うはずもない。背中から壁に叩きつけられた私は絶息し、動くことも出来なくなった。

 はは、これはもう…ダメかな……。

 

 諦め掛けたその時、私がやられたことで我に返ったのか、今度はキッドがヤマネコに食ってかかっていた。

 

 ダメだよ、キッド……はやく、逃げて…。

 

 今にも気を失ってしまいそうだった。

 でも、キッドを助けなきゃ……。

 そんな想いとは裏腹に体は指先まで動かない。

 私には、どうすることも出来ない。

 

 自分の情けなさに涙が溢れる。

 誰か、誰でもいい……。助けてよ……!

 

 そう願った瞬間だった。

 

 大きな音を立て、ドアが蹴破られた。

 

 飛び込んできたのは、赤いバンダナを巻いた少年だった。

 

 その姿を見た途端、なぜか大きな安心感が私を包んだ。根拠はない。でも、彼なら助けてくれる。そう感じた。

 

 少年はキッドの腕をつかんで引き留め、私をその背に乗せた。そして、少しヤマネコを睨み付けてから踵を返して孤児院を脱出した。

 

 私は、彼の大きな背中に安心して気を失ってしまった。

 

 

 

 気がついた時にはもう少年の姿はどこにもなく、そこには静かに涙を流しながら燃えていく孤児院を眺めているキッドがいた。

 声をかけようとしたその時、キッドはこう呟いた。

 

「復讐ってやっぱりダメなことなのかな。頭では分かってる。でも、あいつが憎いよ…。私の家族も、居場所も、全部奪っていったんだ……。私は、どうすればいいのかな…」

 

 その言葉を聞いた時、私は自分に誓った。

 けっしてキッドを一人にしない、傷つけさせない、と。

 

 私はキッドを抱きしめていた。

 

「ハジメ…。わたし、いや、俺は絶対にハジメを守るよ。だから、俺の前から、絶対に居なくならないでくれ…」

 

 嬉しい。キッドも同じように考えてくれてたんだね。

 

「うん、わかった。私は、ずっとキッドと一緒にいる。私は、私を守るキッドを守るよ」

 

 こうして私達は歪な愛を誓い合った。

 

 

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 それから私達は生きていく為に何でもした。

 初めは裕福そうな家に忍び込んで食べ物を少し拝借するくらいだったけど、だんだんとエスカレートして行った。と言っても、悪どい商売で稼いでいる奴らから金品を盗んで貧しい人たちに配る、義賊みたいなものだったけど。

 そんな行為を繰り返して行くうちに、私達にラジカル・ドリーマーズという名前がつけられた。

 そして、ラジカル・ドリーマーズの名は大陸中に広く知れ渡ってしまった。

 

 だから、私達はゼナン大陸から離れることにした。

 そして今は内海に浮かぶエルニド諸島へ向かう船の上で波に揺られている。

 

 エルニド諸島を選んだのには理由がある。

 

 数日前、とある酒場に立ち寄った時のことだ。

 数人の商人たちが集まって共に酒を飲んでいた。その話題の中に、こんなものがあったのだ。

 

 

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「そういやよ、3年くらい前まで不気味な野郎がいたの、お前ら覚えてるか?」

 

「それって、あの猫みたいな顔した旦那のことかい?」

 

「あぁ、いたなぁそんなやつ!羽振りはよかったから色々卸したりしてたけど、そうじゃなきゃ関わりたくなかったぜ」

 

「そうそう、そいつなんだけどな? なんか、また動き出してるらしいぜ。まぁこの辺りじゃなくて、エルニドってとこらしいんだけどよ」

 

「エルニドかぁ…」

 

「なんだ、てめぇエルニドってとこ行ったことあんのか?」

 

「あぁ、あそこはいいとこだぜ。テルミナのゾウイカスミのパスタは絶品だし、それ以外にも海産物は質が良いのばっかりだしよ、もうちょっと近けりゃ商船のラインを作りてぇくらいだ。あぁくそ、話してたら行きたくなっちまったじゃねぇか」

 

「旦那がそう言うんなら良いとこなんだろうな。旦那の物を見る目は確かだからよ」

 

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 結局、あの中で話してた一人が船を出すと言っていたので頼み込んで乗せてもらったと、そういうわけなのであった。

 

「ねえねえ、向こうに着いたらさ、まず何しよっか!テルミナのゾウイカスミのパスタは外せないでしょう?それから、風鳴きの岬からの景色も良いって聞いたしー、危ないって言ってたけどヒドラの沼も実は行ってみたいんだよね! ねぇ、キッドはどう思う?」

 

「おいおい、オレ達の目的は二の次かよ? でもまぁいろんなとこ見て回りたいとは思うけどさ」

 

 エルニド諸島。一体どんな所なんだろう?

 私達の胸は、高鳴りっぱなしだった。

 

 この先に、大きな困難が待ち受けていることも知らずに。




あ、愛って言っても家族愛とかそっち方面なんだからねっ!恋愛(と書いてラヴと読む)的なものに発展することは有りません、多分。いや絶対。サブタイにも家族の愛だって書いてあるしだいじょうぶだよ!うん!

もう既に何を言えばいいかわからない。そうだ!キャラ紹介をしよう!

というわけで
【ルッカ・アシュティア】
・かつてラヴォスという地球外生命体から世界を救ったことがある女性。その類稀な頭脳で仲間をサポートした。詳しくは、ゲーム:クロノトリガー、をプレイしてね!
・クロノクロスの世界では、孤児院を設立し経営しながら友人と科学談義に花を咲かせていたようだ。
・当時赤ん坊だったキッドを拾い育てた。
・孤児たちからは親というよりはむしろ、年の離れた姉として慕われていた。

彼女に関しては今はこんなところですかね。あんまり詳しくやりすぎるとネタバレになってしまいますし(原作未プレイの方限定ですが)。


続きまして
【キッド】
・原作におけるヒロイン
・原作ではヤマネコに対して大きな憎悪を抱いているが、この小説内ではヤマネコへの憎悪より創への愛情の方が強く、仇?あぁとれるならとっとこうか。くらいである。ああっ!ルッカ姉さん、泣かないでっ!

キッドに関してもこのくらいですかね、今のところは。後は追い追い公開して行きます。

次回は視点を変えて、もう一人の主人公サイドの話を進めたいと思います。もう一人のオリキャラが登場しますね。
ではでは。

To be continued.
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