男が演奏している横に看板が立っている。あなたは看板を読んだ。...投げ銭歓迎!石は投げないでください... あなたは周囲を調べた。... ...何かが見つかりそうだ... 投げやすい小石を見つけた!   作:ネコ文屋

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4283文字
筆休み...


07_昼下がりコミュニケーション

 ズズーっ

 

 

 

「ハフハフ、うめっ、うめぇ!!」

 

 

 

 村山はログアウトしてから、同僚からもらったインスタントラーメン(アメリカンロブスター味)を食べて腹を満たしていた。

 

 

 

 まったく、不健康な生活をしていると、病気になりやすいというのに...

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 大味だがそれが逆にいい。

 

 

 食べ終わると冷蔵庫から、野菜ジュースを取り出し飲む。カップラーメン食べといてなんだが健康は大事だ。

 

 

 

「ちょっと散歩するか...」

 

 

 

 机から不健康さの象徴であるタバコの箱を手にとりズボンのポケットに入れ、特に何も置かれていない玄関へと歩いていき、半袖半ズボンのラフな格好のまま南国の島で買ったサンダルを履いて、黒く塗装がされた扉をあける。

 

 

 

 ギギー...

 

 

 

 パタン

 

 

 

 上を見上げると上から光が降ってくる。このガラスは透明度が非常に高い。面白いことに日中は日光が常に降ってくる仕組みになっているそうだ。

 

 

 

 歩くリズムに少し遅れて腹がたぷたぷと揺れる。ああ...ゲームだとすっきりしていたのになぁ。思わず顎を撫でると、髭を剃っていなかったことに気がついた。まあ、いいか...

 

 

 

 この建物は少し変わった作りになっている。本来なら団地のように理路整然と並べなければいけないところを雑然と建物が食い合うように建てられている。どうやら建築家はこの街の不整合さの中にある良さというものを表現したかったらしい。その模型を見たディベロッパーがそのどこか愛嬌のある箱の集合体を見て「これは変な形だが、これからの時代はこういうのもありかもしれない。面白いじゃないか」ということを言って採用されたとか。

 

 

 

 正直不便ではあるとは思う...一体全体アパートに不合理性や雑然さを求める奴がいるのか?およそバリアフリーとは真逆の思想だ。だが、自分の家で昼寝場所や変わった場所を探せるというのは、一風変わった魅力であった。また、狭い部屋は安かったのも良かったといえば良かった点だ。

 

 

 

 

 

 ぼんやりと歩いているといつもの喫煙スポットが見えてきた。そろそろタバコも止めたいのだがやめられんな...休みの日にも拘わらずどこにも出掛けずにタバコを昼にふかすやつなんざそうはいないと思ったがやっぱり数人はいるようだ。

 

 

 

 タバコのケースから一本取り出し、そいつらの輪の一員になってからライターで火をつける。ふー...白い煙が目の前でたなびき立ち昇る。

 

 

 

 とげとげした頭をした中年男性が同じようにゆっくりと煙を吐いてから声を掛けてくる。

 

 

 

「マッさん。最近景気はどうでい。」

 

 

 

「ようシゲちゃん!ぼちぼちだよ...。仕事もぼちぼち、私生活もぼちぼち。」

 

 

 

 中年に差し掛かり気味のふっくらとした女性が口を挟む。

 

 

 

「あら、そうなの?マサルさん、ずいぶん機嫌が良さそうに見えたのだけれど。」

 

 

 

「いんや、特に何もないぞ。いつも通りさ。幸子さんは最近何かないのかい?」

 

 

 

「そうねぇ...最近下の子が料理を手伝うようになって、とっても嬉しかったわ。この前は一緒にハンバーグを作ったのよ。お母さんの料理が好きだから私も作りたいって。」

 

 

 

「それはいいねぇ。」

 

 

 

「うんうん。子どもは可愛いよなぁ。」

 

 

 

 俺もシゲちゃんも目を細めて喜んでいる。我が家の子どもは今ごろ何をやっているのかなぁ。

 

 

 

「子どもといえば、もうすぐ夏休みですね。どこか連れてってやらないと。」

 

 

 

 細目でメガネをかけたひょろひょろした男が言う。

 

 

 

「もう、やすし君とこの坊主も小学生だったっけか。やんちゃで大変だろう。

 

 

連れて行ったらよい場所か...

 

 

夏だから海とかプールとか連れて行けばええんじゃないか。」

 

 

 

 シゲちゃんが顔をしかめて悩んでから、ニカッと笑って言い放つ。

 

 

 

「海ですか。いいかもしれないですね。僕ももう何年も行ってないんで。」

 

 

 

 やすし君がはにかみながら言う。うーん、子どもねぇ…うちは娘だから正直分からないんだよなぁ。

 

 

 

「そうだねぇ、小学生だったら遊園地とか喜ぶんじゃないかな。最近はロボットがテーマの施設もあるらしいじゃないか。

 

 

やすし君、普段そういう仕事しているだろ。お父さんがかっこよく説明してあげれば、うわーっと尊敬されちゃったりして。」

 

 

 

「それは名案ですねぇ!自分の仕事知ってもらうのも嬉しいですし、ロボ愛に目覚めるかもしれないですしね!そうなったら...何か作らせてみるのもありだな。今のうちから英才教育...」

 

 

 

 それっぽいアドバイスを投げたら、ツボにはいったようで、自分の世界に行ってしまった。あらら。

 

 

 

「そうねぇ...映画とかどうかしら。娘もディ○ニーやアニメが好きで良く見に連れて行くのよ。

 

 

 

 子ども向けだけど、ストーリーがしっかりしていて私も見入ってしまうのよね~。でも、最近は大人びてきたから、この前は『00○』を一緒に見たわ!ア○ゾンでね。

 

 

 私、明里には映画の良さをいっぱい知ってもらいたいの。あの子には映画好きの血が流れてるんだから。

 

 

 

 一通り名作を見せたら...ふふ。

 

 

 

 あっ!やすし君も好きそうなのだとVR映画というのもあるみたいね~。私的には視点が固定されていない時点で邪道だと思うけれども、ゾンビ物とかは群がるゾンビと戦う臨場感があっていいのよ。

 

 

 

 色々なバージョンがあるから面白いのよね。感染してゾンビ側の視点しか見れないパターンとか、シーン切り替えなしのオープンワールドで主人公たちの動きについていけないパターンとか、銃器がぶっ放せてシナリオ分岐型とか。うふふ!ゾンビものは捨てがたいわ!

 

 

どうかしら?!」

 

 

 

「ぇぇ..?映画なんですかそれは...。ゾンビは苦手なんで遠慮しときます....」

 

 

 

「あら、食わず嫌いはダメよ。日本ではあまり流行ってないけれど、アメリカではシャークものとかも人気なのよ!アメリカ住みの友人の家に訪ねていくときに見に行ったけどすっごいよかったわ~。」

 

 

 

「へぇ、そんなのもあるんだねぇ...

 

 

 確かに群衆物とは親和性は高そうだな...ゴ○ラとか進○の巨人もありと言えばありだなぁ。」

 

 

 

「あら、ゴ○ラは来年あたりにやるみたいですよ。ウフフ!」

 

 

 

 なん...だと...

 

 

 

「映画もだけど、競馬も面白いのやっとるよ。ジョッキーの頭にカメラをつけてるんだったかな。確かなぁ。

 

 

 

 そいで、レースの最中にジョッキーが見てる景色が見れたりするんや!賭けには関係ないけど、最高やで。アドレナリンどばどばやぁ!」

 

 

 

 それ○夢のボールなんとかであったネタだなぁ。マラソンとか長時間のものはきついけど競輪や競馬なら確かにありだな。

 

 

 

「最近のVRは色々あるんですねぇ。僕が学生の頃は出始めで、そんなに立派なものではありませんでしたが。

 

 

 

 最近ではCADを直感的に扱えるVRサービスもありますよ。とても高額で普通の会社ではなかなか手を出せませんけど、僕の会社は導入していましてね。これがなかなか使い勝手が良いんだか悪いんだか。臨場感があるのはいいけど、細かくなると結局パネル操作が必要なんですよ。動作確認ができるのは面白いですけどね。

 

 

 

 個人的にはフリーウェアやオープンソースの流れもあるので、そっちにも期待といったところです。

 

 

 

 プログラムの方は現実のパソコンとキーボードで書くのがなんだかんだ一番早いんですけどね。」

 

 

 

 へぇ...おっと。あれこれと話しているうちに煙草が一本なくなってしまった。

 

 

 

「よーっし!午後もがんばりますかぁ。」

 

 

 

 少しオシャレな吸い殻入れに煙草を捨てて大きく伸びをする。

 

 

 

「あら、村山さん、何を頑張りますの?掃除でもしてました?」

 

 

 

 おっとっと。シャンフロは秘密にしておきたい...はっちゃけたいしなぁ。

 

 

 

「うん、そう。そうなんだよ...最近掃除していなかったから久しぶりにやっているんだ。チラシとかがたまっていてねぇ。ガラスも拭いたりしてさ。オッサン独りきりだとなかなか大変なんだよね。」

 

 

 

「そうですか!うちもそろそろ大掃除しようかしら。頑張ってくださいね~。」

 

 

 

「ほな、さいなら~。」

 

 

「マッサン、またな。」「さようなら。」

 

 

 

 手を後ろ手にひらひらと振って喫煙スポットを離れる。

 

 

 

 部屋へと戻ろうとするが、もうちょっと出歩きたい気分。暑いけど、実に良い天気だ。青空に良いさじ加減の雲。どうせ、シャンフロ内では夜だろう。せっかくの良い天気なのだから太陽があるほうを歩かねば損だ。

 

 

 

 マイアパートの敷地から出て、ぶらりぶらりと歩いていく。

 

 

 

 道路を歩いているとふと道の脇に目が行く。昔の道路は電柱があったんだがなぁ。

 

 

 

 無電柱化は若い頃から着々と進んでいたが、最近ではすっかり電柱がなくなってしまった。鳥が止まっているのも風情があってよかったが、災害があったときに電柱だと断線する恐れがあるから仕方ない...

 

 

 

 大通りへ出て道路を見れば、自動運転の車も当たり前のように走っている。スマホを操作しながらでも事故をおこすことはほとんどない。しかし、運転中に○ケモンG○は止めて欲しい。

 

 

 

 やはり、散歩をしていると時代の流れ、街の風景の変化が如実に感じられる。しかし、変わらないものも変わるものもまた良いものだ...

 

 

 

 寺社仏閣、河川敷、喫茶店、古本屋、橋、公園などは昔の雰囲気があってなごむ...

 

 

 

 まだ腹が物足りないし、お好み焼きでも買いに行くか。

 

 

 

 しばらく歩いて少しわきに入ると馴染みの店についた。トタンの家屋に雨除けの屋根がしてあり、『うっちゃんのお好み焼き』と書いてある。うーん、昭和チック。エモい!

 

 

 

「いっらしゃい!お好み焼きは350円、たこ焼きは10個で500円ね!」

 

 

 

 鼻腔をくすぐるソースの香り。うまそうだ。

 

 

 

「お好み焼き一つ!」

 

 

 

「あいよ、今作るからちょっと待っとってね!」

 

 

 

 キャッシュレスの時代だけれど、ここは現金のみ取り扱いなんだよね。エモい。何でもQRコードでやるもんなぁ。スマホがなければ会計できない店があるのはどうかしてるぜ...現金で払うと嫌な顔をされることがあるから使ってはいるが。

 

 

 

 お金を入れる茶色の皿に350円を入れる。

 

 

 

 店主が具を鉄板にこてで押し付けて焼いていく。ジューっという音が心地よい響きだ。

 

 

 

 裏返して再び焼く。

 

 

 

 アルミの上に乗せて、ソースを塗って上手く包んだら、ビニールに入れて...

 

 

 

「はい!350円ちょうど!はい!お好み焼きね!ありがとぉ!またよろしくね!」

 

 

 

 食べ歩きには最適な形。アルミホイルを剥くと温かい湯気と共にキャベツの甘い香りとソースのツンとした匂い食欲をそそる。

 

 

 

 ぱくり。

 

 

 

 うーん!うまい。キャベツが多めで真ん中に玉子。ソースも少なすぎず多すぎず。豚肉も普通でうまい。この味は言うなれば、インドカリー屋と同じ安心感がある。

 

 

 

 公園でぶらっとしながら食べて帰ろーっと。

 

 

 

 それから、途中の自販機でお茶を買いつつ、初夏の公園をぶらぶら歩いたのだった。




Tips.時代背景
 21世紀後半を想定。ロボットやAIによる自動化(オートメーション)が日常生活や都市機能の一部となっている。さらに身体感覚の拡張技術が実現し、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)が現実、インターネットに加わる生活の第三軸として成立しつつある。現在は、その第一陣が席巻した後の第二陣が出現中。また、その他新技術の出現を受けて、衛星軌道でのコロニーや月面での実験都市、さらには火星のテラフォーミング計画などの太陽系開発プロジェクトが前向きに進められ始めている。
 なお、全球データ網配備計画(G2DP)の進行により地球上表面のあらゆる場所(一部地域を除き)において、G2DP規格対応の機器を持っているか設備を仲介すれば、有線を介さずにインターネットなどの通信網にアクセスすることが可能である。
 世の中に衝撃を与えたVRMMOゲーム、シャングリラ・フロンティアに使われているVR技術及びAI、その他のシステムは技術者から見て明らかに特異点に達し技術革新が行われたことが分かるのだが、開発元であり運営会社でもあるユートピア社が沈黙を続けているためその技術の内容は明らかとなっていない。水面下で技術提供を巡ってユートピア社の窓口、木兎夜枝(つくよぎ)氏と合衆国政府、日本国政府の間で交渉が行われ、ある種の決着を得た。
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