男が演奏している横に看板が立っている。あなたは看板を読んだ。...投げ銭歓迎!石は投げないでください... あなたは周囲を調べた。... ...何かが見つかりそうだ... 投げやすい小石を見つけた!   作:ネコ文屋

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シャンナロォ


09_暇人の、暇人による、暇人のための口笛

 口笛、誰もが持っている楽器。その演奏の気楽さは他の楽器の群を抜く。誰もが練習したことがあるはずだ。口笛が吹けない人もいるかもしれない。そうした人は克服法などもネット上に紹介されているので、試してみてほしい。

 

 

 

 口笛を吹ける人は、次の段階として音程の上げ下げを練習するとよいだろう。

 

 

 

 しかし、通常の笛のように指で穴を抑えることで音程を制御できないので、音程の取り方を練習して身につける必要がある。

 

 

 

 その時に大事なのは舌先である。舌を下の前歯の真ん中あたりにつけて欲しい。音楽の音程は、空気の振動の波長幅で決まる。弦楽器であれば、弦の長さが短いほど高音に。吹奏楽器であれば、筒の長さが短いほど高音になる。口笛で音程を表現するには口内で舌を動かし、空気が振動する空間の容量を調節する必要がある。だから、難しい曲を吹くときにはその口の中では舌を器用に忙しく動かさなければならない。

 

 

 

 

 舌先を前歯の裏から下に動かせば音は低く、上に動かせば音は高くなる。音程がとれるようになったら曲を練習するのみ。

 

 

 

 もう一つの方法は喉で音を調節する方法だ。こちらはコツがいるので割愛する。

 

 

 

 俺のオススメの曲はジブ○だ。まず、誰でも知っているし、印象に残る旋律で、何となく覚えているので吹きやすい。さらに、テンポがゆったりとしているため、口笛ならではの味わいというものを出しやすい。

 

 

 

 ということで、ジブ○メドレーを口笛で吹くことにした。

 

 

 

 

 

 軽く息を吸い、すぐに息を吹き込む。流れるようなスラー。つなぎ目を消し音のせせらぎを紡ぐ。脳裏には地平線のかなたに思いをはせ、なるべく叙情的にビブラートや音のアラを作る。

 

 

 

 一つたりとも音を取りこぼさないように今まで数限りなく吹いてきた旋律をたどる。ロングブレスの部分は癒やしだ。長めのビブラートが自然に出る。休める。

 

 

 

 舌先に集中し高音へと切り替える。切り替えるときは危険だ。ハーモニカでも歌でもそうだが、息の吹き込み方の感覚がまるで変わってくる。前の感覚のままで息を吹き込むと音が鳴らず欠落してしまう事態が起きる。俺はまだ円熟の域に達していないので練習した曲でなければ上手く切り替えられないこともある。

 

 

 

 口笛の高音は金属音にも似た鋭さを持っている。尖った音だ。しかし、曲のテイストに合わせて丸みを与えなければならない。ゆっくりとビブラートをかける。

 

 

 

 続いては、みんな大好きトロロだ。楽しげだけれども寂しげな響きがあるこの曲はおっさんの心にもあの少年時代のピュアピュアな心を沸き立たせてくれる。

 

 

 

 全体的に明るめの音にするためにそーっと息を吹き込むことを心がける。しかし、テンポが早いので息を休める暇は全くない。

 

 

 

 神経を集中させ音程の乱高下に対応する。一番難しいのはト!ロ!ロ!の部分だ。ほかの部分は多少音程や柔らかさがなくても誤魔化すことができるが、あの部分は音が一つ、一つ露出している。へい一丁お待ちしました。新鮮なトロロです。という具合に客の好奇な視線にじっと晒されるのだ。あれ、なんかちがくねっと判断されたらもう終わりだ。それはもう、トロロではない。

 

 

 

 旋律も結構難しい。明るさだけでなく寂しげな雰囲気を出すのも難しい。内心で冷や汗をかきながら吹き終える。

 

 

 

 こんな感じで5曲を立て続けに吹き終えた。長く息を吸い、そして、ゆっくりと吐き出す。

 

 

 

 お辞儀をする。ふさふさの髪なのでお辞儀をしても恥ずかしくはない。

 

 

 

 一瞬の静寂。そして、5つの掌から祝福の拍手が鳴らされる。

 

 

「すげー!口笛すげー!」

「ひゃー上手いわね!」

「うまっ。でも、口笛ナンデ口笛⁈」

「最近の若いもんは凄いのう...」

「なるほど...もしかして、色々なところで口笛を吹いて回りたいということなのかな?」

 

 

 

「いえ、そういうことではありません。口笛に限らず楽器を演奏をして回りたいんです。言ってしまえば大道芸人か吟遊詩人のロールプレイがやりたいのです。」

 

 

 

「つまり、土地に縛られる農業はロール的に向いていないというわけですか...」

 

 

 

「分かっていただけたようですね...」

 

 

 

「入らないのかー!残念だな!」

 

 

 

「待ってください!」

 

 

 

 そうやって声を掛けてきたのは、胸が大きいお姉さんが言う。白いたてセタを着せたい...

 

 

 

「私たちのクランに入らなくてもよいですが、変わった植物があったら、情報でも現物でも買い取りますので、連絡ください!」

 

 

 

「おっそうだな!フレンド登録しとこうぜ!あと、農業やりたい奴がいたら連絡くれよな!」

 

 

 

 なるほど、そういうものもあるのか。NPCだけじゃなくプレイヤーからお金をもらうこともできるのか...はー...なるほどなるほど。

 

 

 

 さっそく、5人とフレンド登録をする。

 

 

 

【チコとフレンドになりました。】

 

 

【野龍馬とフレンドになりました。】

【アメリとフレンドになりました。】

【しずゑとフレンドになりました。】

【ファーブルとフレンドになりました。】

 

 

 

 えーと、胸が大きいのがアメリ。ムキムキ婆さんがしずゑ。モノクル野郎が、ファーブルか。おいおい、偉人の名前使うとか無茶するなぁ...

 

 

 

「誰に連絡すればいいのかな?」

 

 

 

「基本的に誰でもいいけど、ファーブルか俺に連絡すればいいよ。野龍馬とアメリは基本的に忙しいし、しずゑさんはなんというかフリーダムだからな!」

 

 

 

「なるほど。情報というのはスクリーンショットでもいいのかな。」

 

 

 

「スクリーンショットと場所、メモがあればなお良しだわ。スクリーンショットは外の景色を撮る場合、カメラみたいな専門のアイテムがいるけどね。

 

 

 えーとね、ちょっと待ってね。確か『ライブラリ協定』では...農業の相場は...」

 

 

 

「ライブラリ協定?」

 

 

 

「情報の取り扱いについて、権利と利益を確定させるための協定よ。

 

 

 考察クラン最大手のライブラリが提唱する『情報の公開と利用の促進』というモットーに乗っ取って、情報を取り扱うクラン同士や一般プレイヤーとの情報の売買と交換が取り決められているわ。半年くらい前に関係クランの代表が集まって会議して決定したの。なんだかんだ情報交換したほうが効率がいいのよ。隠す情報は隠すけどね。そこは会社と一緒よ。

 

 

 参加していない、野良の情報屋も多いけどね。後ろ暗い情報やレアな情報は大勢に知られたくないでしょう。そういう時は法外な価格で取引する情報屋の方が活発だったりもするけど。

 

 

 あったあった。えーっと、植物関連の情報の相場はまず、新種の発見情報なら基本金が3万マーニから、希少性、経済性を考えて増額して、最大100万マーニ。後は、植物の販売開始から6カ月間、純利益の3%が貰えるわ。既存の植物の生息情報なら、1000マーニから20万マーニね

 

 

 まぁ、一回見せに来てください。損はさせないわ。」

 

 

 

 ほぇ...儲かるのか。仮想現実に来てまで仕事をしたいとは思わないが。

 

 

 

「分かった、見せに行くよ。

 

 

 ところで、なんで皆さんはこんな村にいるんだい。チコはレベル83なんだよな?もっと先の街を拠点にしているのはないかい?」

 

 

 

 顔を見合わせた後、野龍馬が言う。

 

 

 

「定期的に集まっているのですよ。最初の街周辺と言っても、跳梁跋扈の森は植相が豊かで育てやすい種が多いのです。各専門家のチームを作って探索することで、新たな発見ができるというのもあります。

 

 

 跳梁跋扈の森はセカンディル方面は比較的整備が進んでおり森も薄くなっていますが、南と北は東に行くに連れて森が分厚くなっています。そのため、分断された南の森と北の森で生息する動物と植物が異なっていて、新たに発見できる種も多いんです。

 

 

 もっとも、グラッセ村付近は東の端に近く森が分厚い一方で、難易度も上がっているので、高レベルのメンバーが必要なんですが...」

 

 

 

「え...?難易度高いんですか?」

 

 

 

「セカンディル方面が10レベル付近だとしたら、東の端の推奨レベルは表層部で20レベル、中層部で50レベル、深層部で80レベルだな。N・M・Mの奴らが言うにはその先は100レベル帯のFOEがうろついていて、もっと先には渓谷があるらしいぜ!おっと!言いふらさないでくれよな。これ、買った情報だから!」

 

 

 

 なんだ、一気に依頼達成はできなさそうだな...

 

 

 

「この村へのライフポーションの配達ついでに、採取をしていこうと思ったのだが難しそうかな?」

 

 

 

 そう言って、インベントリからマリーから買った書き込みのある古びた紙束を見せる。

 

 

 

「ちょ、ちょっと見せてもらってもいいですか...」

 

 

 

「うん?いいですよ。」

 

 

 

 野龍馬が受け取り、一同がのぞき込む。

 

 

 

「ぱっと見、表層部の動物と植物のようですが...」「このラインナップは『ファステイア森林帯動植物図鑑』から抜き出したものね。ふむふむ、元の図鑑は単なる外見の紹介だったけど、生息地域や危険性、利用法が上手くまとめられているわ。」「僕的にはこのマナ濃度の考察がちょくちょく書かれているのが気になるかな。生育の一つの指標になるかどうか最近、情報を集めているんだ。」「なるほど、なるほど...」

 

 

 

 小声で、なにやら相談をしている。微妙に聞こえにくい。話がついたようで、野龍馬が声を掛けてくる。

 

 

 

「えー...ギター熊さん。この紙束3000マーニで売ってくれませんか。」

 

 

 

「3000マーニですか?それは足元見ていませんかね。」

 

 

 

 おっと...なにやら儲かりそうな気配がするな...

 

 

 

「いえいえ、損はないと思います。私が思いますに、これは、1000マーニから2000マーニくらいで買われたものではないでしょうか。ギター熊さんの装備を見ると魔術師の初期装備であることから、持ち金は3000マーニの範囲内で買えるもののはずです。そして、恐らくこれは魔術師ギルドで買われたものですね。再現性のある情報なのでここで売らなくても私たちが探しますよ。ところが、ここで売っておけば、1000マーニくらいの儲けはでると思います。」

 

 

 

「それでも、売るのはちょっと嫌ですね。そもそも、これは再現性があるものなのかい。古びた紙束に手書きの文字の資料は、作成に手間がかかる。一度だけかもしれないでしょう。それに、仲が良くなったNPCからもらった贈り物を売るわけにはいきません。スクリーンショットで5000マーニなら考えないでもないですね。とりあえず、返してください。」

 

 

 

 野龍馬が大人しく紙束を渡してきたので受け取る。

 

 

 

「お気を悪くされたなら申し訳ありません。そうですね...5000マーニでスクリーンショットの受け渡しでもこちらとしては問題ないのですが、条件を付けてもよろしいでようか。」

 

 

 

 そろそろ、落としどころといったところか。黙って頷く。

 

 

 

「ギター熊さんが情報をもらったNPCと今後もやり取りを続けて、植物に関する情報を引き出して欲しいのが一つ。他の農業クランに情報を渡さないのが一つ。もし、守って頂けるようでしたら、一月あたり5000マーニの報酬と準クランメンバーとしての待遇を約束しましょう。」

 

 

 

 おぉ...これは、抱き込みに来ているのか?外部委託といった腹積もりかな。メリットはカネだが...こんな初期の段階で、ズブズブの関係になるのもなんだかなぁ...

 

 

 

「いや、報酬はいらないよ。自然体でやりたいものでね。やり取りの中で情報を手に入れたら、『輝ける種』のメンバーに声を掛けるというのは考えておきます。」

 

 

 

「そうですか...了解いたしました。えー...とりあえず、紙束のスクリーンショットと5000マーニの交換で取引しましょうか。」

 

 

 

「それでいいでしょう。」

 

 

 

 5000マーニを受け取ってから紙束を渡して、野龍馬がスクリーンショットをするのを待つ。

 

 

 

 撮り終えたようだ。

 

 

 

「ありがとうございます。お礼と言っては何ですが、『初めてのファステイア』を持っていますか?持っていたら、それの地図にこの紙束に登場する動植物の生息域を書き込みますよ。」

 

 

 

 ありがてぇ...お礼を言ってインベントリから『初めてのファステイア』を出して渡す。野龍馬とアメリとファーブルが相談しながら書き込んでいく。

 

 

 

「こんなところですかね。最初はやはり、セカンディル方面の森が薄い部分を中心に活動された方が良いと思います。この辺は20レベル付近になってから森に入るといいですよ。」

 

 

 

「ええ、そうしますよ。」

 

 

 

 まあ、ちょっと見に行くくらいなら大丈夫だろう。

 

 

 

「では、私たちはこれから潜りに行くので。今後ともよろしくお願いします。」

 

 

 

「じゃーな!オッサン!」「またのう...」「さようなら!」「どもども。」

 

 

 

「こちらこそ、また、よろしくお願いします。」

 

 

 

 足早に森の方へ駆けていく『輝ける種』のメンバーを見送った。よっしゃ、4300マーニ儲かったな...

 

 

 

 ポイント振ってからちょっとだけ森に潜ってみるかな。

 

 

 

 

————————————

 

PN:ギター熊

 

LV:4(0)

 

JOB:魔術師

 

7,220マーニ

 

HP(体力):12/32

 

MP(魔力):30/100

 

STM (スタミナ):20/50

 

STR(筋力):10

 

DEX(器用):21

 

AGI(敏捷):21

 

TEC(技量):11

 

VIT(耐久力):10(15)

 

LUC(幸運):2

 

スキル

 

・瞑想

 

・ベースステップ

 

・スライドムーブ

 

・グラウンドクリープ

 

 

魔法

 

【ファイヤーボール】

 

【ヒートハンド】

 

【エアーカッター】

 

【コラプスウィンド】

 

【アクアウィップ】

 

 

 

装備

 

右手:無し

 

左手:無し

 

頭:無し

 

胴:布のローブ(VIT+2)

 

腰:布の帯(VIT+1)

 

足:布の靴(VIT+1)

 

アクセサリー:無し

 

————————————

 

 

 

とりあえず、魔力に7振っておいた。当面は魔力にポイントの半分を振っていき、残りをSTM、DEX、TEC、AGIに振り、時々HPに振ることにしようと思う。VITは装備でなんとかなりそうだから振らなくて良さそうだ。STRは今のところ要らない気はする。

 

 

 

 しかし、ポイントを振った分は振ったからと言って回復しないのか...それじゃあ、スキルも手に入ったことだし、瞑想使ってみるかな?

 

 

 

 井戸のへりを背もたれにして、目を閉じて【瞑想】を使うと念じてから、3分くらい待つ。

 

 

 

 ステータスを確認すると、MPが4、HPが1、STMが3回復していた。HPは1時間半、MPは25分、STMは50分で全回といったところか...取得前より回復量は増加しているが遅いなぁ。やはり、回復アイテムは必要だな。

 

 

 

 もう、十分離れただろうし、行くか。前もってネットで調べたところ、デスペナルティの中に現金ロストはないらしい。安心して、一回死んでおこう。




Tips.農業と牧畜
農業とは様々な種類の植物を育てる産業を指す。牧畜とは家畜を育てる産業を指す。プレイヤーはJOB:農民によって農業・牧畜に関するスキル・魔法を習得することができる。なお、牧畜のスキル・魔法にモンスターをテイムするものはない。
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