男が演奏している横に看板が立っている。あなたは看板を読んだ。...投げ銭歓迎!石は投げないでください... あなたは周囲を調べた。... ...何かが見つかりそうだ... 投げやすい小石を見つけた! 作:ネコ文屋
ウボォ
お、この革の小物入れとか雰囲気あっていいなぁ。ポーションや杖入れによさそうだ...
「お、始まるぞ!」「ファステイア新風物詩の着せ替え隊だ!」「なんだと...」「オーマイブッダ!」「ヒャッハーーー」「コポォ」
突然、店主たちが騒ぎ始めた。え...なになに?!なにが始まるの...?喧嘩じゃなくてパフォーマンスだったのか?!
ちょっと見てみようかな。物色を止めて、人が騒がしく集まっている方へ歩いていく。
円の中心に黒いインナーのみを纏った二人の男が向かい合っている。
「ではっっっ、尋常に。」
「「ンンンンさいっっしょはグー」」
「「ジャアアンッケンぽいいい」」
「ッシャアアアアアアア!」
「ほう、バニーガールが勝ったか...」
「うむ...」
訳知り顔で頷く観衆たち。
「今回は...木刀デスマッチだ。手持ち10本。全部折ったら介錯な。遠隔攻撃禁止スキル宣言禁止だ。投げ銭もなしだ。他は全てあり。立会人。木刀くれ。」
「くそ...不利な戦いだぜ...」
「「「オオオオオオオオオオオオオ」」」
赤黒いスーツの男から木刀が両者に手渡される。
「賭ける奴はいないか!一口3000!ファイトマネー2割勝者分与。」
フードを被った軽装備の男が鋭い声で叫ぶ。
「バニー3くれ!」「チャイナ4!」「バニー5!」「バニー4!」「チャイナ3」「バニー4」「チャイナ5」「バニー2」「チャイナ2」......
男は高速の指使いで手元のパネルを操り、マーニと賭け券との取引のパネルを声を張り上げた観衆の前にポップアップさせる。
「レート、バニー1.48!チャイナ2.34!取引終了まで60s!」
「チャイナ6!」「バニー3!」「チャイナ4!」「チャイナ5!」「バニー2!」......
よく分からないが賭けをやっているようだ。買っとくか。
「バニー1!」
【3000マーニと賭け券(着せ替え隊印)を交換しますか?】
画面がポップされたのではいを押す。
「終了!バニー1.52!チャイナ1.99!」
「じゃあ、始めるとするかァ」
「しゃあねぇな...青チャイナちゃん待ってろ!」
「では、お二方ともよろしいですかな!尋常にぃ...ハジメエエエエエエ!!!」
自信あり気な方の男は腕をキリキリと上げ力を込めて木刀を振りかぶった。
もう片方の男は左手に逆さまに木刀を持ち、中段に横向きに構える。右拳は脱力して胸の前に置かれている。
「チェストオオオオオッッッッッッ」
口火を切ったのはやはり上段に構えた男の方だった。空気を震わせる気合いを入れ、次の瞬間......コマが抜けおちたように掻き消えた...斬るのか?!その予想は誤りだった。
突きだ...
振り下ろされた木刀は確かに斬る軌道を描いているのだろう。しかし、踏み込みにより高速で射出された男が持つ木刀の切っ先は唸り声を上げて猛然と獲物へと飛びかかっていた。その切っ先の速度おそらく300km/h...!
「シッッ」
木刀での防御という選択肢を捨て、迎え撃つ男が選んだのはカウンター狙いの右ストレート...これもただのストレートではない...?!腕がぶれ...いや、体全体がぶれている?...なんと小刻みに小さなステップを高速で踏んでいる。その拳が秘める運動量は...未知数としか言いようがない。
ゴクリ
冷や汗が流れる。刹那の交差に全神経を集中させてその瞬間を...目に焼き付ける。
ブウウウウ ザシュッ ドゴッッ ザザザザザザ
コンマ二秒の攻防。
「ぬうううう」
前方へと着地したサムライ男の右わき腹は不格好に噛み千切られ光の粒子となって消えた。
「よっっとっとっとっと。」
遅れて右耳が欠けたボクサー男は横後ろ方向へ地面を手と足で蹴り回転を重ねながら勢いを殺して着地する。
「やるではないか...見事なカウンターだ!」
ニタリと顔を歪めて、サムライ男は嗤った。
多分だが...
サムライ男が喉元に突きを放ったのを、咄嗟にボクサー男は対応してみせ、後ろに跳びながら寸前で躱す。
その交差の時に、携帯のバイブレーションめいた右ストレートを放ち、さらに衝突時の運動量が乗り、ボディーをえぐり出す凶悪なカウンターへとなった。
さらには、攻撃の反動を複数回の回転により殺し、ダメージを最小限に抑えた。
そんな感じの攻防が目の前で繰り広げられた。と思う。一瞬だったから詳しくは分からないが...
「へっ...痺れっちまった...」
弱々しく振られたボクサー男の右腕は、ダラリと垂れ下がる。
「聞いてはいたが、身のこなしが素晴らしい。さらには、その機の合わせ方、恐ろしい、恐ろしい!...手数を増やそうではないか...」
サムライ男は左手だけで木刀を持ち、下段に構える。同時に右手にも木刀を出現させ上段に構えるとゆらりとゆらりと体が揺れ始める。
「へっへ...楽しくなーってきたじゃん。」
対峙するボクサー男は今度は体を低く構え、右腕を庇うようにサムライ男の周りを左回りで走り出す。
ぐるりぐるりと速度を増し、中心へと渦巻く風と化す。
「むっ...攻めに転じるのか...」
それに合わせて、サムライ男は摺り足で体を最小限の動きで、回転し正面となるように追尾する。
また、左手と右手の木刀の剣先が共に外向きに下段へと下げられる。
「ヒーハーーーー!フハハハッッッッッッ!」
事態は加速する。
極端な前傾姿勢で走るボクサー男。ぐるりぐるりと渦を巻き中心へと刀を向け、穴へ吸い込まれるように走り続ける。
跳ねるように飛ぶように駆け、その円は急速に縮まっていく。
「うむ...」
サムライ男のゆらりゆらりとゆれる体はいつの間にか現実感を失い始めた。
脚からはその動きは読み取れず、いつの間にか足先から剣先まで全てが揺れ、緩急がゆらぎ始めた。
円が小さくなる...ゆらぎが目に追えないほど早くなり始めたその瞬間!
「キエエエエエエエエエエエッッッッッッ!」
サムライ男は右の刀を高速で振り向きながら振り抜く。
ボクサー男はより前傾に、より速くなり、行く手を妨げんとする刃を避けた。
突然動いた相手に反応して、体が強張るのもつかの間のことであった。頭の上を刀が通るのと同時に、高速で駆け続けるボクサー男の脳髄にざらつく嫌な気配が走り、体は反射的に離れる方向へと横ステップを踏んだ。
その気配ははたして殺意だった。
振り抜かれたと思った刀は振り抜かれておらず最小限の弧を描き、返し刀となって首を斬り落としにいく。
いつの間にか上げられていた左の刀は大きな弧を描き左膝が落とされるのと同時に地面に叩き潰す滝の如く降りかかる。
今、右の刀は虚であり、左の刀は実である。両刀共に殺意を秘め、命を刈り取とらんとする。
ボクサー男は右斜め前方へと宙を跳びながら謀殺の右刀に反応して振り返りもせずに逆手に持った剣を気配のする頭上へと瞬時にかざす。
それに呼応してサムライ男は手首のひねりで右刀の刃ではなく峰を現した。これより、必殺の左刀へとなぎ倒す剛の剣へと右刀は変化した。
右刀は今度こそボクサー男をとらえた。ボクサー男は宙から叩き落とされた。牢獄に繋がれた囚人が断頭台で首をさし出すように地面へと向かっていく。
左刀はギロチンの刃のように首を刎ねんと差し迫っていた。
ボクサー男は終わってしまうのか?いや、そうではない。そもそも、彼は無策で攻撃に臨んだのではなかった。
空中で身を高速でよじり、左手の木刀を地面に振るう。
そして、サムライ男とボクサー男は眼を合わせた。ここで、サムライ男は騙されていたと気づいた。
ボクサー男の右腕の筋組織が明らかに最初より極端に肥大化している。
そして、最大限まで引き絞られた弾丸が放たれた。
ドゴオオオオオオオグワアアアアアンン
凄まじい衝撃音。空間がたわみ軋む音。
「ぐうう...」
サムライ男は15mほど飛ばされた場所にいた。左肩から下の部分が破裂し消滅していた。右手にあった木刀も中ほどから折れてしまっていた。
「かふゅ...へっ...致命傷だこりゃ...」
ボクサー男も満身創痍だった。立ち上がろうとするがよろめいて立ち上がれない。喉が前から切れて、呼気が漏れる。右腕は第二関節から切断され光の粒子と化している。左腕は何も持たずぷらぷらと揺れて左肩からぶら下がっていた。
「今度は何でもありでやりたいねぇ...」
そう言ってパタリとうつぶせに倒れると体はひび割れ、光の破片になって宙へと消えていった。
「ナイスファイト!」「やはり、部位破壊ありのバトルは見応えがあるな!」「短期決戦だったなぁ。」「ああああああ、俺の2万4000マーニィ!!」
そう言いながら観衆たちはさらに近寄るのではなく、離れていく。なんなんだ...?空気を読んで一緒に離れる。
ボクサー男がいた地面には青色のチャイナドレスが寂しく横たわっていた...
「エクストラヒール!」
立会人から、サムライ男に回復魔法が飛ぶ。
左腕と右の脇腹が光の粒子で補完され、新たに形成された。そしておもむろに両手を上げた。
そして喉が潰れんばかりに叫ぶ。
「バニーィィイを崇めよッッッッッ!!!」
観客たちはその声を受けて、声を上げた。その声は次第に大きなものへなっていく。
「「「「「バニー!バニー!バニー!」」」」」
両手を大きく振って、声を挙げるのを止めさせ、静寂になるのを待った。そして、サムライ男は装備した。漆黒のバニースーツを!
黒ウサギ耳、黒兎の尻尾、黒いバニースーツ、網タイツに黒いブーツ。を着る険しい顔つきのサムライ男。
悪夢のような光景がそこにあった。夢に出そうだ...
すると、サムライ男の目の前の地面に魔法陣が書かれる。
「ルティア来い...ルティア来い...」
サムライ男は両手をすり合わせ拝むようにつぶやく。観衆は遠巻きに見守る。
光の柱が空へと伸びて...消えた。
そこにいたのは筋肉ムキムキの2mを越す渋いミドルエイジのおっさんだった。ピンクのゴシックロリータの服を着ている。これは...すごい...
「ファッッキンジーィザァアアアアアアアス!」
絶望にまみれた顔をして、中指を天に立てて叫ぶサムライ男。
「トゥーーールウゥかよお!!刀をヨコセエエエエエエエ!!!」
遠くから高速で投げられる二本の刀をキャッチし、鞘を投げ捨てる。
「隊員たちの積年の恨みはらさずにおくべきか...ここで会ったが100年目、今日こそはキルしてやる。」
そう言ってサムライバニー男は刀の腹をベロりと舐める。目が完全にイッてしまっている。
対する筋肉ゴスロリおじさんは無言で右手に大きな丸盾と左に大きな両刃斧を持って威風堂々と立つ。
「シニサラセエエエエェッッッッッッ」
サムライバニー男は絶叫した。
Tips.スキル発動
(建設予定地)