男が演奏している横に看板が立っている。あなたは看板を読んだ。...投げ銭歓迎!石は投げないでください... あなたは周囲を調べた。... ...何かが見つかりそうだ... 投げやすい小石を見つけた! 作:ネコ文屋
ヘムヘム
※本来、美食舌を獲得しないと味覚制限がありますが、そのあたりの設定はスキップしています。
ぶらぶらと歩いて西の通りや通り沿いのところどころにある広場の屋台を物色していると気がつけば、日が傾き始めていた。二度目の夕暮れだ。
西の方の森の上が真っ赤に染まっている。東の山の方を見れば、赤茶色だった山肌が暖かみのある色合いを見せており、陰がくっきりと刻まれている。そして、山の端にうっすらと夜が滲んでいた。
もう、そんな時間か。魔術師ギルドに戻るとするか...
大広場を急ぎ足で通り過ぎ魔術師ギルドへと向かう。大通り沿いの街灯に立てられた蝋燭に火が灯る。
広場を囲む建物から光が漏れ、店主たちは軒先に並べた品物を仕舞い始める。そして屋台の装飾も取り外してどこぞへと散って行く。大広場にはガランと人気がなくなった。
当たりの建物は暗いものも、明るいものもある。その明るさの具合もまちまちだ。
カンテラを腰にぶら下げたプレイヤーたちが通りを行き交う。
東の大通りを行くと金属のプレートアーマーを着た二人組の兵士が辺りを巡回しているのが見える。右手にカンテラを持ち、左の腰に剣をぶら下げている。しばらくして大通りから逸れて違う通りの方へと歩いていった。
魔術師ギルドの前に行くとディアールが頭に腕を組んで門にもたれかかっているのが見えた。
「よう!さっきぶりだな!ハッハッハ!さあ、飲みにいこうじゃないか!」
サムズアップで歯を見せて陽気に笑うディアール。こちらに近づいて肩を叩く。
「ああ、行こうか。ところでどこの飲み屋に行くんだい?」
「『詩人の隠れ家』って酒場さ!ちょっと歩くぞ。」
そう言って背を預けていた門から離れると彼は手招きをして歩き出した。
南西部の通りから外れて入り組んだ路地に入り、たどり着いたのは何ということもない背の低い赤い屋根の普通の家だった。看板も何もない。
ディアールは何てこたないようにぶっきらぼうに木の扉を押して、さあ、どうぞというように手を広げる。
中は階段で下りるようになっており、地下に掘られて作られているのだと分かる。おっかなびっくり降りていくと、中は思ったよりも広く、そして、思ったよりも人がいる。木で骨組みが作られた石壁の半地下には板張りのホールがあり、カウンターの裏に積まれた樽から忙しそうに給仕が酒を運んでいる。雑談や笑い声、愚痴や失敗談が様々なところから沸き立ち、酒場の濃密な匂いが鼻腔を刺激する。
若いのがいれば老人もいる。農民もいれば職人もいる。聖職者や魔術師もいれば傭兵もいる。NPCもいればプレイヤーもいる。髪の色もばらばら、服装もばらばら。ただ一つ共通して言えるのは、みんな酒を飲んでいるということだけだ。
空いている席に腰をつける。よっこらせ...
「さて...何を頼もうかな...」
「ここは、酒が安い割に美味いんだ!あとは、ソーセージだな。まあ、俺の奢りだから任せてくれ。おーい、お姉ちゃん!」
白いワンピース(下の部分が膨らんでいる)に模様が描かれた赤色のバンダナとエプロンを着けた給仕が駆けてくる。
「とりあえず、カザフォス、ハダオラをジョッキ二つずつ。あと、ビアシンケンとカレーソーセージと、ロビス芋を一皿ずつ持ってきてくれ。」
ディアールが厨房へ行く注文を伝えに行く給仕を目で追いながら言う。
「ここのウェイトレスはなかなか可愛いだろ!あのフリフリがいいんだよな。」
どうやら彼は制服フェチなようだ。
「うーん...まあ、そうかな...?確かに可愛いかもしれない。うんうん...
ところで、こんなところがあるんだねぇ...なんというか、いい雰囲気だ!」
グラッセ村で立ち寄った酒場は陰気くさくて、ジメっとした感じだったがここは全体的に陽気だ。灯りもどうやら蝋燭ではなく何らかの装置(電灯ではない)を使っているようでかなり明るい。
「ハハハハ!そうだろう!」
肩をバンバン叩いてくる。
そうこうしているうちに、先ほどのウエイトレスがカウンターから酒を持ってきた。
「お先にカザフォスとハダオラお持ちしました。」
ジョッキが4つドンっと置かれる。
「カザフォスがこっちで、ハダオラが黒いやつだ。最初はカザフォスからがいいぞ!」
両方ともビールだな...カザフォスは、日本のビールっぽい色をしている。黄金色のいい色味だ。ジョッキもよく冷えていて旨そうだ。
ハダオラは黒いビールだな。黒いビールってあまり飲んだことはないが、どんな味だったけな...
「ささ、カザフォスのジョッキを持って!」
黄金色の液体が入ったジョッキを右手に掲げる。
「えーっごほんっ...ギター熊!今日は魔術師ギルドデビューおめでとう!そして、初依頼達成もめでたい。酒を飲むにはふさわしい日だ!ハハハハッ!今日は俺の奢りだ。遠慮なく飲んでくれ。乾杯!」
「乾杯!ありがとうディアール!」
ジョッキをぶつけ合う。黄金の液体が白い泡とともに揺れ動く。
グビッグビッ
「「くふーーーーーっ」」
キレッキレだなこりゃ。のど越しが滅茶苦茶いい。しかも辛口なんだが、少しだけフルーティーさもある。飲みやすいなコレ。
「ディアールよ...枝豆ない?」
「エダマメ?なんだそりゃ。初めて聞いたんだが、そりゃ豆なのか?」
「ないのか...そうだ。豆だ。酒に最高に合う豆だよ。」
あとで、チコに枝豆がないか手紙で訊いてみるか...枝豆がないと酒飲みは半分死んだようなものだ...
「ロビス芋お持ちしました!」
厨房からウエイターが芋のスライスしたものが大量に乗せられた大皿とパンのカゴを持ってきた。
ダブル炭水化物やん...
「エダマメとやらも食べてはみたいがこれもなかなか酒に合うぞ!食ってみろ!」
スライスされ焼かれた芋をフォークに差して鼻の前で眺める。ジャガイモより随分白っぽいようだが...?
カザフォス少し飲んでから...パクリ
香ばしい香り、うっすらと塩味。若干粘っとしているが逆にとろみがあり外はカリッと中はトロっとしているな...確かに旨いかも...
洗い流すように黄金色のビールを飲む。うん...ありだな...
「今度はこっちの黒いのも飲んでみてくれ!」
どれ...ゴクリ
うっ...癖のある味だな...サザエの壺焼きの残り汁のあの苦味と味がするような...
「どうだ、旨いか?」
「ちょっと、変わった味だな...」
「ハッハッハ!そうか!口に合わなかったか。旨いんだけどなぁ。」
ディアールは豪快にグイグイビールを飲む。まるで水のように。実際、そこまでアルコールがあるように感じられないけど...
「ところでギター熊よ...ってなんかギター熊は長いし呼びにくいから、ギターでいいか!あ、オーケー?
ギターは今日どんな冒険をしたんだ。初めての冒険だったんだろう。おっさんだがな。ハッハッハ!」
そう言うとディアールは、スライスした芋をフォークに5つ差して大きく開けた口に送り込みモグモグしている。
「まあ、おっさんだが...おっさんが冒険に胸を踊らせたって良いんだ。おっさんの前に少年だったんだからな。」
「なんだそりゃ。ハッハッハ。でも、それは確かにそうだ!」
「で...俺の初めての冒険だったか?順を追って話すのは苦手なんだが、頑張ってみるか...」
サザエの残り汁の味がするビールをちびちび飲む。
「あれはいつのことだったか?そう今日の昼前のことだったな...魔術師ギルドと衛兵の詰め所でポーション配達と草刈りの依頼を受けた俺はまず北の草原に行ったんだ...そんで草を焼いた。」
「魔法使ったんだな?最初はファイアーボールだっけか?」
「そうだ。火の玉が目の前から飛び出た時は目ん玉が飛び出るほどびっくりしたよ。あれは楽しいな...草がボウッと一直線に燃えていくんだ。あと、ヒートハンドとかいう訳の分からない魔法も最初から使えた。しかし...高温なるのと火に手を突っ込んでも燃えにくくなるのに気づいたんだが、いまいち使いどころが分からなくてな。」
「ああ、ヒートハンドか。あれはちゃんと練習しておいた方がいい。最初はパッとしないが派生が便利だ。ま、軽めの人体改造みたいなもんだ。強敵と戦うためにはマナを体に慣らして融合させていかなければな。この世界では生きていけないぞ。おっと、開拓者は復活できるか!ハッハッハ!!」
人体改造?!あのアイロンが?どういうことだ...
「まだ一日目のギターにはまだ早い話さ。だがそのうち分かってくることだ。さ、続きを聴かせてくれ。」
まあ、いっか...
「おう...確かその後、魔法をバカスカ打って、MP切れになった。それで俺は瞑想ってのを試してみることにした。あぐらをかいてぼんやりと座ってたら春の陽気というかな、風も気持ちよくてそのままぼーっとしていた。それで、確かな...草むしりに飽きたんで村へと向かったんだ。こんな感じに口笛を吹きながらな。」
ア○イジング・ブルースのサビの部分を軽く奏でる。
「おっうまいな!ハハハッ!」
ディアールが手を叩く。
「ビアシンケンだよ!」
ドンっ
三角巾を頭に巻いたおばちゃんがテーブルの上にハムのスライスが載った皿を乱暴に置いて去っていった。
「おっきたか!ビールと最高に合うつまみだ。食べてみな!」
どれどれ。指でハムをつまんで口にいれる。
「う...うまい...?!はっこれはまさか...ビールと合う...だと...
衝撃の旨さだ。肉で脳をぶん殴られた気分だ。そして、カザフォスを飲んだときは肉の甘味が引き立ち、ハダオラと飲んだときは肉の香りが引き立つ。いや、このハムの方がビールを際だたせているのか?
おーなんてこった...!」
ニヤニヤとディアールが笑っている。
肩をすくめてフッと息を吐くと、おもむろにハムを手に取りロビス芋を1枚挟んだ。そんな...まさか...嘘だろそんなことがあり得るのか?!
そのまま口の前まで持って行くと匂いをすーっとかいでから彼はそのハムと芋のコラボレーションを小さくかじった。そして、黒ビールをちびっと飲む。そして目を閉じて瞑想し始めた。
僅かな間閉じられたまぶたが開かれた瞬間。グラスの中の液体と手に持っていた物体は消え去った。
「かーーーーっ!うっめえな」
その飲みっぷりを見て唾が喉を落ちていく。すぐさまハムを手にとり、芋を挟み...口に運ぶ。
「こ...これは、ビール!」
黒ビールを喉に流し込む。息をつく前に残りを食べる。うまい!
「いい組み合わせだ。舌の上で肉と芋とビールがマイムマイムを踊っているよ!」
「ハッハッハ!!!まだまだ旨いものはあるぞ。だが、旨い飯と酒じゃあまだまだまだ腹八分目!ワクワクドキドキの土産話を聞かせてくれよ!」
「あれ...どこまで話したっけな...?」
額に手を当て思い悩む。ゴブリンと闘った話ってしたっけ?あれ...いつだったかな?
ギター熊はワカメ色の髪をかきむしり、記憶の中からゴブリンと出会ったキッカケを思い出した。
彼は深く息を吸って情景をよく思い出せるように目を瞑った。そして、そっと口笛を吹き始め...
酒場にゆったりとし、かつ、壮大な大自然を彷彿とさせる旋律が響き渡る。荘厳な神の降臨の音楽かもしれぬ。酔っ払いの耳にとってはだが。
「どうだい見事なもんだろう。俺の演奏に聴き惚れて一匹の哀れなゴブリンが草をかき分けてやってきてな...」
例えアルコールが実際には一滴も体を流れていなくても、飲んだくれ共は楽しそうに杯をぶつけ口からくだらない与太話をだらだらと吐き続けるのだった。しかし、それは当人たちにとってはどんな英雄伝にも勝るとも劣らない極上の詩であるのだ...一日の終わりにこのような酒が飲めるのはなんとも羨ましいことではないか。
いや、彼らだけに飲ませるのはもったいない話だ。グラスはもったかな?では、今日という素晴らしい一日の終わりに...乾杯!
to be continued...
ということで行き当たりばったりの一日目が終了しました。拙い文章ですが、読んでいただきありがとうございます。
さてさて、第一章のテーマですが、メタすぎますが本編の裏を張ることです。
まず、主人公ですがおっさんにしました。(まだ自分おっさんでないのでおっさんじゃないじゃんと言われたら申し訳ねぇ...)おっさんなので、先に行くことにこだわりはなく、シャンフロ内のいわゆる一般ピーポーという立ち位置にいます。そう、この物語は最前線に立つ廃人や変態や外道ではない普通で大多数のモブプレイヤーの物語なのです。いや、サンラクさんラビッツ籠もるから一般プレイヤーの生態に謎が多いんじゃ...だから、爽快な冒険劇ではなく、「あなたは広大なシャンフロ世界の観光客だ。」と思って視聴していただけたら嬉しく存じます。おっと...さすがにelonaの観光客ではありませんよ!はっはっは...(種族が選べないのは残念ですね。)
他の要素は、オマケです。ジョブ選択:魔法使いが本編だと空気なので魔法使い。elona:カルマ値?ユニークアイテム?...親和性高い。精霊にもろもろのアレ(ウミャアアア)やアレ(オニイチャーン)をぶち込もう(狂信)。演奏:VRで特に何の意味もないのに演奏ってクールだろ(適当)。クトゥルフ:ペンギンと亀、ぶっちゃけ神話的恐怖に相当してるからそのままは出さないけど始原以外の発狂生物もありだな...(探索クソゲー待ったなし)。NPC:きっと聖女ちゃん以外にも癒やしはいっぱいおるんやで...。アイドル...?何のことですか。チュートリアル:チュートリアルスキップされたから捏造しよ。宗教:所々の文章を見るにこのゲームってAI同士で生態系・歴史シミュレーションしていたと思うので、宗教もある程度下地があるのでは。PK:幕末やGH:CほどじゃないにしてもPvP見たいなぁ。闘技場?知らんなぁ。農業:きっと神ゲーだから農業もめっちゃ面白いんちゃうか。料理:飯さえ美味ければそれすなわち神ゲー。まずければクソゲー。酒:実質タダで飲めるっていいな。
第二章は主人公がシャンフロに少し慣れてきたあたりから始まります。