男が演奏している横に看板が立っている。あなたは看板を読んだ。...投げ銭歓迎!石は投げないでください... あなたは周囲を調べた。... ...何かが見つかりそうだ... 投げやすい小石を見つけた!   作:ネコ文屋

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ギシャアアアアア
4946文字


03_夜間の平原を駆け?抜けろ!

 ポーション、装備などを各々で準備した後、我々は、西門前の広場に集合した。

 

 

 

って...

 

 

 

「ぶはっマサカさん、まさかの逆立ち。」

 

「逆立ちっアハハハッ!さすがっすね!」

 

 

 

 集合場所に最後にやってきたのは逆立ちで歩くマサカさんだった。あんたすげーよ、すげーよ...!

 

 

 

「移動する時はできるだけ逆立ちで行く縛り故に。これも逆立ち道のため、許せ。」

 

 

 

「そんなんで戦えるのー?」

 

 

 

「某がこのゲームを始めてからもう1週間たったがほとんど逆立ちで過ごしておる。今では逆立ちで小走りもできる。それに、こう見えてもVRカポエイラ道場で免許皆伝を修めた身。戦闘でも安心して任されよ。」

 

 

 

「そ...そうなんだー...」

 

 

 

 あれっ?カポエイラってずっと逆立ちだったっけ?よく知らないから分からないけど...

 

 

 

「よぉし...みんなそろったし、行こうか!」

 

 

 

 カンテラを腰に吊る下げて暗闇の草原へと向けて足を踏み出した。いや...足と手を踏み出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 暗闇の草原はソロだと若干厳しい物があるが、対処できるレベルだ。昼はゴブリン、大ネズミ、角ウサギ、大カタツムリ、やたら攻撃的なスズメやハト、モグラ、羊、ロバなどがいるんだが、夜はそれらの強化体及び捕食者が現れる(当社調べ)。

 

 

 

 基本的に狙いが見えやすく、避けやすいので安心だ。

 

 

 

 GRRRRRRRRRR

 

 

 

 早速野犬たちのお出ましだな...4体で道をふさいでウロウロしている。

 

 

 

 話をしながら歩いていたので横並びだったが、早速トマトサイダーとロッコが前へと飛び出す。

 

 

 

「ひゃっっっっっっはあああああああ!」

 

 

 

 トマトサイダーが敵の真っ只中に行き、ハルバードを持って1回転。

 

 

 

「うわっ危ないよ!奥のもらうよ!」

 

 

 

 ロッコがたたらを踏んで文句を言った後、奥に吹っ飛んだ犬に走り出す。

 

 

 

「はいっすうううう!」

 

 

 

 そのままの勢いで2回転目に突入し、逃げようとする野犬をなぎ倒しながら、上へと飛び上がり振りかぶった斧が、倒れた1体に振り下ろされる。

 

 

 

「オーバーキルだなぁ...」

 

 

 

 その様子を野犬の首根っこを掴んで、エクスカリバールを振り下ろしながらじっくり見て、大技のモーションを堪能する。

 

 

 

「っと...もう全滅させたか。」

 

 

 

 マサカもなんか分からないうちに1体倒していたようだ。どうやって攻撃したのだろうか...気になる...

 

 

 

「インベントリにドロップが入ってたー!ドロップは自動配分されるみたい。」

 

 

「そっすね。これなら後で配分調整する必要はないかもしれないっすよ。」

 

 

「いや、パーティー結成時に配分方法の設定があったんだけど、まだいじってないんだ...多分自動配分になっていない。さっき見てみたら配分方式として、戦闘ごと、パーティー解散時、任意の3方式があるんだが、戦闘ごとだと確認が面倒だし、パーティー解散時でいいよね。」

 

 

 

「まあそうっすねー。」

 

 

 

 

 

 雑談しつつ夜の平原を進んでいく。

 

 

「トマトサイダーくんのメイン武器はそれ?」

 

「今んところそうっすね。」

 

「さっきの回転する技なんてゆーの?」

 

「えーっと...確か大回転切り(トルネードスラッシュ)だったすね!」

 

「使うときは今度から先に言ってよね。」

 

「あ、はい。」

 

「ギター熊殿はバールのようなもので戦っていたがそれはMPの節約のためであるか?」

 

「そうそう。魔術師はMPが切れると一気に置物になっちゃうから節約できるところはしないとね...」

 

「ほほう。」

 

 

 

 カンテラの明かりが歩みと共に左右へと揺れる。

 

 

 

 夜間の戦闘と昼間の戦闘の最大の違いは視界の広さである。一寸先は闇なんて言葉があるが、何も明かりがないところでモンスターと戦うというのはぞっとする話だ。雲がなく晴れている場合は月明かりでうっすらと輪郭が見えることは見える。しかし、それがどのような攻撃をしてくるのかははっきりとは分からない。一方で、夜行性の動物というのは闇を見通す目を持っているものだ。

 

 

 

 そこで我々人間にはカンテラの灯りが必要となる。一部のジョブでは夜目に対応するスキルを身につけることができるらしいが。

 

 

 

 灯りがないのなら、よく目を凝らして注意して見なければ、普通の只人は闇に呑まれて気づかぬうちに死んでしまうだろう。

 

 

 

 最も誘蛾灯に招かれた怪物たちに襲われるのと引き換えの話であり、夜は大人しく街にいるのが正解なのだろう...NPCにとっては。

 

 

 

「右手からゴブリンが来てるよ!」

 

 

 

 闇に紛れてゴブリンどもが6体現れる。槍2体、剣4体。まーた、ゴブリンか...

 

 

 

「よし...ホワイトフォッグ。」

 

 

 

 バールから白いもやが飛んでいく。そう...このバール、杖にもなるのだ。ただし強化率はほぼないが!

 

 

 

 集団で移動するゴブリンたちにぶつかり、顔にまとわりついた。

 

 

 

 ゴブリンたちはゲギャゲギャと、うっとおしそうに手を振って、顔にまとわりつく霧を払おうとする。しかし、散らしてもまた霧は顔に集まってしまい諦めてしまった。

 

 

 

「おぉ!霧であるか?!」

 

 

 

「みんな!ちょっと待っててくれ...ゴブリン狩りは日課なんだ。デモンストレーションがてらゴブリン狩りの技をお見せしよう。

 

 

 まず、多数のゴブリンが出てきた時は霧を出し視界を防ぐ。私はあまり速くないのでね...」

 

 

 

 バールを腰帯に取り付けた鞘に刺し、右手にスローイングダガーを出現させ、ゴブリンたちの足に投擲する。

 

 

 

「視界を奪った後はゴブリンの足を奪う。これでゴブリンたちの機動力はないようなものだ。後は煮るなり焼くなり投げるなりバールでどつくなりするだけだ。」

 

 

 

「いや、ゴブリンただでさえ歯ごたえがないのにこんなんじゃ豆腐より歯ごたえないっすよ!」

 

 

 

 うずくまってダガーを抜こうとしているゴブリンや闇雲に剣を振るって疲れきっているゴブリンを見て、憤りを見せるトマトサイダーくん。

 

 

 

「戦いに卑怯はないのだよ...もっとも暗闇でこれをやるとダガーの回収が大変なのだが、今回は無事全部命中したようだ...良かった。」

 

 

 

 そう言いつつバールで殴りつけに行くかと思ったら、ロッコがいつの間にか颯爽と駆けていき...ゴブリン二体の喉元を切り裂いてゆく。

 

 

 

 うずくまる敵の頭を踏み、飛び上がると身を捻りながら残りのゴブリンの頭へと短剣を投げつけ、シュタッっと着地する。

 

 

 

「ふっ...甘いよギター熊さん。短剣投げるのは私の方が得意だよ!」

 

 

「ぐぬぬ...本職には勝てないか...」

 

 

「みなやりおる。某も見せ場が欲しいぞ。次は譲ってくれぬか?!カポエイラ範士(※自称)の力見せてくれよう。」

 

 

 

 逆立ちのまま膝を屈伸させ、マサカが言った。それなら、任せてみようじゃないかということで次に獲物が来たときはマサカにまず戦ってもらうことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ホーッ、ホーッっと暗闇に鳥の鳴き声が響き渡る。

 

 

 

 鳴き声の発生源はどこかとあたりを見渡すと、森から何らかの影が飛んできているのが見えた。

 

 

 

「これはもしかしなくてもフクロウだなぁ...私が相手しようか...?飛ばれるときついだろう?」

 

 

「ぬっ大丈夫である。任されよ。」

 

 

 

 そう言うとマサカは逆立ちの姿勢を止めて地面に足を着けた。えっ...逆立ちのまま戦わないんか...

 

 

 

 

 そして彼は奇怪な動きをし始めた。リズムをとるかのように横に揺れ動き、頭を上下させる。そして、フクロウの方へ声を上げながら向かっていく。

 

 

 

 はっ...そう言えばカポエイラはダンスの要素を兼ね備えた格闘技と聞いたことがある...

 

 

 

 HooooooooooOO!

 

 

 

 全長2mの大きさのフクロウが急降下し、鋭い鉤爪でマサカを掴みとろうとする。

 

 

 

「ぬうっん!」

 

 

 

 マサカの足が地面から離れ宙に浮いた。そして体がグルりと回転し、伸ばされた脚がフクロウを襲う。

 

 

 

 Hoo!

 

 

 

 しかし、フクロウは警戒していたのだろう。直前でスピードを緩め、軌道を変えて危うげなく避けた。再び急上昇し低い鳴き声を夜の平原に響かせながら機を伺うフクロウ。

 

 

 

 そしてまたダンスし始めるマサカ。くぅ~...避けられたか。

 

 

 

 再び急降下してくるフクロウ。

 

 

 

 マサカは今度は態勢を低くして...フクロウの鋭い爪を避ける。そして、片手を一瞬ついて片足立ちで通り過ぎるフクロウに回転蹴りを放った。

 

 

 HgyaAOo?!

 

 

 尾の部分にあたりフクロウの巨体が左右にぐらつく。されど態勢を持ち直し、また手の届かない空へと上がっていく。

 

 

「ぬぅ...浅かったか!」

 

 

 フクロウは大きな翼でゆったりと羽ばたきながら空を旋回して、くちばしをカチッカチッと鳴らし威嚇している。

 

 

 

 しばらく様子をうかがっていたが、上空にいる自分に攻撃することができないと安心したようだ。ホーッと一鳴きしたあと、断続的に鳴き声を上げながら、今度は真上からくちばしを先端にして真上から猛スピードで落下してきた。

 

 

 

 マサカは後方へと身を引いて、堅いくちばしによる一撃死の危機から逃れた。しかし、風圧により足が地面に縫い止められる。

 

 

 

 フクロウ地面へと接触する瞬間、衝撃音と風が辺りに吹き荒れた。

 

 

 衝撃によって小さなクレーターが形成される。

 

 

 地面に突き刺さったフクロウは大きな翼を広げ羽ばたき、くちばしを引っこ抜く。そして、首をかしげ...

 

 

 

 HOOOOOOOO!

 

 

 

 耳がキーンとなるほどの雄叫びをあげた後、マサカに向かって飛び跳ね、獰猛な蹴りを放ち爪で体を貫こうとする。

 

 

 

「ぬぅ...」

 

 

 

 マサカは身を低くしたり、宙返りしながら、フクロウの啄みや蹴りから逃れるも、明らかにペースを持ってかれている。

 

 

 

 これはいけない...と思った。思ったよりもヤバめのモンスターだ...もし、俺がソロで遭遇していたら死んでいただろう。少し甘く見ていたか。夜の森の獣を。

 

 

 介入するか...いや...マサカさんは一人で戦いたいと言った。その思いに水を刺すのも...あぁ...もどかしい。魔法での遠距離攻撃をしてよいものか?ターゲットこちらに移った場合、最初に落ちるハメになるかもしれない。

 

 

 いや、トマトサイダー君に行ってもらって二人で戦ってもらうか...?

 

 

 

 

 思い悩むながら、苦しみつつ闘うマサカさんの姿を見つめる。

 

 

 

 そうしているとふと気づいた。

 

 

 

 太鼓を叩いてみたいと。

 

 

 うん...?ふつふつと湧き上がる謎の欲望に疑問を感じ、その欲望の源泉は何かと考える。

 

 

 そうだ...リズム。最初のマサカさんの動きにはリズムがあった。しかし、今はない。崩れてしまっている。

 

 

 太鼓でそのリズムを整えてあげることはできないだろうか?

 

 

 

 

 インベントリから樽太鼓を取り出し左手に抱える。右手にバチを持って...俺は太鼓を叩いた。

 

 

 

 トントトントントトン

 

 

 

 太鼓を叩き始めると、フクロウ含めみんなこちら顔を向けてくる。それに構わず、太鼓を叩き続ける。

 

 

 

 マサカがハッとした顔をして、太鼓のリズムに合わせて動き始める。左右に前へ後ろへ太鼓の音に合わせてステップを踏み込む。

 

 

 

 それに呼応してこちらに若干気をとられながらも、フクロウは猛然とマサカへと襲いかかる。息のつく間のないコンビネーション。翼で加速したり、風圧をかけ牽制しつつ、マサカを仕留めんとくちばしで突き、鉤爪で切り裂こうとする。

 

 

 

 激しくなる攻防。その中で少しずつマサカの蹴りがフクロウを捉え始める。

 

 

 

 トトトットトトトットトン

 

 

 

 変幻自在な蛇のように相手が攻撃すると形を変えて、そのまま攻撃に転ずる。勢いが死ぬことなく位置エネルギーが両脚に籠もる。蹴りに押され、ジリジリとフクロウの足が後ろへとさがり始めた。

 

 

 

 Hooo?!

 

 

 

 マズいと思ったのだろう。フクロウは大きく後ろに飛び跳ねて、後退する。そして翼を羽ばたかせて...逃げようとするが...

 

 

 

 ぴったりとついていったマサカが飛び跳ねながら、勢いよく脚を回転させて、逆立ちになり手をフクロウのすぐ前の地面についた。そして、手で地面を蹴って...

 

 

 

 2連撃。

 

 

 回転するマサカの二つの脚が続けざまにフクロウに強烈な蹴りを見舞わせる。

 

 

 

 頭から崩れ落ちようとするフクロウ。さらにマサカは身を捻りながら、片足立ちでもう一度蹴りを加えた。

 

 

 

 HOOOooooo...?!

 

 

 ドドンッ

 

 

 気合いを入れて最後に2回太鼓を叩いた。フクロウは爆発四散した。いや、光の粒子となり消え去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 マサカがこちらに歩いてくる。そして、こちらの目を見つめ...

 

 

 

 

 

 ガシィッッッッ

 

 

 セッションが終わった後、俺と彼は掌を思いっきりぶつけ合い、握った。

 

 

 

「ナイスカポエイラ...」

 

 

「ナイス太鼓である!」

 

 

 

 へへっ...こう言うのも悪かねぇな...




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