男が演奏している横に看板が立っている。あなたは看板を読んだ。...投げ銭歓迎!石は投げないでください... あなたは周囲を調べた。... ...何かが見つかりそうだ... 投げやすい小石を見つけた! 作:ネコ文屋
マシマシ
木の枝からぶら下がった大きなイカが振り子のようにして、こちらに向かって飛んでくる。イカす移動法だな...
横に、ステップを踏み、左手をガイドラインとして横側に転がりながら避ける。
すぐさまイカの進行方向を見ると違う枝にぶら下がり、飛び移り、方向転換をしようとするのが見えた。
熱く焼けた鉄串を手首のスナップを使って、イカに向けて投擲する。
しかし、揺れているイカに鉄串は命中せずどこかへと消えていった。
イカは2本の長い触腕でさらに上方の枝を絡め取り、ターザンのごとく枝を飛び移りながら、牙はないがまるで食べようとでもするかのようにめいいっぱいに触手を広げ飛び込んできた。
横へ飛び込んで避ける。
後ろを通り過ぎたイカは地面に落ちることなく、再び幹や枝に触手を伸ばし器用に方向を変えて、再び迫ってくる。
鉄串をもう一つその大口に投げ込む。
BrrrrrrrR
触手で幹を絡め取り急激に方向転換することでまたしても避けられた。
くっ...これは...当たらないと当てられないか。手数も技量も速度も範囲も不足している。肉を切らせて骨を断つしかないようだ。
Brrrr
触手で折られた大きな枝が回転しながら、こちらに飛んでくる。また投げてくるのか...厄介なイカだ。
身を地面に投げ出して避ける。起き上がった時、再び触手を広げてイカが飛び込んでくる。
よし...やってやろうじゃないか...チキンレースを...
正面からイカを待ち構える。
飛んでくるイカが大きく膨らみ飛びかかって丸呑みにしようとしているのがなんとなく察せられた。
その大きく開いた口に向かって右手に持っているものをすべてお見舞いしてやる!
よく燃える木の棒と残りの鉄串をすべて一気に広げられたイカの触手の中心へと投げ込む。
「机!サンドウォール!」
触手がまもなくこちらに到達しようとする瞬間、即座にインベントリから目の前に机を横倒しに出現させ、その後ろに素早く砂の壁を構築する。
机へとイカがぶつかる瞬間。
ドゴオオオベキッッッッッ
机が破壊される音が響き、こちら側に砂の防塁が弾け飛ぶ。
散弾のように飛び散った砂が全身に打ちつける。衝撃に耐えかねて、足を後ろへと下げると、先ほど投げられた木の枝につまづき転倒した。
「ペッ...最悪だな。」
口に入った砂を吐き出し、よろよろと立ち上がると焼け焦げた臭いがする。
イカの口からこぼれたよく燃える木の棒が机を焼いていた。机を破壊した時の衝撃で身動きがとれていないようだ。
「ようやく大人しく焼かれてくれるか。燃料を追加しないとな...」
足元の枝を両手で持ち上げ、砂を被っても火が消えないよく燃える木の棒と一緒にイカの身体の上へと投げ込む。現実でやったら間違いなく腰を痛めている。
「ロックニードル。」
イカの下の地面から石の針山が飛び出し、イカの体を地面に縫い止めた。
やれやれ...ようやく安心できそうだ。そう思って、MPの節約のためにバールで殴りつけようとして、近づいていくとイカが大きく身体をうねらせた。
身をよじって体の上にあった太めの木の枝を振り落とし、
燃え盛る机から転がって逃げようとするが、イカの身体に刺さった石の針山が行動を阻害する。しかし、逃げようとする動きに合わせて、机と石が破壊される音が聞こえてくる。うかつに近づかない方がいいな...手負いの獣が一番厄介だ。
MPが半分近く減ったな。一応、飲んでおくか...
ステータスを確認し、インベントリからMP回復用のポーションを手にとり、飲む。生ぬるい薬品の味だ。若干苦い...
「っと...追い炊き追い炊き。ヒートハンド、ファイヤーボール。」
机に向かってファイヤーボールを打ち、火が消えないようにする。
「もう一つ固定しとくか、ロックニードル。」
胴体ではなく頭のほうに石の針山を生やす。
「もうちょっと燃料を追加しとくか、エアーカッター。」
風の刃を放ち、切断した木の枝をイカの身体に降らせる。
重さで身動きが取れなくなるまで同じことを繰り返し、再びファイヤーボールを放った。
めらめらと燃え盛る炎。覆い被さった木の枝がパチパチとはぜる。
良い火加減。炎が対流する様子がとても綺麗だ...どことなく良い匂いがあたりに漂う。
はっ...
冷静になって考えると机を無駄にしてしまったのは地味に痛いな。とっさに盾として使ってしまったが...これは赤字かもしれんなぁ...
保険としてもう一度イカの身体があるとおぼしきところに石の針山を生やす。
これで一安心か。
手が空いたので身動きのとれないイカを放置して、いまだ混戦状態の現場へとバールを持って突入する。
現在の状況を確認すると、先ほどよりリス、サルの数がぱっと見て減っている。一方で、オークはいまだに健在だし、ネズミもあまり減っていない。攻撃が当たってはいるが、比較的タフなようだ。ベルは音を鳴らしながらふわふわと浮いている。
混戦状態なので、多少は入れ替わりやバックスタブなどのちょっかいをかけてはいるが、基本的にマサカはサルたち、トマ君はオーク、ロッコはその他の敵を相手取っているようだ。
オークは耐久性と膂力、サルは敏捷性で負けそうだから、ロッコと同じようにネズミとリスの駆除に務めようか。
「このネズミ死ぬほど硬いよー!武器の耐久値が削れちゃう!というか、ターさん!何あれ、放火しないでよ!」
近づいて来た俺に気づいたのか、ロッコが色々喚いてくる。
「いや放火したけど、好き好んで放火した訳じゃない!イカが悪いんだ。俺は悪くない。できることなら放火したくなかった。一人で対処するには仕方のないことだ。まあ、森に燃え移ったら移ったで別にいいだろう。死んでも死に戻る...そんなことより、ネズミやっぱり堅いのか?」
目をぱちぱちさせて不満気にこちらをみた後、舌打ちして、ネズミを蹴りながら話す。
「メインで使ってた短剣がもうボロボロ!携帯の研石とかあったら買っとけば良かった!」
やはり、硬いのか。嫌になっちゃうな。蹴る分にはそこまで硬さは感じないのだが...攻撃するくらいの威力になると...
「確かにこりゃだめだ...弾かれる。」
これは打撃も思ったより通らないんじゃないか?
二人でネズミを蹴ったり、投げたりしてもあまりダメージを受けている様子がない。弱い体当たりしかしてこないから、こちらにも被害はないのだが。
うーむ...?ふむ...そうだな。
「いっそのこと武器として使ってみるのはどうだろうか?」
「ブキ?」
「そう、武器。」
ロッコが訝しげな目で見てくる。
「ほら、ちょうど持ちやすそうな大きさだ。硬さも十分。尻尾を持てば振り回せそうじゃないか?」
「はぃい武器?えっ本気?」
やれやれ...ロッコはいささか頭が硬いようだ。
「本気、本気。実演してみようか。」
そこらへんをうろちょろしているネズミに飛びかかって、抱き上げる。ちょっとジタバタして暴れるがそれほど強くない。
「ほら...こうして抱きかかえて尻尾を持てば...」
ネズミの尻尾を持って目の前でブンブン振り回す。
「即席モーニングスターの出来上がりだ。有効範囲は短いが投げてもよさそうだ。」
「えー...いやだな...ネズミ持ちたくない。汚そう。」
ロッコはすごい嫌そうな顔をしてぼやく。
「何が不満なんだい...?ネズミかわいいじゃないか。ほら...あの全世界で有名なキャラクターも、人気ゲームのキャラクターもネズミじゃないか。大丈夫、大丈夫。汚くないよ。」
両手に持った2匹をファイヤートーチの要領でぶんぶん振り回す。
ぶちっ
「あっ...」
尻尾が切れた。一匹が明後日の方向へ飛んでいく。
「尻尾は弱いんだね...」
「そうみたいだなぁ...」
飛んでいったネズミが木に衝突しひっくり返って気絶した。
「これって部位破壊ってやつなのかなー?ほら、狩りゲーとかでありがちな。」
「狩りゲー...あまりやったことないんだよなぁ...」
少しはやったことがあるが、本格的にやった経験はない。首を捻っているとロッコが気絶したネズミの方へ走り出す。
「刃が弾かれない。ダメージ通るよー!」
気絶したネズミを蹴り上げた後、短剣でネズミにを切りつけてから、ロッコがそう言った。
「尻尾が弱点部位なんじゃないかな!」
そう言うとロッコはその辺のネズミを押さえつけ、尻尾を切りつけ始めた。さっきまで触りたくないって言ってなかったか...?
尻尾を切り終えるとネズミは悲鳴を上げて気絶した。
「やっぱり攻撃が通るよー!気絶したからか、尻尾が切れたからか分からないけどね。」
ロッコが何度も切りつけてネズミを倒した。なるほど、尻尾を切ると気絶して攻撃が通るんだな...面倒くさいモンスターだ。ゴブリンの素直さを見習ってほしいよ、まったく...
もう片手のネズミも尻尾が千切れるまでぐるぐる回して、飛ばす。
そんなことを続けて3匹ほどやっていると、最初に投げたネズミが飛び起きた。毛が逆立っている。尻尾がないから真っ赤な針ネズミのようだ。
DhuuuuuuuDhuuuuuuu
「あれ...凶悪になってないか...?刺さったら痛そうだ。」
「うわっ...トドメささないとあーなるんだ。」
どうやら、一匹一匹倒さずに適当に処理していたのは俺の方だけだったらしい。まとめて、倒せばいいかなと思ったのだが裏目に出たようだ。
やれやれ...骨が折れるな...
DangDang
唐突に背後から地面を叩く音が聞こえた。後ろを振り返ってみると...
BRRRRRRRRRRRRRRRRRRRR
おぞましい咆哮が耳をつんざいた。
えっ...しつこすぎない...?と思うのもつかの間、
うぐっ...!
腹にイカの触手が振られ、そのまま巻きつかれ足が宙に浮いた。
浮遊感。視界が傾く。上へと急激に跳ね上がる。これはまずい!!!叩きつけられる?投げられて落下死?
思考が巡る。手札は何かなイカ?ふふっ...
特に思いつかず、考えている間に地面へと振り下ろされた。
衝撃が全身に走る。前に落下死した時もそうだが、ゲームだからか痛覚はどうも低めに設定されているようだ。
再び触手が持ち上がる。そうだ、ポーションを飲んでおこう。ステータスを素早く確認したインベントリからHP回復用のポーションを手にとりグビッとあおる。
再びなすすべもなく地面に叩きつけられた。
「大丈夫っすか?!」
トマ君の声が聞こえるが、見ての通り大丈夫じゃない。
こいつ、俺に恨みでもあるの...あるよなぁ...焼きイカにしようとしてたわ。
とりあえず触手に向かってゼロ距離ファイヤーボールを放つが、あまり効いていないようだ。イカりのあまり痛さを忘れているのか。ふふっ...
今度は木に叩きつけられる。
くそったれめ...インベントリから残りのダガーを出し、触手の根元に向かって投げつける。
Bomb!!!
爆発音。振動が伝わる。ダガーに爆発機能はないぞ?!
触手の力が抜け、地面へと落下する。
ぐへっ...受け身をとるがほとんど衝撃を殺せていない。ステップと前まわり受け身で再び振られる触手を回避する。
さっきのは多分ロッコだろう。
Dhuuuuuuu
うおっ...針ネズミたちもこっちに突進してくるんだが...
「ターさん任せてください!全力で守るっすよ。」
迫ってくる針ネズミが振るわれたハルバードにぶつかり、吹っ飛ぶ。触手も巧みなハルバード捌きで横へ逸らされる。
「すまない、助かる!」
HP回復用のポーションをインベントリから出し慌てて流し込む。今日はポーションを何時もの3倍仕入れたから遠慮なく使っていこう...ポーションでの回復に消化という工程がある以上、飲めるときに飲んでおかねば。しかし、ポーション飲んでると結構腹に溜まるな。というか重い...胃に。
「俺は防衛に徹しますから、ターさん攻撃に徹してくださいっす!」
「そうか...わかった!」
これがメイン盾というやつか!さっきまでバトルジャンキーしていた子とは思えない...てっきり騎士とは名ばかりの世紀末のヒャッハーだと思っていたよ...すまん...!
「では、お言葉に甘えて現時点での最大火力をぶっ放させていただこうか。」
「まじっすか!見たいっす!」
トマ君が期待の目で見てくる。人前で詠唱をするのは恥ずかしいのだが...お礼とお詫びを兼ねて残りのMPをベットしよう。
「ごほんっ...えー...っと、これか。」
パネルを操作し、魔術師ギルドから入手した魔導書を手にとり、しおりを挟んだページを開いて詠唱する。
「えー...悪鬼を焼く残り火は寄り集まり槍となる。」
宙から現れた細い炎が寄り集まる。そして、長い装飾もへったくれもない槍の形をした燃え盛る炎が掲げた右手の上に現れる。このままでも勝手に飛んでいってくれるのだが...そのままそれを掴み左足を踏み込む。左手を相手に伸ばし右手を引いて胸を反らす。
「猛き者の投げしその槍は堅き岩をも穿つっと...
詠唱を言うのと同時に自分が制御できる限界の速度で、槍を投げた。
ブオォン
炎の軌跡が空気を切り裂き、音を出しながら目にも止まらぬ速さで飛翔し...
BrRROoooERRRRRR
眉間を貫通した炎の槍は体内を焼き、体の先の木を貫通してから霧散した。
イカが断末魔をあげる。木が倒れる音がする。触手がへなへなと地面へと降りていく。
やったか...?と一応油断せずフラグを立てておく。
固唾を飲んで見守ると、淡い光がイカの体を包み、光ごと闇へと溶けていった。
よし...やったな.........うっ...
「ターさん、なんすかすげーっすね!すげー!かっけー!俺もやりたいっす!」
「......すまん。MPとスタミナ切れたのでしばらく...」
ドサッ
「守って...」
「ターさんんんん!?!」
崩れ落ちて動けなくなった俺はやっぱりこうなったかと思いながら、ロマン砲を打てたことにホクホク笑みを浮かべた。
Tips.激昂状態
モンスターは激昂状態に陥ると対象に対して超攻撃的な行動をとる。逃亡という考えは彼らの頭から消えているだろう。