男が演奏している横に看板が立っている。あなたは看板を読んだ。...投げ銭歓迎!石は投げないでください... あなたは周囲を調べた。... ...何かが見つかりそうだ... 投げやすい小石を見つけた!   作:ネコ文屋

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イッヒッヒ


10_ぶらりゆらりと魔女通り

 久しぶりにめちゃくちゃ美味い飯を食べた。幸せな気分だ。この美味さのチャーハンを出す中華屋さんが近所にあったら通いつめるレベルだ。値段にはよるけれども。

 

 

 

 

 満足感に包まれたままぶらぶらと適当に歩いていたら人通りがある道に出た。

 

 

 

 ここは...なんだろうか...?

 

 

 

 辺りを見渡すと怪しげな通りだ。ねじ曲がった小径(こみち)に色とりどりの煙がそこらかしこで立ちのぼっている。水晶を磨いている老婆がいたり、店の奥でぶつぶつと呟いきながら羊皮紙らしき古めかしい紙に何かを書きつけている毛むくじゃらの男がいる。また、鍋をかき混ぜてはニンマリとしている妙齢の女性がいる。

 

 

 

 面妖な...雰囲気だ...

 

 

 

 トカゲの干物や瓶詰めされた何かの腕、そういった物が店先に並んでいる店が正面にあるのを横目にしつつ、右手へ曲がる。

 

 

 

 これはもしかして魔法世界の...言わずとしれたハリ○タの...?

 

 

 

 そんな直感が頭をよぎる。

 

 

 ふっ...ふぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!キタコレ!魔法世界キタコレ!!!見える見えるぞ...長い白髭の校長が手招きしている光景が...目に浮かぶ!

 

 

「ふふーん、ふふーん、ふふんーふふー、ふふっふっふふーふ、ふふーふふー」

 

 

 思い浮かんだメロディーを鼻歌で歌いながら散策する。いいねぇ...いいねぇ...どんな店があるんだろうか...

 

 

 通りを通っている人たちもそうと気づけばローブ姿の人が多い。鎧を着ている人もいるが、金属鎧ではなく皮鎧でかなりの軽装備だ。中には、目元だけを隠す仮面を被った派手な格好をした人も歩いている。

 

 

 

 ニヤニヤしながらこれはと思った店にずかずかと入ってみる。怪しげなものが積まれている店だ。若干暗めだ。

 

 

 

「失礼しまーす...」

 

 

 中は照明がついておらず、店内を照らすのは窓と店先からの薄明かりだけだ。

 

 

 

「ようこそ...何かごいりようかな...」

 

 

 背が曲がった老婆がしわがれた声で返事をする。丸椅子に腰掛けていたのをわざわざ立ち上がってこちらへ向かってくる。

 

 

 

「あ...えと、これって何に使うものなんですか?」

 

 

 

 そこらへんの机の上に置いてある物を指差して尋ねる。特に何かが欲しいということはない、ただ珍しさから店に入ってきた冷やかしにすぎないが...

 

 

 

「あぁ...これはのう.......占い師が使うものじゃよ...」

 

 

 

 老婆はその指指した物を手にとり語り出す。

 

 

 

「これは(さい)を使った占いの道具での......神ならぬ人の身はこのようなものをつこうて...おのが運命(さだめ)を覗きみるのじゃ...」

 

 

「ほぉ...占いの道具ですか...」

 

 

 

 改めて見るに、溝や模様が彫られた八角形の水盆のようなそれほど大きくない器だ。

 

 

 

「さよう...占いの道具じゃ......(さい)ややり方によって占えるものは変わるがの......まあ...気休め程度ではあるが...どれ...お主の運勢を占ってやろうか...」

 

 

 そう言うと机の上の一画に置いてある石のサイコロをいくつか取り、コチコチと掌の中でぶつけあって音を鳴らす。

 

 

「こいつは案外と簡単なものでの......魔力も何もいりはせん...ほれ、このように...(てのひら)の中で転がしてから(ほお)る...」

 

 

 

 8面体のサイコロ2個と6面体のサイコロ一個が器の中でぶつかり合い、カラカラと音を立てて停まる。

 

 

 老婆はサイコロの目を見て、懐から出した冊子をめくる。あるページを指でなぞり、文章を確かめる。

 

 

 目を細め、少し考えてから語り出す。

 

 

「ふむ....悪くないのう...では、占いの結果を言うと、お主の行く先で予想外の出会いがある。その出会いが何がしかの利益をお主にもたらすだろう。幸運な出会いの一方で、お主自身はやりたいことは失敗が続いたり不調が続く。しかし、気に病むことはない。身動きがとれないことで、危険を避けることができる。甘い誘惑には気をつけなされ、迂闊に深入りすれば火傷を負うかもしれぬ...」

 

 

「.........なるほど?」

 

 

 なるほど分からん...気をつけろということだけが分かったが...いつ、どこで、何がということが全く分からないが...まあ...占いとはそういうものだ。要は心の持ちようだ。悪くないと言っていたしな。

 

 

 

「占い、ありがとうございます。」

 

 

「これは当たることもあり、当たらぬこともある...そういうものじゃから...礼は要りゃせんよ...ひっひっひ......」

 

 

「ははは...そういうものですか...。」

 

 

「どうじゃな...占いの冊子と器と(さい)のセットで4000マーニじゃ...これがあればどこでも占いができる...占いの初心者には持ってこいじゃよ。」

 

 

 

 うーん、高い。というか、占いにあまり興味がない。実際。

 

 

 

「他にはどんなのがあるのかな...?これ以外に...」

 

 

 

 薄暗い店内を見やると、まだまだ何がしかありそうだ。

 

 

「そうじゃのう......まぁ...うーん.......これはだめじゃな...よっこらせ......これはどうかのう......」

 

 

 そう言って棚から老婆が取り出してきたのは、古ぼけた袋だった。紐がほどかれ中身が取り出される。

 

 

 金属が複雑に組み合わさった物体が老婆の手の上にある。

 

 

「これは......知恵の輪?」

 

 

「さよう知恵の輪じゃ...無聊(ぶりょう)を慰めるのによいじゃろう...ほれ、手にとって見てみんさい...」

 

 

 知恵の輪なんて触るのいつ以来なのかと思いつつ、手に触れる。ガチャガチャと動かしてみるがとれる気配はない。

 

 

「どうじゃ...なかなか難しいじゃろう。取るには工夫が必要じゃて...」

 

 

「いやぁ...確かに案外難しいようです...これは...」

 

 

「ひっひっひ...解けた時は気持ちの良いじゃろうの...どうじゃ、これを一つ300マーニなんじゃが、5個買うなら1200マーニで勉強させてもらうがの。」

 

 

 つまり、一つタダ。そう高くないし、せっかくだから買っていくか。万が一、飽きたら投擲すればいいだろう。小銭よりは攻撃力が高いという可能性もある。端が丸くないからな...

 

 

「一セットもらおうかな?ところで一つお伺いしたいのですが、湿布薬が売っている店を知りませんか?」

 

 

 せっかくだから湿布薬について聞こう。住民なら知っているかもしれない。

 

 

「ヒッヒッヒ...ありがとう。袋に入れてやろうかね...ほれ。それで......湿布薬を売っている店じゃったっか......?」

 

 

 老婆は一度質問を聞き返してから眉間にシワを寄せて考え始めた。

 

 

「湿布薬...湿布薬......あぁ......!マクスンさんの所で売ってるのぅ......よう効く湿布じゃ......」

 

 

 

 

 

 

 

 

 セカンディルの地図は入手していなかったので、冊子『初めてのファステイア』の余白に簡易的な地図を描いてもらった。どうやら少し通りから小径(こみち)に入ったところにあるようだ。

 

 

 

「えーっと...ここかな?マクスン...薬品店...うん、合ってるな。」

 

 

 

 長年の風雨により黒ずんだと思われる看板にかかれた文字列を読み上げる。老舗というやつだろうか?外壁も黒ずみで汚れている。

 

 

 

 扉は閉まっているが、営業中という札が入り口の縁に掛けてあるので、入ってもいいのだろう。若干建て付けの悪そうな引き戸を開けて、中へと入る。

 

 

 店内はそう広くなく、棚や机に所狭しと瓶やら包み紙、小袋が並んでいた。店の奥にはカウンターがあり、小さな眼鏡を掛けた白髪混じりの初老の男性が帳簿らしきものをつけている。

 

 

 

「おや、お客さんですか...よっこらせ...」

 

 

 そう言うと、書いていたものを折りたたみ片付け、カウンターの前へと出てきた。紺色の前掛けみたいなものを身につけている。下履きはサンダルだ。

 

 

 

「いらっしゃいませ。何かご入り用ですか。」

 

 

 早速、湿布薬のことを聞こう。

 

 

「こちらに良く効く湿布薬があると聞いたのですが...」

 

 

「湿布薬ですか。こちらですね。5枚1000マーニです。とても良く、効きますよ。痛い場所に貼ってください。腰痛、肩こり、筋肉痛、なんでもよろしいですから。」

 

 

「どうも、ありがとうございます...実は、自分が使うわけでなくて、どうしても湿布薬が欲しいという人がいましてね。それで買いに来たんですよ。そうだ...どのくらいの期間、効果はもつんですか?」

 

 

「貼ってから1日というところですね。薬効は未開封の状態だったら半年はもちますよ。」

 

 

 最初は1パックだけで良いかと思ったのだが、せっかくだからいっぱい買って、プレゼントして気が良くなった爺さんに笛の作り方を教えてもらおうかな、と思い立った。そうしたら、牛の角以外の素材でも笛を自作できるしな。

 

 

「そうだな...10パック貰おうか。うん。」

 

 

「10ですか?!いやぁ、ありがとうございます!1万マーニ、どうも!」

 

 

 まともな楽器を得るためならこれくらいの散財はコラテラルダメージだ。

 

 

「あっ...そうだ。こいつは栄養剤?とかの試供品なんですが、いっぱい買ってくれたお礼に1本どうぞ。取引している開拓者の薬剤師さんがこの前置いていってくれてね。なかなかこれが疲れた体に効くんで、是非試してみてください。」

 

 

 店主は湿布薬と一緒の袋に、そう言って1本の栄養ドリンクらしきものを突っ込んだ。

 

 

 

 栄養ドリンク......?

 

 

 

 受け取りながら袋から瓶を取り出し、手にとってまじまじと見る。

 

 

 

「『雷蜂(ライホウ)』......限界の一歩先へ......?」

 

 

 メタリックなデザインの蜂が描かれた瓶に、変わったフォントで文字が書かれている。

 

 

 裏面を見ると、本来なら材料欄のハズの場所に効果が書かれていた。

 

 

 

【効能:疲労回復、体力増強、戦意高揚、集中力向上、状態異常緩和 効果:HP20%回復、HPリジェネ(中)、STM50%回復、STMリジェネ(中)、ATK上昇(中)、AGI上昇(中)、DEX上昇(中)、TEC上昇(中)※効能、効果には個人差があります。上記はLv30~Lv70の開拓者平均です。Lv20以下の服用はおすすめしません。※本製品は効果増強のために微量の毒を複数種含んでいます。一日に4本以上の服用はおすすめしません。※他製品との同時使用および混合や本製品を使った料理など想定外の方法での使用に対する責任は一切負いません。

空飛ぶ大釜(フルーガ・ゲルミル) 】

 

 

 

 Lv20以下はおすすめしないって、どういうこと......?副作用ありそう...しばらく使うのは止めとこう。試しに使ってみるには効果が惜しい気がする。でも、こういう役に立ちそうなのって結局使わないんだよなぁ...○リクサーとかもったいなくて一度も使ったことないわ......

 

 

 

 

 

 

 

 

 マクスン薬品店を出て手持ち無沙汰になった俺は残りの時間をどうしようかと考え、頭の後ろで手を組んで空を見上げた。

 

 

 終わってみればあっけなく湿布薬が手に入ってしまった。気合いを入れてセカンディルまで来た割には拍子抜けだ。

 

 

 まだログアウトするには早いんだよなぁ...かといって、これからグラッセ村に行って笛を作るのも今日は気が乗らない。......決めた。

 

 

 

 今日はセカンディルで過ごそう。魔術師ギルドに顔を出してみたいし、先のエリアのモンスターも見てみたい。

 

 

 そうだな...ちょっと散財したし、小金を稼ぎに行くとするかな。

 

 

 まずは、魔術師ギルドと宿屋を探すとしますか...

 

 

 ローブのポケットに手を突っ込んで、再びぶらぶらと歩き始めた。

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