男が演奏している横に看板が立っている。あなたは看板を読んだ。...投げ銭歓迎!石は投げないでください... あなたは周囲を調べた。... ...何かが見つかりそうだ... 投げやすい小石を見つけた!   作:ネコ文屋

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ニャンニャン
5375字


13_怪物と狂信者は黒雨に(うた)

 夕方再びログインすると、ハイパー黒糖さんから手紙が届いていた。

 

 

【件名:ログインボーナス獲得!

おめでとうございます。ログインボーナス!アイテム『聖女ちゃんを崇めたてる権利』を手に入れた。これを手に入れたあなたは毎日聖女ちゃんがいる方向に向けて礼拝しなくてはいけません。そうしないと呪います。毎日お祈りをささげることで心が浄化されて幸せになれます。

 

追伸、このメールを見た人はその日のうちに他の人に10通同じ内容のメールを送らなければ不幸が訪れます。】

 

 

 うわぁ..............もう1通あるな...

 

 

【件名:採掘レクチャー☆彡

こんばんわ?昨日ぶり、いや今日ぶりですね。そういえばモンスターから守ってくれたお礼をしていなかったの、ごめんなさいm(。≧Д≦。)m 集中しすぎちゃって後から思い出して反省…採掘初心者さんみたいだし採掘レクチャーしてあげましょうか?インしたら連絡くださいね☆】

 

 

 なるほど、採掘レクチャーか...ここはありがたく受けよう。金欠状態から脱出したい。そこはかとなくメールの文面の精神分析をしたくなるが、地獄の(かま)のふたを開けたくはないからやめておこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やあやあ朋友(ぱんゆー)。聖女ちゃんキメてますか。愛の伝道師ハイパー黒糖さんだよ!今日は最高のハイキング日和みたいだね。これもひとえに聖女ちゃんのおかげに違いないにゃ。」

 

 

「ふぐっ...こんばんは、ハイパー黒糖さん...今日は採掘レクチャーありがとう。金欠だったから助かるよ。そうだな、こんな天気がいいのは聖女ちゃんのおかげに違いない。間違いない。」

 

 

「話が分かるね朋友(ぱんゆー)。そんな君に聖女ちゃんグッズをプレゼントしよう。ほれほれ、ミニ聖女ちゃん像だよ。毎日崇めてください。あっそうだ。ちょっと耳を拝借......可愛いからって下からのぞいては不敬ですよ。ふへへ(小声)」

 

 

 あまりにも早い手渡し。手元のクリスタルの聖女ちゃん(聖女ちゃんと呼んで不敬じゃないか知らないがまあいいだろう)像が夕陽で光輝いている。いや、クリスタルだから下から見ても透過してよく分からないのでは...

 

 

 

「おお、これは素晴らしい(これ高く売れるんちゃうか...?)」

 

 

「でしょう!これは水晶像シリーズでして私の十八番の一つなんですよ。この透明さと光で変化する聖女ちゃんの佇まい。これはまさしく現時点でできる最高傑作(シェフ・ドゥーヴル)。ああ!そのピュアな心を通して我々に語りかけてくるかのようです。ちなみに売ったり放置したら分かるような細工がしてあるので絶対に肌身離さず身に着けてくださいねっ☆さもなくば神罰が下るでしょう。そんなことしたらめっですデスから!」

 

 

 何それこわ...完全に呪いのアイテムじゃないか...

 

 

「ノンノン!呪いのアイテムなんかじゃありませんよ!嫌そうな顔をしないでください。聖女ちゃん像はきちんとお祈りを捧げるものに見返りをくれるのですっ。」

 

 

 

 お祈りで見返りねぇ。まぁ...インベントリに放り込んでおこう。家かなんか建てたらインテリアとして飾ってもいいかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 採掘の基本は何か。そんなことは猿でも分かる。掘るだけだ。だが、目の前の光景は自分の知っている採掘じゃない。

 

 

 耳をつんざくような凄まじい爆音。それをもたらす暴力的なフォルムの、節くれだったその鉄塊をハイパー黒糖は哄笑(こうしょう)を上げながら振るう。

 

 

 破壊し破壊し破壊する。繊細さの欠片もないただ自分の為だけにエンチャントされた破壊の為だけに調整された鶴嘴(つるはし)を振り下ろす。

 

 

 ダイナマイト爆破だってもう少し品があるだろう。そう思うほどに元採掘スポットは破壊され、無惨(むざん)な姿を(さら)した。

 

 

「あーっ、たーーーのっしいいいいいい!これが採掘!採掘だよっ!!!破壊から全ては始まるんだよっ!!!うひゃあああああああああ!!!あはは、はは!」

 

 

 

 そこはかとなく、超越者(やばい人)のあり方にどん引きして、声もかけがたい。ダメかもしれんな...うーん...これはダメかもしれませんな...コミュニケーションとれるんか。ガチ変人やんか...

 

 

 おっ!これが鉱石ですか。破壊の後には少なくともアイテムは残るかぁ...

 

 

「ふぅすっきり!!あっその鉱石は黒鉄ですね!ごく一般的な鉱石ですよ。鉱石についてレクチャーすると、普通に採掘して出てくるものは純度低めなので精錬しなきゃ強度や特性を引き出して使えないんですよ~。まっ生産職じゃなきゃ関係ない話ですけどね!」

 

 

「......なるほど。」

 

 

「どうやら今回はハズレですね~ 宝石なんかも出ることがあるのでなかなか良い採掘エリアなんですよ。後半の街でも出ないものが時たま出てくるんで~ 一獲千金にはもってこいです!」

 

 

「一獲千金!それは素晴らしいね...!」

 

 

「あんまり期待しちゃダメですよ。でも、アテはありますから、次行きますよ!」

 

 

 宝石とはなんと蠱惑的(こわくてき)な響きだろう!ルビー、サファイア、ターコイズ、ダイアモンド...さらには見たことも聞いたこともないファンタジー宝石なんかもあるに違いない!ハイパー黒糖さんから貸与されたツルハシを思わずナデナデする。金策ついでに、宝石でお猪口かジョッキでも作りてぇな...そいつで地酒でもビールでも飲めたら最高じゃないか...!

 

 

 でかい宝石拾ったらハイパー黒糖さんに削ってもらうとするかな。売ってしまうなんてもったいない!あの彫刻の腕前ならさぞ優美な酒器にしてくれるだろう。問題はどうだまくらかして削ってもらうかなんだが。先生は聖女ちゃん以外創作意欲無さそうな気配がある。

 

 

 まぁ冷静に考えて売った方がいいかもしれない。悩みどころだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 取らぬ狸の皮算用をしつつ、ハイパー黒糖先生からこの世の生きとし生けるものはなぜ聖女ちゃんを礼賛しなければいけないかについての説法を聞いていたら、あっという間に次のスポットについた。

 

 

 

 もちろん途中モンスターに襲われたりしたが、ハイパー黒糖先生の荒々しいピッケルの猛威によりアッという間に無残に散っていった。その姿鬼神のごとし。可愛いらしい大きめの四角いカエルから、巨大なハサミを振り上げるザリガニ、砂煙と共に地中から現れるアリジゴク、岩の鎧を纏って歩き回るワニ。そのようなものどもにハイパー黒糖先生はツルハシを振り下ろし高笑いを上げながらツルハシを突き立てたのだった。

 

 

 

「さて、ここはですね~。少々危険なんですがいいスポットなんですよ。やっぱりですね!虎穴に入らねば虎児を得ずというか、ハイリスクハイリターンなんですよ!」

 

 

「なるほど、いいものが出るスポットということだね。さっきの場所と何が違うんだい?」

 

 

「まぁ私ほど石と戯れていればわかることなんですが、初心者さんにはわからないですかね~」

 

 

「まぁ、分からないなぁ...」

 

 

「色々なものがいい感じに(よど)んでいるんですよ。汚れというべきか、吹き溜まりというべきところには良い鉱石が生まれるんですよ!」

 

 

「なるほど...」

 

 

 なるほど分からない。

 

 

「鉱石というのは基本的にそういうでき方ではないと思うが...?まぁファンタジー鉱石ということかね。」

 

 

「そのとおり、ファンタジー鉱石なんです!それがインスピレーションを与える!聖女ちゃん!可愛いい!!!!!!!!!!尊死する!!!!」

 

 

「なるほど。で、ハイリスクの方はなんだね?」

 

 

 ピタッと首振りを止めたハイパー黒糖先生はニッコり笑う。

 

 

「ふへへ...もちろん聖女ちゃんは尊いし、その題材となる鉱石も尊いんですが、普通のものより高位な、高貴な鉱石、宝石は尋常じゃない(よど)みから生まれるんですよ!そして、そんな(よど)みには尋常ない怪物がいたりするんですよね。いなかったりもするんですが、たまに。それで、ここはちょっと目星をつけていた特級のスポットなんですよ~」

 

 

「おい、それは聞いていないぞ。もう、死んだら金がないから借金で宿屋泊まることになるんだが。」

 

 

「死んだら(しかばね)は拾いますよ~。ちょっと恵んであげますから安心してください。大丈夫、上手くやれば間違いなく儲けられます!護衛はしてあげますからほら掘ってみましょうよ!」

 

 

「それは、あれかね。地雷除去を私がやるということかね。」

 

 

「やだなぁ~。役割分担ですよ。ギター熊さんが本来掘れないレベル帯の鉱石を採掘しようっていうんですぜ。完璧な善意以外にそんなのありえないでしょう。ほんのお礼ですよ。お礼。私が戦って掘って鉱石を恵んで上げるのは流石にアレでしょ。」

 

 

「まぁそうだな...」

 

 

「さぁ行きましょうよ。ゴールドラッシュはすぐそこなんです。うへぇ...これはやばいな...」

 

 

 様々な色が終わって形容しがたい色へ変わっていくヘドロのような沼を指さして、ハイパー黒糖先生は若干躊躇いの声を上げる。所々にそれまた形容しがたい色をした岩が生えている。あんな中で気色の悪い岩を掘れというのか...体に(さわ)りそうだ...

 

 

 

 おそるおそる足を沼へと踏み入れる。形容しがたい感触が脚を覆う。泥に脚を取られながら沼の中にある岩まで寄る。うん....?

 

 

 

「ハイパー黒糖先生は、こっちへ...来ないのかね?」

 

 

「あーし、泥苦手っていうか、ヘドロ苦手っていうか。ここまでのヘドロじゃなきゃ我慢して入るんだけどここまでのはねぇ!代わりに掘ってくれて...ありがと~。遠隔から援護するから大船に乗った気分でツルハシ振るんだよ~頑張っていい宝石掘ってね!」

 

 

 こいつ!ヘドロが嫌だからって押し付けやがった?!

 

 

「こんんおの、てめぇ!人に沼入らせといて、自分は入らないとか!人としてどうなの?!聖女ちゃんに恥ずかしいと思わないのか!!!」

 

 

「聖女ちゃんは全てを許してくれます~。穢れなき純粋無垢な微笑みの中に、全てを包み込むような包容力があるんです。あの子はたとえ、人でなしであっても許してくれますよ!まぁ、ギター熊さんが掘らないというのならば掘らないでもいいんですよ!目の前に黄金が眠っているのにも関わらず棒に振って、クエストやモンスターでちまちま小金を稼げばいいんですよぉ。」

 

 

 ぐぬぬ...

 

 

「畜生めぇ!」

 

 

 

 ヤケクソになってツルハシを振り下ろす。

 

 

 ゴロり、転がった鉱石が沼地に落ちる。さすって眺めているとハイパー黒糖が声をかけてくる。

 

 

「鉱石はこちらに投げてよこしてください。聖女ちゃんの名にかけてちゃんと査定しますから。お金をYOUが得て、鉱石は私が得ます。ほら、ほら!」

 

 

「後で、ちゃんと払えよ!」

 

 

「カルマ値が本当に溜まりそうなことはやらないですから安心してください。聖女ちゃんが許してくれるといっても壁作られちゃうんで~」

 

 

 鉱石を投げてよこす。ハイパー黒糖は布で拭いて、しばらく眺めてからニコニコしだす。

 

 

「これはいいですね~。(鉱石うんちくが入る)。よろしい、2000マニーで買い取りましょう。この調子で掘ってよこしてくださいね~」

 

 

 まるで鵜飼の鵜のようだな、俺。掘ったものは全て吐き出す感じの。

 

 

「後で、ちゃんと払えよ、本当に!」

 

 

「信じる者は救われるですよ~。」

 

 

 まったく!本当かよ?!

 

 

 

 続いて、ツルハシを振り下ろすとふたたびゴロリと落ちたので再び投げやる。

 

 

「どれどれ~、ほむほむ、ふんふん~.....これ...は....にゃにい?!!(宝石うんちく)。これは素晴らしい。これは素晴らしい。いや、これは聖女ちゃん像にしたい。したい。したい!!!100万マニーが適正価格だけど、この抑えきれない喜び分色を付けて120万マニーでハイパー黒糖さんが買い取ってあげようじゃないか!!!!!!!!!」

 

 

「まじか...120万マニー????」

 

 

「おめでとう!!!(これは純度が高いから本当はもっとお高いんだけどまぁ喜んでるからWinWinだよね。ビギナーズラックって最高だね...)」

 

 

 

「うおぉぉぉおおおおお!!!!!!」

 

 

 採掘って最高だな!おい!そのままのテンションでツルハシを振り下ろす。

 

 

 

 ピシピシッ...ガラガラガラ

 

 

 

 岩にひびが入り、岩がバラバラに砕け散り沼へと沈んでいく。ツルハシはそのままの勢いのまま沼地へと先端が突き刺さる。沼地にツルハシが深く食い込んだ時、足元が震えた。

 

 

 

「おい!なんだこりゃ...まずいかも...」

 

 

 足元が、いや、沼地全体がゆっくりとせり上がり、そのことに危機感を覚えたので、足を沼地から抜いて岸へと向かおうとするが脚が抜けない。

 

 

「あちゃ~ハズレ引いたね。なんかモンスターでてきそう。」

 

 

「てやんでぃ!死んでたまるか!!!」

 

 

 脚が抜けないなら転がりながら避難すればいい!

 

 

 ドロドロになりながらも転がりながらやっとの思いで沼地から這い出してきて、ヘドロの沼の方を見ると、沼が山のようになっていた。

 

 

 沼の山から首が伸びる。首の先端には二つの触角に変わった形の口がついている。胴体の方はヒダヒダになってきた。

 

 

「あれは...アメフラシ!」

 

 

 沼から現れたのは巨大なアメフラシだった。

 

 

 ポツ、ポツ、ポツポツポツポツポツポツ。

 

 

 アメフラシのその名を表すかのように雨が降り出した。形容しがたいほどどす黒い雨だ。

 

 

「鈍足効果、スリップダメージが付くみたいだね~。そして、多分これ速度的に逃げれないやつだね。倒せばいいんだけど。うへぇ......」

 




4連休!4連休!
休みじゃああああああああああああああaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!

人間性回復!!!!!!!!
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