男が演奏している横に看板が立っている。あなたは看板を読んだ。...投げ銭歓迎!石は投げないでください... あなたは周囲を調べた。... ...何かが見つかりそうだ... 投げやすい小石を見つけた! 作:ネコ文屋
ヌメりを帯びた薄汚れた黒い雨が降り注ぐ。
「ずいぶんと淀んだマナを浴びせちゃって…あゝ罪業の渦巻く美しく罪深く汚らわしい‼闇あれば光は強く輝き、光輝けばまた闇は深くうごめく。ニャハハハ、あ~インスピレーションが降りてきましたヨ!」
ハイパー黒糖先生の神聖で冒涜的な気配のするツルハシが謎のエンチャンテッドをまとい赤黒く白く光輝く。
さてさて、どうやって戦うかなぁ。いや、もう死にたくない。まぁ、彼女が約束を果たすのならマニーはもらえるのだから死んでもいいのだが。遅滞戦術?逃げるか?脚は逆に封じられ、メイン街道からは遠い。現状、手を出している魔法の火はダメ。水もダメ。土もダメ。風もロクな攻撃力ないしな。雷でもあったらワンチャン、ポケ〇ン的に効果抜群とかはあったかもしれないが。投げナイフもこのヘドロをまとったアメフラシに効果あるとは思えない。
あれれ?これは帰ってもいいですかね。そういえば用事を思い出したんだけど、爺さんに角笛作って貰わなきゃいけないしな。
「ハイパー黒糖さん、自分役に立てなさそうので抜けますね。ノリで荒野に突っ込んだけどやっぱり2人で無茶な探索は早かったようです。いつか、宝石の代金払ってくださいね!!」
「URRRRYYYYY!!!!! 刻む刻み刻めェッー。ヒャッッフーーーーーー!!!! 聖女ちゃん。見ててください!!!! 貴女のためにまた一つ愚かな供物を捧げましょう。エイメンンンン!」
天高く跳び上がった彼女がバチバチッと危険なエネルギーをほとばしらせるソレをただただ暴力的に振り上げている。
「ではでは。」
あ~やっぱりヤバい人だ。うん。ファステイアに帰るか…鈍足とスリップダメージを受けながらゆっくりゆっくりと後ろに下がる。てか、超黒糖まったく鈍足効果あるような動きじゃないんだが。はぁ~、これだから高レベルは。適正レベル帯ってのがあるんだよ。初心者を巻き込まないで欲しいなやれやれ。
『神罰の効果発動…スリップダメージ効果上昇。神敵を前にしての敵前逃亡はメッです!』
エッ???これは…? おいおいおい、スリップダメージ増えてくんだけど…インベントリからクリスタル聖女ちゃん像を出して蹴り飛ばし、ライフポーションを出してぐいっと飲む。ファッ〇ンジーーーザスゥ!!! 逃げられない、確実にタヒぬ。えっ財布と精神攻撃して楽しいかオイオイオイ。この死に戻り不名誉じゃね。このミニ聖女ちゃん絶対に壊ス。後でハンマーで破壊しよう。壊れなかったら火山探して火口に投げ入れよう…
とりあえず遠目から眺めておこう。迷惑料でなにか追加でもらえないだろうか。あの巨体に今の自分の手持ちで戦うのは正直難しい。なんかこう重力魔法とか核爆発とか使えるようにならないとなぁ。
そうこうしていると戦っていたハイパー黒糖さんがこりゃだめだと言うように肩をすくめながらこちらに下がってきた。
「ツルハシがズブズブに体の中に入っていくし、ヒットした感覚がないよ。もーめんどーになってきたね。とりあえずこれで逃げよう。」
そう言って外套のポケットから取り出したのはスクロール。
「ワンチャンこれが効くって線もあるけど、びみょい予感だからなぁ逃げよう。あっ聖女ちゃん像の機能はオフにしとくね。」
大アメフラシの体から4本の黒い泥でできた触手が振り回されてこちらに迫ってこようとしている。
「フリージングボックス」
スクロールを掲げながらそうつぶやいた瞬間、大アメフラシの体が白氷で覆われた。さらにそれだけでは留まらず何重にも氷の帯が凍った体に積み重なっていく。沼荒野の中にそこだけがポツンと雪景色になっていた。
「さぁこっちだよ。メイン街道は。走るよ!」
「はぁ、はぁ。エラい目にあった。しかし、ハイパー黒糖先生ならあれしきのモンスター倒せるんじゃないですかね~?」
「いや、あれは無理だね。マナの属性が闇、土、水ときて泥を装甲のように纏っている。ソロで正当法で殴り合うんじゃ削りきれないよ。泥の中にいるせいなのかリジェネ回復もしていたし。割に合わないんだよね。」
「ふ~んそんなものなのか。というか闇なんて属性があるんだな。光属性の対極ということは分かるけど。冷やしたミルクティーだ、どうぞ。」
ハイパー黒糖はカップを受け取ってミルクティーを飲んだ。
「案外冷やしたのもいけるね、っとおっとさっきのスクロールの拘束が破られたようだよ。とりあえず巨大聖女ちゃん像か街かどっちかに逃げ込みたいが...」
「街に迷惑かけるのはマズイだろ。好感度的に。あの作ってた聖女ちゃん像に何か仕掛けがあるのかい。」
「まぁ後のお楽しみということで。」
メイン街道に出るといかにも魔術士って格好をした団体さんが歩いていた。後ろから破砕音。どうやら何らかの方法で追ってきているらしい。
「おーいそこの人たち、後ろからやばいモンスに追われてるんだ。あっちの方に行くからどこかに避難したほうがいいよ。」
「我は豪炎のバク。それほどのモンスター試し打ちにしてくれよう。」
「ワタクシは最近手に入ったユニークアイテムの試運転をしたいですねぇ。」
「封印されし右目が疼くぞ。」
「雷こそ最強ナンだよな。」
「今回は前衛は俺に任せてくれよ。暗黒騎士とった意味がない。」
「あっバクさんじゃんおひさ~。ちょっと巨大聖女ちゃん像をエンチャント込み込みで彫ったからさ。試運転したくて効果範囲まであとちょいだからここで戦うのはナシで。」
「あい、分かった。」
ハイパー黒糖と豪炎のバクは既知の間柄だったようで、バトルフィールドを巨大聖女ちゃん像近辺にしようという話が瞬きする間にまとまっていた。
一同で後ろからくる破砕音を聞きながらメイン街道を進むと後ろの方で暴れていた大アメフラシの姿が街道に現れた。王蟲2体分の体に相変わらず黒い雨が降り注いでいる。
沼から出たから移動速度が遅くなるのではと思ったが、どうやら泥の足を生やして移動しているようでそれほど鈍くはないというのが分かった。
ビリビリビリッ
空気を裂くような音とともに巨大アメフラシから大量の土砂が辺りに降り注いだ。あちこちでヘドロが泡を作り、地面を溶かして小さめの沼を作った。
「おー!環境構築型モンスターじゃないか。こんな序盤に潜んでいたとは知らなかったな。」
包帯でぐるぐる巻きになったミイラのような痩せ細った、カルメットという男が驚いた様子で話した。
「なんかヌメってるし乾燥だな。十八番だ任せろ。赤き砂塵よ、火焔と踊れ。風は吹き荒ぶ、水は渇き、木は枯れ果て、残りし土は砂と散れ。嵐よ来たれクルール・ヒート・サンド・ストーム」
豪炎のバクが続けて唱える。
「よしでは闇属性対策として合わせよう。疾く拡大せよ古より来たりし火の悪魔、名は知れず焚べるは哀れな道化。冥き闇夜に火をつけよ。フォビドゥン・トーチャード・ヘルファイア」
先に放たれた砂嵐の中に十数体の火焔の悪魔が放たれた。
「聖女ちゃん像はまだ先だから足止め程度にとどめといてね。」
「我はもとよりそのつもりだ。」
「まったまったせっかく環境構築してんだ一発でかいのやらせてよ。」
暗黒騎士の人がそういって出現させたバカでかい赤い線が走る黒い斧を縦回転で投擲した。
砂嵐の中の巨大アメフラシに当たった後に爆発するような音とともに火炎の柱が上空へと吹き出した。そして暗黒騎士の人はスクロールを取り出し、
「ほいほいリターン・ウエポン。行きますか。」
武器を手に取り戻してから装備解除した。
それを見ていた私は連携の鮮やかさに感心するとともに魔術について色々と聞き出したくなったが戦闘中ということもありぐっと我慢した。