男が演奏している横に看板が立っている。あなたは看板を読んだ。...投げ銭歓迎!石は投げないでください... あなたは周囲を調べた。... ...何かが見つかりそうだ... 投げやすい小石を見つけた! 作:ネコ文屋
背後の目にナイフを突き立てられたにもかかわらず黒猫は叫び声をあげなかった。フードの男は黒猫へとシャムシールを振り横へローリングする。
フードの男を追っていくつもの巨大な尾が地面へと叩きつけられた。
どうやら尾はいくつもはやせるらしい。黒猫が立ち上がったところで聖騎士の男が光る剣で突進を仕掛けた。
黒猫が鬱陶しげに爪で払おうとするが、先程から降っていた光の雨が黒猫の行動を阻害する。猫パンチを仕掛けようとするが光に阻まれて遅くなっている感じだ。
果たして自分はどちらに味方すべきか。心情的には猫の杖を手に入れたいので、猫が可愛いのが何よりも第一なことを考えると猫なのだが。ロールプレイに忠実そうなプレイヤーさんを見ると応援したくなる。しかし、街中で戦闘が始まったせいか石畳とかが割れたりしてて、今後家屋に被害が出ないか不安ではある。
ここは、平和に収める方向で行きたいと思うがいかんせん来るのが遅かったな。もうちょっとタイミングが早ければ餌付けルートもあっただろうに。
まぁ、猫の杖手に入れても使いづらそうだし。ここは聖騎士さんたちの応援をしておくか。
着実な連携でダメージを与えていく聖騎士さんたち。ヒーラー、タンク、アタッカーとバランスが取れているからか危うげもなく黒猫と戦っている。
野次馬たちもあーコイツラ玄人ですわ。見応えあるねとか言いながらポップコーンらしき物体をボリボリむしゃむしゃしていた。もう勝ったじゃんブラボーという野次を飛ばすやつまでいた。
HPが低下してきた黒猫は闇を体中の口から、闇を放出した。闇は執拗にヒーラーを追い始めた。さらに黒猫は建物の上にジャンプし、甲高い声を上げ始めた。
行動変化だな。ボスにはよくあることだ。あと少しだぞ頑張れ。そう思っていた時期が私にもありました。
その時だ。膝ががくんと落ちた。周りの野次馬や通行人も膝を地面についたり、倒れたりしている。体から7色のモヤが立ち上る。そして、黒猫に向かって7色のモヤが集まっていく。
黒猫はモヤを体中の口から吸収すると、ひときわ大きな叫び声を上げてまばゆい閃光を放った。
その場にいた全員が立ち眩みやらあまりの眩しさに目が開けられなくなる。
黒猫の叫び声が断続的に続き、目が慣れてきた頃に一体何が起きたのかと思い、屋根の上を見ると。そこには、相変わらずの黒猫と赤、青、緑、黄、ピンク、オレンジ、紫の色をした黒猫の半分くらいの大きさをした7匹の猫がいた。目や口は黒猫と同様にたくさんあるようだ。
ニャーオ
何重にも重なった鳴き声がすると黒猫と7匹の猫たちがが黒いモヤにまとわりつかれている聖職者ちゃんのそばへとワープした。
ドロリと溶け出した猫たちは不定形の生命体となり、不安定に色を変えて明滅するそれは聖職者ちゃんを大きな口で食べた。
色とりどりの光が周りに拡散し、聖騎士を貫き、その頭部が唐突に爆散した。
くらりと視界が暗くなる。間のあたりにした恐怖のあまり逃げ出したくなる。その様子を見ていた野次馬たちも喚き声を上げて一目散に逃げ出し始めた。
グビり
ファステイアの森で集めた恐怖によく効く薬草茶を飲む。慌てる時間じゃない。落ち着いて考えよう。逃げる逃げない。逃げたら餌付けできないが、もう猫じゃない。なんかヤバそうな生命体xと化したかわいい猫の杖。いや、やっぱ逃げるか。
ふつふつと生命体xから泡のようなものが浮かんできた。猫だ。まだら模様の猫たちが最後の一人、フードの男を囲う。
飛び越えて路地へと逃げたフードの男を数多のちび猫たちが追いかける。
ウゥ゙ーーーウーーーーーーーウーーーーーー
その時だった。東の空からけたたましいサイレン音が鳴り響いた。
『大気中マナ濃度の異常な上昇を確認。セカンディル方面のナノマシンより敵性生命体を確認。敵性生命体を確認。機体番号swiper-gf356、当機は危険物処理シークエンスを開始します。ホログラムスクリーン内の民間人は直ちに避難してください。5秒後にレーザービーム照射、20秒後に爆撃を開始します。』
赤いスクリーンが広めに黒猫を囲った。警告色の強いディスプレイが自分も含めた残りの野次馬に表示される。
【特級危険物処理エリア設定中、危険直ちに回避行動を回避してください。】
うわっ。何なんだ一体。何が起ころうとしているのか。ファンタジーらしからぬ響きの言葉が並べ立てられて、目を白黒とさせていると。とりあえずアナウンスにしたがって逃げねば。
駆け出すと同時に、生命体xを幾重もの赤いビームが貫いた。質量を持った光の矢が生命体xを石畳へと縫い止める。
時々生命体xの様子を振り返りながら、エリアの外へと逃げ切ることができた。野次馬根性で爆撃とやらを見物することとする。
アナウンスから約束の20秒後、まずは小型のミサイルが様々な方向からエリアに降ってきた。続いて、大型のミサイルが中心部へと飛来。ドゴンと重低音と爆発の煙と暴風が辺りに吹き荒れて、複数の建物もろとも生命体xは消し飛んだ。
『敵性生命体の消失を確認。原因物質回収のため危険物処理エリアにおける当機は汚染物質回収ボッドによる近接活動を開始する。』
東の空より円盤型の機械がいつの間にか飛んできてエリアの中空から回収ボッドをゆっくりと排出した。
空飛ぶルンバだ! 爆撃と相次ぐ驚きに開いた口がふさがらない。猫ちゃんが消し飛んじゃった…
石畳に散らばった猫ちゃんの残骸を回収ボッドが吸引していく。
粛々と進む回収作業。瓦礫の山と化した危険物処理エリアに再び立ち入って近距離から回収ボッドと空飛ぶルンバの様子を見る。しぶとい野次馬たちも数は少ないが、ぞくぞくと集まってきた。